44話
僕は勇者から呼び出しを受けているのでポチ、クロ、シロとガーグを連れて騎士団の詰め所までフード被り歩いてい向かっているところだ。
街の人たちはアンデッドの大群がこちらに向かって来ていることを知らないのか、勇者が来たことで浮かれたっているような状態だ。
まるで有名人がこの街に滞在しているからちょっとした賑わいをみせている。
これは、早めに避難させた方がいいのではないかと思うが、まずは騎士団と勇者に警告をしなければ。
詰め所につくと話が通っているのか、すんなりと会議室へ通された。
「勇者殿この者達が一昨日にお話しになられたものですか?」
「そのとおりです、団長」
僕たちは被っていたフードを全員とる。
騎士団の面々が息をのむのがわかる。
「初めまして、騎士団の方々、それに冒険者の方もいるみたいですね、僕が大森林に住むエデンの民の長をやっている、ユキと申します」
僕以外は人間の見た目と近いだけど違う種族という事にやはり驚いているようだ。
「大森林に住んでいる者など聞いたことが無い」
と団長さんが窺わしそうに言う。
「実際我々は300年もの間大森林にて過ごしておりました。しかしアンデッドの発生でこちらも被害がでそうなので、いつまでも隠れているわけにいかなくなった次第です」
「しかしなぜ今まで隠れていた?」
「先ほども言った通り、アンデッドの軍勢が現れて居る事。そして我々はこうして異種族でくらしているのです、それこそあなた達がモンスターと呼ぶ存在も我らの民にはいます」
この発言に騎士団だけではなく、冒険者達も騒ぎ出す。
騎士団の会議室にいる冒険者だけにきっと凄腕なのだろう。ガーグを見てからいつでも武器を抜けるように手が武器の柄にかかったままだ。
すると、冒険者の1人が話しかけてきた。
「モンスターといとどの種族と暮らされているのか?」
「オーク、ミノタウロス、こちのガーグの様な鬼人族、エルフなど様々です。」
まぁエルフはハイエルフの3人しかいないが。
またもや騒がしくなる会議室。
「ほんとにそんなことがあるのか!?」
「信じられないかもしれませんが事実です。我々は種族の垣根を越えて協力して生きている。今回協力するにあたって、我々が敵では無いことを認知して頂きたい」
また違う冒険者がこちらを睨みつけながら言う。
「そんなこと信じられるものか!モンスターと手を取り合えるはずがない!アンデッドの騒ぎも貴様らのせいではないのか?」
「もし、アンデッドの軍勢を人間の国ぶつけているのが我々なら、ここにわざわざ現れはしない。我らエデンにとっても脅威だからこそこうして話合いの場を設けて頂たのです」
「皆さん落ち着いてください!」
ここで勇者が叫んだ。
「今は火急の事態です。協力してくれるというなら協力してもらいましょう!僕は彼らが信頼できるとおもっています」
ずっと考えこんでいたような騎士団長が口を開いた。
「勇者であるコウキ殿が言うのであれば、騎士団は従うしかありません。今回のアンデッド討伐に置いての指揮権はコウキ殿がお持ちだ」
「悪いが俺たち冒険者は自分たちのやり方でやらせてもらいますよ。騎士団様たちとのにわかでの連携なんてとっていられねえ」
「勇者の名においてそれでかまいません」
流石、勇者カッコイイ。
即決即断で物事を運んで行ってるような気がする。
騎士団長がこちらをチラっと見て言った。
「それで、エデンの民はどう動くのだ?」
「我々は大森林より、アンデッド達の背後から攻め込みましょう。挟撃すればうち漏らしも少なく済むでしょうから」
「確かにその案はいいかもしれないが、いつアンデッド達が動くかが問題になるな」
騎士団長の疑問に僕は答える。
「我々の密偵がすでにアンデッド達がこの街に向かって移動しているとの情報をつかんでいます。もう5日もすると現れるかとおもいます」
「なんと、もうそんな距離まで近づいていいるのか!?こちらも斥候をだして確かめるとしよう」
それからは慌ただしく陣地の設営や騎士団の持ち場や冒険者達の持ち場などが決められて行くが、いまいち信用されてない僕たちは街の外の前線に立たされることになった。
背後からって言ったのに、僕たち5人は人質?みたいな扱いで、騎士も数名が僕の護衛という監視がついた。
魔族の国でもそうだけど、僕って信用されてないのね。
それに僕はどちら方というと後方の回復要員だと思う。
でも、ガーグも鬼人に進化して強くなってるからポチ、クロ、シロの4人で僕の護衛は前線でもできるだろう。
それに、前線は何も僕たちだけではない、勇者も前線にたつのだ。
旅立つ前に4大精霊達から力を込めてもらった指輪もある。
火精霊達からは赤い色の宝石が付いた指輪。
水精霊達からは青い色の宝石が付いた指輪。
風精霊達からは緑色の宝石が付いた指輪。
土精霊達からは茶色の宝石が付いた指輪。
どれも僕を守るために作られたものだ。
これさえあれば、生き抜いてみせる。
使い方に多少の不安はあるけれど、なんとか使いこなしてみないと。
アンデッド達の襲撃まで後、5日。
僕は街の水を清めて回ったり、今のうちに病人の治療をしたりしている。
いざと言時に動けない人がいたら逃げ遅れてしまうかもしれないし。
そんなことをしていると3日目にはだいぶ街の人たちにも受け入れられ始めた
中には僕の事を聖者様と拝むお年寄りもでてきた。
なぜ拝む?軽く魔族の国のデジャブにも出会った3日目だった。
エデンとのやり取りも続けている。
すでに軍の編成も終わっているので、移動を開始しているみたいだ。
ただギリギリになる可能性もある。
兵站もかねての移動は時間がかかる、アンデッド達の動きも遅いのでなんとか間に合うように急いでもらってはいるが、どうなるか。
4日目、いよいよ明日にはアンデッドの軍勢も見え始める頃だろう。
騎士団も冒険者達もきんちょうしてるのがわかる。
一応住民には避難勧告がだされ、街の中避難する人たちであふれかえっている。
中には避難せずに志願兵としてでる者もいるようだ。
自分たちの街を守りたい気持ちが窺える。
そんな中、僕は勇者に呼び出さた。
部屋には2人だけ。
「明日に迫っているのに呼び出してすまない、どうしても気になることがあって、ユキさんの忌憚のない意見がききたくてね」
「どんなはなしですか?」
「僕は日本からこの世界に召喚されてきた。この世界に平和を、と。悪いモンスターに魔王、乱暴者の獣人とかね。でもユキさんの仲間はそうじゃないみたいだから、もしかして僕が教えてもらった事は偏見なのかもって思ってさ」
「なるほど、お話するのは構いませんが、人間の国の前ではおっしゃられない方が良いでしょうね」
「うん、わかってる」
僕は、実際に僕が感じた事、見てきたことを正直に話した。
この青年は本物の勇者なのだろう。
お互いに話している内に本当に優しく心がキレイな青年だと思った。
「ってことはすべのモンスターが悪ではないの?」
「野良のモンスターや知性の低いモンスターはどうしてもいるし、エデンの民だけがもしかしたら特殊なのかもしれない。一概にはなんとも言えない」
「じゃあ魔王は存在するけど、世界征服を狙ってるわけではないんだね?」
「その通り、魔王は存在するし、世界を狙ってはいないよ。内とも交易を行って今の所、仲良くさせてもらってるし、モンスターも別にRPGみたいに魔族が操っているわけじゃない。魔族もここに居る人間達と変わらないよ」
僕と勇者は話合い続けて少し仲良くなった気がした。
彼にならエデンを見せても大丈夫な気さえした。
「遅くまで話に付き合ってくれてありがとう、参考になったよ。明日はお互いに頑張ろう」
「こちらこそ、有意義な時間がすごせた。明日はアンデッド達をやっつけてこの街にも平和を取り戻そう」
こうして4日目は過ぎた。
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