49話
第2王子をビビらせ作戦は結構シンプル。
あとは、僕の腕にかかっているんだけど、ちゃんと加減できるかな?
今は軍の編成をしているところ、今回は大森林に侵入してきているから、トレントさん達も使うことにした。
そしてハイエルフの3人も今回はでるらしい。
「グリセラさん達までいいの、いくら今回は人死にを出さないようにする計画とはいえ、下手するとケガしちゃうよ」
「私たちも森のなかならお役にたてますから、それにずっとお世話になってばかりでは腕もなまってしまいます。私たちも弓と魔法は得意ですし、そこらの人間に遅れはとりません」
「自信があるんだね、じゃあ今回はよろしくね。折角だから弓の腕前も見せてもらうかな」
「喜んでお見せしましょう」
「御屋形様、軍の編成も終わりました。あとはいつでもいけます」
「じゃあもう少し焦らしてから出撃しようか」
☆★☆
第2王子軍では目下エデンの国を捜索中であった。
野心が高い第2王子は、自分が次の王にふさわしいと思い、なんとか戦果を挙げて功績を残したいと思っていた。
「ええい!まだ、エデンとやらはみつからんのか!?」
自分の兄である第1王子はエデンと争うべきではないと主張しその経緯を王に進言していた。
それも魔族との和平まで唱える始末。
エデンを仲介にすれば、可能だというのだ。
そんな話を信じる王も勇者も間違っている。
きっと兄は化かされたか、怖じ気づいたに違いない。
第2王子の私兵たちも今回の捜索には難色をしめしていた。
当たり前のように大森林のどこかにエデンの国があると云う情報しかないのだ。
命令である以上、従うしかなかったのであった。
「殿下落ち着いてください、ここはもうすでに奴らの支配圏かもしれないのです。ここは落ち着いてお待ち下さい。部下たちを総動員して、捜索しておりますので」
「落ち着いていられるか、モンスターの集団が国を作るなど前代未聞のこと、きっと魔王の差し金に違いない!よし、我らも森に入る全員で探すのだ!」
「殿下お待ちください!森には通常のモンスターもでるのです、御身に何かあれば、一大事にございます。ご再考を!」
「ならん、このままでは何も収穫なく、帰るだけになる。それだけはならん!私は兄のような臆病者ではないことを父上、いや陛下にみせねばならん」
こうして第2王子一行は全員がユキ達が待ち受ける大森林に入っていった。
☆★☆
フィーネの情報によると、しびれを切らして第2王子が森に入ったらしい。
自ら飛び込んでくるとは蛮勇なのか馬鹿なのか?
そもそも捜索段階で、王子自ら出てくること自体が信じられない。まずは確実な情報を取ってから動くべきなのに。
手紙通り愚かな弟なのだろうか?
お兄さん心配して、手紙までくれたのに。
僕たちは第2王子達を迎え撃つため出撃する。第2王子だけはなんとかケガをさせずに済ましたい。
騎士たちは、仕事だから多少のケガぐらい覚悟の上だろう。
戦力的にも数の上でもこちらが有利。
負ける事なんて考えられない。
まずは、先制攻撃としてグリセラさん達ハイエルフに弓での威嚇射撃を行う。
「グリセラさん頼んだよ射程圏内に入ったら撃ってもいいから」
「わかりました、ではもう撃ちますね」
森の中は見通しが悪くいくら彼らがまだ気づいていないとはいえ、300メートルは離れているのに、彼女たちは木の上に飛び乗ると矢を放った。
放たれた矢は見事に捜索隊の足元に突き刺さる。
「ここはエデン王の支配圏だ、勝手に入る事は許されん!即刻立ち去れ!次は当てる!」
グリセラさんはまずは警告からしてくれた。
「何処から撃ってきた!敵襲だ!」
騎士達はやはり連携がうまいのかのすぐに森の中でも密集隊形を組む。
だがグリセラさん達は盾の隙間をうまく狙って当てていく。
騎士全員が第2王子を中心に円陣を組む。
僕たちエデン軍はすぐさま包囲を完成させた。
「くっ!殿下、完全に包囲されています!」
「なんとか突破口を開くのだ!行け、わが精鋭部隊よ!」
数十名の兵士が突貫してくる。
さてそろそろ僕の新しい力を見せてあげようじゃないか。
僕はもって来た苗木に力を込める。
リグナムバイダ、地球上でもっとも固く重い木に僕の力を込めて変形させていく。
出来上がったのは巨大な木の竜、木竜だ。
ドラゴンゾンビとの戦いで巨大な相手に僕たちは苦戦した、そしてドラゴンの核を吸収した僕は疑似的ではあるが、木竜を生み出すことに成功。
「ド、ドラゴンだ!」
騎士の一人が叫ぶ。
僕が生み出した木竜は相手の攻撃を簡単に弾き、騎士達を軽くあしらっていく。
本物のドラゴンのようにブレスは吐けないがそれでも巨大さはあり重量も十分にある。
それだけで、脅威なのだ。
「ええい!何をやっている。は、早く始末せんか!」
これには第2王子も驚いているようだ。
「無駄な抵抗はやめて、投降しろ!さすれば、命までは取らん」
騎士達は武器を置いた。
「な、何をしている!戦わぬか!」
「流石にこの戦力差では勝ち目がありませぬ」
「くそっ!」
第2王子は悪態をつきながらも剣を納めた。
第2王子に付き従っていた、一人の騎士が両手をあげて一歩踏み出し来た。
「我らはグラバドニアの第2王子の騎士であり、ここにいるお方が第2王子カイン様である。我々に敵意はない。エデンの国への使者として参った。」
「使者ならば、第2王子を連れずに先に前触れをよこすべきだったな。すでにそちらの独断での行動であるとグエスト殿下から手紙を受け取っている。即刻立ち去られよ」
グリセラさんが言うとなんかカッコいいなぁ。
などと思いながら、僕は姿を隠したまま見届けていた。
「我らはここに来るまでに大分疲弊している、カイン王子も居るのだ、一度、エデンにて」休息を取らせて欲しい」
なおも図々しく、喰い付いてくる騎士さん。
「使者としては人数が多すぎる、こちらを攻め落とそうと画策しているのでは?」
「そのようなことはない!我らには全て未知の領域であるが為のカイン殿下の護衛である」
おおっ、そうくるのか。
騎士さんも必死で俺たち悪くないよアピールしてきている。
さあ、どう出るんだグリセラさん。
自分の国の事なのに任せてしまっているけど、展開がどうなるかワクワクです。
「では、王子を含む3名のみ入国が許されるか、エデン王に確認をとる。それ以外はこちらで拘束させてもらう。」
「なっ!承認できない、護衛の数は15人は入れて欲しい」
「別に構わん、それでエデン王に伝えてくれ」
「殿下それではあまりにも危険です。いっその事引き返した方がましです」
「このまま、何の成果もなく帰れるか!そちらの条件で構わん、エデン王に話をつけてくれ」
僕は軽く頷く。
一応ここにはいない設定だからね。
グリセラさんは伝書鳥をエデンへと送った。
伝書鳥は5分もかからずに帰ってきた。
一応ふりだけはしておかないとね。
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