73話
ドワーフ王国では、発掘された魔晶石を武器に転用して使っていることがわかって、王都では実際に配備済みと。
「それはすごいですね。ドワーフ王国の技術力は素晴らしいですね」
「ええ、ですから、これからはモンスターを容易く退治できるでしょう。っと失礼、エデン王はモンスターも民として、受け入れているんでしたね」
「かまいませんよ、ただし、全てのモンスターが民ではありません。知性の低いモンスターは我々も退治しておりますから」
この野郎、嫌みか!
こっちは昨日の夜にドワーフ達に襲撃をうけたわ!
訴えてやろうかな。
いや、でも調子のいい事言って、解放したし、今更だよね。
「領主殿は、我らが王に何か言いたいことでもおありか?」
ポチ、クロ、シロの3人の殺気が室内を重くする。
街の領主は冷や汗を書き始めた。
「ポチ、クロ、シロ。やめなさい。内の部下が失礼した」
僕の一言で部屋の空気の殺気が霧散する。
「いえ、とんでもありません。こちらこそ、軽はずみな言動でした。申し訳ございません」
と、領主は冷や汗をかきながら謝ってきた。
うむ、これからは言葉に気を付けて欲しい。
僕もイラっとしたからね。
「魔晶石とは武器にも転用に成功したと言事は、やはり、時間に限りがあるのでは?」
「もちろんありますが、その辺の仕組みは私も専門家ではないのでわからないのです」
僕もよくわからないけど、4大精霊達からもらった指輪の原理なんてわかってない。
ただ、ゲーム内では精霊石が取れていた。
使い方も似ているけど、そこはゲームだったから、明かりに使う事は無かった。
ただ農具に装着したり水を生み出したりとかで使うと作物が良く育ったし御守りとしても作っていた。
この指輪の宝石も精霊石から作られた物らしいんだよね。
取り敢えず今日の魔晶石の事はグランに伝書鳥に書いて送ってあげよう。
こうして、冷や汗をかいた領主との夕食は終わった。
そういえば、ドワーフなのにお酒が出てこなかったな。
☆★☆
夕食が終わり領主は自室で酒をお煽りながら今日の発言に恐怖していた。
ドワーフ王からどこまでがセーフラインなのかを会話の流れでつかめと言われたからだ。
「何なのだ、あの護衛の殺気は一瞬で自分の首に剣を突き立てられたようだったぞ」
領主は会話の話しを事細かに書き綴り、夜にも関わらずに早馬を王都へと走らせる。
ドワーフの最新の武器があってもあの3人に勝てる気がしなかったからだ。
領主はドワーフ王に会話には細心の注意を払うようにと書き綴っていた。
領主は自分の護衛の戦士に話しかける。
「お前たちならあの者達に勝てるか」
「数秒もてばいい方でしょうな。それよりも私はあの殺気の中でも平然とし居られたエデン王の方が恐ろしい。いくら味方とはいえ、あんなに空気が薄く感じたのは初めてです」
死兵として送り込んだ50名も全員つかまり解放されて戻ってきたときには、甘い王だと思っていたが、力が違い過ぎたのだ。
元々モンスターに恨みを持つものを選んだが、あれらは訓練を受けた、立派な兵士達だ。
それが、向こうの戦力には一切の被害が出ていない上に、野盗にあった事すら私に言わなかった。
あの程度どうでもいいと思うような戦力だったというこか。
領主の密偵をモンスター達が泊まる宿にも送っていたが、そこでもモンスター達は自分たちが侮辱さるよりエデン王を侮辱した時の方が生きた心地がしなかったと報告がきている。
エデン王を怒らせるとどうなるのか、ただただ、怖かった。
☆★☆
モンスター達が止まる宿は、今回は貸し切りだった。いらぬ亀裂を生まぬようにとの配慮だろう。
エデン王からも問題を起こさないように厳命されている。
1階の食堂でモンスター達が食事をとっているときだった。
10人ぐらいのドワーフが入ってきた。
モンスター達は貸し切りと聞いていた。
「今日この宿は我々の貸し切りだと聞いていたが……」
「1階の食堂では酒場も経営している。1階は違うのだろう。放っておけ。」
ドワーフ達は、酒を注文すると宴会騒ぎのようにうるさかった。
ドワーフ達が酒に酔い始めると、こちらに聞こえるように言ってきた。
「モンスターの国の住人がいるからって聞いて来てみたが、偉くお上品じゃねえか」
「モンスター風情が宿を貸し切りにするなんていい御身分だなあぁおい」
モンスター達は敢えて無視をし続けていた。
問題を起こさないように厳命されているし、これからドワーフ王に会いに行く、エデン王の心証を悪くしてはいけないと思っていたからだ。
「けっ、これだけ言われてもだんまりって事は、情けねえやつらだぜ、エデン王ってのもたかが知れるな」
その時だ立った、殺気が店内に充満する。
全員が席を立ち、ドワーフ達を囲む。
「我らをいくら侮辱しようと構わん。が、我らの王を侮辱することは許さん!先ほどの言葉は取り消してもらおうか」
これにはドワーフ達も冷や汗をかいた。
何せ、自分達を囲んでいるのは、どれもがハイモンスターだ。
生きてここから、出られるのか?
言葉が出なかった。
「取り消せといっている」
その言葉で、1人のドワーフが謝罪を口にする。
「すまなかった、先ほどのエデン王への言葉もあんた達に言った言葉も取り消す。だから許してくれないか?」
「謝罪を受け入れよう。2度目はないと思え」
そう言うと、モンスター達は自分たちの席に着いて何事もなかったように食事を再開したのだった。
☆★☆
翌朝、朝食を領主と取り、出発の準備に入る。
なんだか、領主さんの態度がよそよそしかったけど、昨日の事を気にしてるんだろうか、それなら別にそこまで気にしなくてもいいのに。
護衛の人もなんだか緊張してるみたいだ。
「お世話になりました。またいづれお会いしましょう」
「えっええ、こちらこそ。楽しいひと時でした」
そして僕たちは領主の街を後にした。
「そういえば、みんなが泊まった宿では大人しくしてたかい?」
「はい、何も問題起こしてはありませんでしたが、途中でドワーフの酔っ払いに絡まれたぐらいです。」
「あれ?貸し切りじゃなかったの?」
「どうやら、1階は酒場も兼任していたようで、違ったようです」
「酔っ払いに絡まれただけなら、ケガとかさせてないよね?」
「もちろんです、ちゃんと話せばわかって頂きましたので」
「そっか、じゃあ問題ないね」
一行は王都へと進む。




