53話
さて、思わぬオムライスパーティーが開かれたが、和平の調停式が近づいてきた。
それぞれが最終チェックを終えていく。
一応魔族の国ガルガンティス側の宿舎と人間の国グラバドニア側の宿舎は離して作っている。
そのだいたい中央に式場を作っていて、調停式が終わればそのまま立食形式のパーティーに入る予定だ。
最初に到着したのは魔王ブレニン一行だった。
いつもの恰好と違い清楚な衣服に身を包んだ黒髪美人は何を着てもやはり似合う。
「ユキ殿、今日はよろしく頼む」
「もちろんです、ブレニンさん」
次に到着したのが人間の王オニスト一行。
こちらも礼服なのかいつもより王様って感じだ。
勇者君は護衛なのかいつもと同じ鎧姿だった。
第1王子は来ているが、第2王子は来ていないのが少し気になったので勇者君に聞いてみた。
「今日は、第2王子は来ていないんだね」
「彼は今、謹慎中の身なのですよ。ユキさんに迷惑をかけた罰として、しかしエデンは本当にすごいですね、モンスターといえど他種族がこうして住んでいるのですから」
「ありがとう、でも同じモンスターでもエデンのモンスターと野良のモンスターは違うから気を付けてね。一応エデンの民として、最低限のマナーと衣服は着せているけど、野良のモンスターは腰布一枚とか当たり前だから。」
「をう言えば、エデンには国旗がありませんね、エデンの民とわかるようにエデンのマークでも作ればいいじゃないですか?」
人から言われないと気付かないものだ。
確かにエデンに国旗は必要だな。
よし次の会議にエデンのマークを考えよう。
「国旗かぁ、ありがと、参考にしておくよ。」
両国ともまずは宿舎に入り休憩してもらう。
午後からは調停式が始まる。
僕も立会人とし出席するからすこし緊張気味だ。
あまり人前にでて同行するのには威厳が足りない気かがする。
こればかりは簡単につくものじゃないかぁ。
さて、僕も着替えないと、ミントが衣装を作ってくれていてるのだ、正直あまり僕には似合ってない気もするが、正式な立会人の衣装とし用意してくれたものだから着ないわけにはいかないのだ。
☆★☆
「ふぅ、いつ来てもここは緊張するものだな。ユキ殿に立会人を求めたはいいが、一番武力も国力も高いのエデンであろうからな」
魔王ブレニンはそう言ってソファに身を沈める。
「しかし、オニスト陛下の横に居たのが例の異世界から召喚された、勇者かつよいのだろうなぁ。私とどちらが強いと思うガンズレー?余興として少し遊んでやるか?」
魔王が挑戦的な目で宰相ガンズレーをみる。
「陛下お戯れはよしてください。ユキ殿の不況を買うかもしれません、今エデンからの支援がが無ければ我が国とて厳しいのです」
「わかっている。冗談だ。しかし、人間は本気で我らを倒そうとしていたのだな。勇者召喚がいい証拠だ。瘴気の一件で攻められていたら負けていたかもしれぬ」
「しかし、人間の国も大量のアンデットの発生でそれどころではなかった様子」
「そして、その両方を解決したエデン、か。まったくユキ殿には恐れ入るな」
「さようにございますな、これを機に特使としてエデンに何人か手の者を住まわせてみますか?」
「やめておけ、変に突っ込めばこちらが痛い目を見る事になる。どちらにしろエデンとはこれからも良好な関係を築く必要がある」
☆★☆
「やはりエデンは恐ろしい所だな、コウキ殿もそう思わぬか?」
「オニスト陛下の言う通り、武力では太刀打ちできないでしょう」
「そんな国が中立とはな」
勇者と王の会話聞いていた第2王子グエストも口を開いた。
「だからこその魔族の国ガルガンティスとの和平です、父上。エデン王は争いを好みません。しかしエデンとともにあるということは、争いに巻き込まれる可能性もあります。」
「何が言いたいのだグエストよ?」
「強者には好む好まざるえずとも争いの方からやってくることも、あります。また矛盾しているようですが、エデンは自分からその争いに割って入って治める国でもあります。今回の魔族の国との和平しかり、アンデットの兼もです」
第2王子の言葉に勇者コウキが口を挟む。
「殿下それ以上は、エデンに対して無礼に当たります。エデンは我らを救ってくださいました、その事実が大切です。それに国民の感情から見てもモンスターの国との同盟など今は認められないでしょう。きっと、だからこその中立の立場なのでしょう」
「先のアンデッドの兼で、ユキ殿は援助を申し出てくれた。国民がこれで飢えずにすむこともまた事実なのじゃぞ。あまりエデンを悪くいうな、疑うことには異論はないがな。国力からしてもエデンが上。すでにエデンは魔族の国にも援助をしていると聞いている。」
順に勇者と王が第1王子を窘めるようにいう。
「下手につついて竜を起こすなということですか」
「そういう事じゃ、エデンにはまだきっと秘密がある、それを無理に知ろうとするな」
☆★☆
午後になり式典が始まる、両国がそれぞれ、一同に会した。
「これより、魔族の国ガルガンティスと人間の国グラバドニアの両陛下に和平の儀にて証明をしてもらう。そして立会人とエデンがこれを見届けるものとする。」
僕はなるべく神聖な儀式として執り行う。
「では、両陛下、書面にサインを」
まずは魔王ブレニンがサイン、次に人間の王オニストがサイン。
そして立会人として、僕もサインした。
これを3部作製しお互いに持つ。
「今、ここに、エデンの元にて魔族の国ガルガンティスと人間の国グラバドニアの和平はなった!」
その瞬間に両国から盛大な拍手がなる。
どちらの国も戦争している場合ではなくいち早く国力を回復させたいのもあるのだろうな。
魔族は瘴気にやられ、人間はアンデッドにやられたからなぁ。
かわいそうだから両方に作物などの援助を行っている。
いずれは交易で元も取れるだろう、取れなくてもエデンに痛手はない。
歓談の席を設けたがなかなかお互いにぎこちない感じになっているな。
そんな中でもブレニンとオニストはワインを片手に何か話し込んでいる、流石は国のトップ。
しっかりと意見交換してせっかくの平和を大切にしてください。
そしてせっかく作った料理に手をだして食べろよ!
なんで誰も手を付けないの、こういう席では食べちゃうといけないのかな?
僕はアウラを連れてブレニンとオニストの所へむかう。
「両陛下とも楽しまれていますか?」
「これはユキ殿楽しませていただいているよ」
とブレニン。
じゃあ料理も食べてみて、おいしいから。
「ユキ殿その小さなレディは?」
とオニスト。
よくぞ聞いてくれました!
「養子になりますが私の大切な娘です。アウラ、ご挨拶なさい」
「初めまして、アウラ・カミヤです。よろしくお願いします。」
と可愛くスカートの先を摘まんでしっかりとカーテシーを決める。
うん、可愛いぞアウラ。
よくできました。
「初めまして、私はブレニンだ」
「初めまして、儂がオニストじゃ」
「ブレニンお姉ちゃんにオニストおじいちゃんだね」
と笑顔で答えるアウラ。
これはちょっと失礼かな?
と、おもっていたら、
「お、お姉ちゃん?もう一回いってみて」
「お、おじいちゃん?なんと可愛い、儂ももう一度言ってくれんか」
二人ともアウラの可愛さにやられたようだ。
誰かが言っていた、可愛いは正義だと。
実証されましたね。
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