75話
ドワーフ王国との和平は一旦保留になってしまった。
今は、晩餐会までの時間を潰しているところだ。
ドワーフ王は前向きに考えてくれるみたいだからそれを信じるしかない。
後は、晩餐会でうまく立ち回り、話しをうまくもっていければいいが、僕にそんな高等な話術のセンスはないからなぁ。
困った、これがグランなら上手く話しをまとめてくれそうな気がするが、精霊達は基本的に自分たちの領域をあまりでたがらないからなぁ。
考えている内に、ドワーフの兵士がやってきた。
「失礼します! 晩餐会の用意ができましたので、移動の準備をお願いします」
どうやら晩餐会の時間が来てしまったようだ。
僕は、護衛にポチ、クロ、シロの3人を連れて会場に向かう。
会場の扉の前で少し待たされる。
会場の兵士が案内をするようだ。
「皆さま、エデン王のご来場です!」
その言葉に扉は開かれ、拍手と共に迎えいれらた。
僕は真っすぐと歩くと出席者達が道を譲り、開かれた道をまっすぐとドワーフの王ドルガの元に向かう。
「今宵は歓迎の祝賀会を開いていただき感謝します」
「今日はエデン王が初めて来訪された日、存分に楽しんでくだされ。時にエデン王は酒はいける口かな?」
そういえば、飲んだこと無いや、お酒。
ここは、無難に答えておこう。
「いえ、ほんの少し嗜む程度ですが」
「そうですか、では乾杯と行きましょう。儂らが口をつけねば皆も飲めませんからな」
そう言って、渡されたゴブレットには琥珀色をしたキレイな飲み物が入っていた。
これは、ブランデー?ウィスキー?
僕は、300年眠っていたが、最初は17歳でこの世界に来たから、お酒とは無縁の生活を送っていたから、これがなんのかわからん。
エデン王は出席者たちに向け、
「エデンの国とドワーフの国の未来に乾杯!」
と、大きな声で告げた。
そして琥珀いろの飲み物を飲み干した。
「さ、ユキ殿も飲まれよ」
僕も一気に琥珀色をした、飲み物を飲み干した。
すごい香りが鼻をツンと突き抜けて、喉に熱いものが流しこまれる。
以外においしいかも。
初めてのお酒の感想はそう単純なものだった。
「どうかな、わが国のブランデーの味は?」
ブランデーだったのか。
「はい、とても香り良く、喉に通る熱さも心地よいものですね」
「そうであろう、わが国の自慢のブランデーだ」
「是非とも和平が結ばれ、国交が開かれたならすぐにで輸入したいぐらいです」
さりげなく和平の話を持っていく。
「うむ、儂も前向きに見当しておる」
お酒が入ってきて、段々と上機嫌になっていくドルガ陛下。
酔ってきているのだろうか。
ところが僕は、全然酔えない。
世界樹の自浄作用のせいだろうか?
みんなが酒で酔い始めて会場が騒がしくなる。
「飲んでいますか、エデン王。ご挨拶がまだでしたね、私は」第2王子のスーベルトです。あそこで酒を煽っているのが、兄のチャコフです」
話しかけてきたのは、第2王子スーベルトだった。
「楽しくのんでいますよ。」
「どうやらエデン王はお酒が強いらしい、ここは、ドワーフ伝統の火酒でものんでみませんか?」
「火酒ですか?では是非」
そういうと、第2王子はメイドに声をかけて火酒をもって来させる。
なんだか、メイドさんが震えているように、見えるが緊張してるのかな。
僕は、メイドさんからもらった、火酒を飲む。
これは喉が熱い!
香りとかほとんど感じられない。
一瞬第2王子がニヤリと意地の悪い笑顔をみせた。
「すごい、熱いお酒ですね、火酒とはよく言うのも頷けます」
「……なんともないのですか?」
さっきの笑顔はキツイ酒でビックリさせようとした、悪戯かな?
それなら成功してますよ。
喉の熱さにビックリしたから。
お酒をもってきてくれた、メイドさんがトレーを落としてこちらをビックリした顔で見ている。
まるで信じられないって顔だ。
「し、失礼しました。」
トレーを落としたメイドさんは顔を青くして、まるで僕を化け物でも見るようにすぐに去っていった。
何なの?
☆★☆
第2王子スーベルトは焦っていた。
せっかく第1王子つきのメイドを買収し毒を盛った、火酒を用意したのに目の前のエデン王は何ともないように振る舞っている。
化け物。
それが第2王子がユキに持った印象だった。
最初の計画では、エデン王を毒殺し、兄のせいにして自分が王位につき、エデンにとって代わって5か国の中心になる予定だった。
モンスター達は脅威だが、ドワーフの魔晶石を使った武器があればなんとか制圧できると思っていた。
それが、どうだ、毒が効かないとなるとこの計画は失敗だ。
元々エデンのとの和平など不可能だ、モンスターが跳梁跋扈するような国なぞ。
☆★☆
「どうしました?顔色がすぐれないようですが?」
第2王子は僕に火酒を進めてから、顔色がすぐれないようだ。
「いえ、なんでもありません。それにしても本当にお酒にお強いですね。時にエデン王もモンスターだと聞きましたがどんな種族などなのですか?見た目は人間と変わりませんが」
「私は植物系のモンスターになりますかね。ちょっと特殊な種族になると思うので、説明が難しのですが、トレントとドライアドを足した感じでしょうか」
まさか世界樹の化身とは言えないしな。
信じてもらえるとも思わないし。
第2お王子と話していると、今度は第1王子もやって来た。
「弟と何の話しをしているのか、私も混ぜて頂きたい」
「ええ、もちろんです、チャコフ殿。ちょうど私の種族の話をしておりました。私は植物系のモンスターだと」
「エデン王は植物系なのか、ならそこの花瓶にある蕾の花でも咲かせることができるのか?」
「兄上、失礼ですよ。いくら植物系といっても成長を早めるなど不可能ですよ」
「いえ、大丈夫ですよ。いい余興だ、咲かして見せましょう」
僕は、まだ蕾の花に力を送る。
すると蕾は花びらを開き、見事に咲いた。
「まさか、本当にできるとは、では作物などもできるのですか?」
と、第2王子のスーベルト。
「もちろん、あらゆる植物を操る事ができます」
「これはすごいな、エデン王が居れば、軍の兵站もだいぶ楽になりますな」
とは第1王子のチャコフ。
流石に軍部を味方につけている事だけは、ある。
すぐにその事実に目をつけるとは、でも戦争はしたくない。
今は、和平のために来ているのだから。
「兄上それだけでは、ありませんよ、エデン王の力があれば国内の食料自給率もあがる。エデンはさぞ豊かな国なのでしょう。だからモンスター達も争わずに生きていける。違いますか?」
「まあ、一概には言えませんが、そのような事もあるかもしれませんね」
第2王子は文官達を味方につけている、内政を考えて当たり前か。
「お二人にもぜひ、エデンとの和平を前向きに考えて頂きたい」
「しかし、モンスターの国が豊とはいえ、安全に取引ができるとは、未だに信じられませんな」
と第1王子のチャコフ。
「何故でしょうか? モンスターとは言え、我らエデンの民は知性が高い。無駄な争いは好みません」
「エデン王がそうでも配下の中には野心を持っている者もいるのでは?」
「それはどの種族でも同じでしょう。王子お二人も自分の野心がおありでは?」
少しイラついたので、言い返した。
こちらが政争を知っていることを案に二人に知らせた。
「っ! 野心などど、我々はドワーフの国にとっての最善を模索しているだけですよ」
と、第2王子スーベルト。
流石に内政に力を入れているだけはある、返しが早い。
第1王子チャコフは未だ、声がでてない。




