64話
1日目の会議が終われば、今度はエデンの会議だ。
多分、どこの国も話し合って居る頃だろ。
僕はドーガ達4大精霊に事の成り行きを説明した。
「会議の内容は以上になりました。疲れたよ、ホント。」
「大使館をおけば、本来のエデンが露見しかねんが構わぬのか?」
と、ドーガ。
「エデン国内の中では規制を設けるから、大分マシだと思うけど、警備は寄り厳重にしておくよ。それに精霊達も嫌がりそうだしね」
「確かに勝手に我らのテリトリーにユキ様達以外が入って来るのは嫌ですね」
と、グラン。
「あのさ、もし侵入者を見つけたらどうすんの?捕まえるのは当たり前として、殺すの?それとも一生牢獄行き?」
と、フィーネ。
「牢獄に入ってもらって、記憶を消すつもりだよ。その為の植物の花粉も用意できるし、入り口にはアウラウネ達も配置して催眠状態にする予定だから、まずこちらにはなかなか入って来れないようにするからね」
「それなら、ついでにフェルミナの水鏡の幻影も使えばより安全ではないか?」
とドーガ。
「確かに、水鏡の幻影は水を張って、出入り口が壁に見えたりするものだったよね?常時展開ってできるの?」
「水精霊達が交代ですればできますよぉ。私も知らない者が入って来るのは嫌ですからねぇ。ここはユキ様に協力しますぅ」
「ありがとう、フェルミナ。エデン本体の警備はこれぐらいで大丈夫でしょ。後は魔王ブレニンさんが言って獣人の国の平定だけど、本当にガルガンティスも被害にあってるのかな?フィーネ、何か知ってる?」
「一応は、被害にあってるけど、ちゃんと追い払ったり討伐もできてるみたいだよ。そりゃ中には本当に略奪されている事もあるけど。」
ブレニンさんは嘘は言ってないみたいだな。
「獣人族の情勢はわかる?」
「いまの所、優勢なのが獅子族で、次に白虎族かな。いまは、他の部族を平定してまわってるけど、そのうち決着がつくと思うよ。どうも強い者が一番って感じが獣人族の暗黙の了解みたいになってるっぽい」
なにその脳筋な種族たち。
ライオンにトラかぁ、どっちも肉食獣だね、しかも強い。
「だから第三者として参戦するなら今がチャンスだよ、ユキ。ユキなら勝てると思うよ」
フィーネが気軽にいうけど、肉食獣の前に立つのは勇気がいるよ。
参戦する場合エデンの領土が大きく広がる、果たして上手くいくのかな。
☆★☆
昨日に続いて2日目の会議最終日。
「では、2日目の会議を始めます」
まずは、4か国合同での和平条約の日取りが決まった。
「ユキ殿昨日の件は考えてくれたのかな?」
と、魔王ブレニン。
「ええ、考えていますが、今の段階で答えはだせません。仮に獣人たちの国をエデンが抑えたとしてもそこにエデン領土が増えれば、皆さんは信じてもらえるかもしれませんが、国民の感情は新たな覇権国家が生まれたと思い込んでしまえば、どうしも乗り気になれません」
「では、我ら3ヶ国も戦にでるか、一時的な同盟を結んで」
「それでは、戦後の領土の割譲で揉めることになりませんか、確かに我らで戦争を仕掛ければ勝てるでしょうが、獣人達を支配できると思いますか?」
「ユキ殿なら可能ではないのか、なんせ他種族の王なのだから」
と、今度はオニスト王。
「エルリア女王陛下も同じ考えですか?」
「いえ、我らはいち早く世界樹の発見と守護をしなければなりませんし、今だ戦争を仕掛けるほど、国力も回復しておりませんので」
「それほど、世界樹に固執する理由はなんなのだ、捜索隊なら3ヶ国合同でするではないか」
とオニスト陛下が聞く。
「ただ、自然と共に生きるエルフに取って世界樹と共にあるのが本来の姿なのです。他に他意はありません。そういえば、ハイエルフのグリセラ様達は、お元気ですか?」
「ええ、彼女たちも今や、完全にエデンの民ですよ」
「そうですか、グリセラ様達には戻って来て欲しかったのですが、難しそうですね」
「では、話をもどしますが、現段階でのエデンの介入は考えてないんだな?」
「そのとおりです、ブレニン殿。我らが平定………平定?」
そっか、別にエデンが獣人の国を治める必要はないんだ。
元々は連合国なのだから、戦争を終わらせて、元の連合国にもどせばいいんだ。
「どうしたのだ?ユキ殿」
「いえ、もしかしたら介入してみるかもしれません」
「ほう、なにか妙案でも浮かんだか?」
「ええ、まあ、僕の本来のやり方ではありませんが」
「聞かせては貰うわけには…どうやらいけないようだな」
エデンを中心とした連合王国にしてしまえばいい。
中立ち合いをエデンがして、戦争を武力をもって終わらせる、僕らしくないやり方だが、この際仕方ない。
獅子族も白虎族もそれで言う事を聞かせるしかない。脳筋なら、こちらも脳筋で対抗しようではないか。
こうして、無事に2日目の会議も終わった。
☆★☆
魔族の国ガルガンティス魔王の部屋にて
「ブレニン陛下よろしかったのですか?エデンだけに任せてはこちらの旨味がなくなりますぞ」
と意見したのは、宰相のガンズレーだ。
「かまわん、最初は矢面にエデンに立ってもらって領土の分割を狙ったが、本人にその気がないのだ、しかし介入すると言ったからにはなにかしら思いついたのであろう。何をしでかすか、そちらの方が楽しみだ。エデンには、我々でも勝てんからな、諜報員を大使に混ぜてこの国にも置けるだけでも収穫はあった」
「しかしそれは、向こうも同じことですぞ、エデン側も知られたくない事には厳重にしているはずです」
「情報戦でも負けるとはまだ決まっておらん、手練れを用意しておけよ。どの国も手練れを用意してくるはずだからな」
「畏まりました。陛下」
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エルフの国エルドラード、エルリア女王のへやにて
「世界樹はたぶんこの大森林にあります。それもエデンの中にきっと隠している可能性が高いわ。場合によって、共同管理を申し込みます」
「陛下、しかし世界樹をエデンが本当に管理しているでしょうか、ここはモンスターの集まる国です。そこまで気が廻るとは思いません。」
「世界樹とわかっていないなら、いないでよいのです、ユキ陛下からは捜索のお許しはでています。まずはエデンの近くの森から探しますが、それとなくエデン内も探っていきましょう」
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人間の国グラバドニア、オニスト陛下の部屋にて
「なかなかに魔王ブレニンも狸よのう。そしてエルリア女王も世界樹ときたものだ。さて、我々はどうすべきだと思う、勇者コウキ殿」
「エデンを甘くみては、痛い目に合うでしょう、どうもエデンはユキ殿の以外にも考えるものがいるはずです。その者たちが姿を見せないのが気になります。噂では、エルフの里ではユキ殿と一緒に精霊も目撃されたと言う情報もあります。エデン側は妖精だと言っていましたが。今は、下手に刺激せずにエデンの信用をどの国よりも先に勝ち取る事の方が賢明でしょう」
☆★☆
「どこの国もきっとなにかしら仕掛けてくるような気がするけど、和平を結んだんだから、あまりうたがうのも悪い気がすると思うんだけど」
ここはいつものメンバーが揃う会議室。
「おぬしは本当に甘いの」
「まぁユキ様らしいですけどね」
「こっちはバレないように監視もしてるから大丈夫だよ」
「ユキ様は相変わらずぅ、優しさがありますねぇ」
順にドーガ、グラン、フィーネ、フェルミナ。
どうやら、何処の国も思惑があるようだった。




