39話
嫌がること?
そういや、エルフの国で助けたパックがいたな。
あいつ使えないかな。
いたずらっ子だけど、こういう時は何か案が出せるかもしれない。
「と、いうわけで、来てもらったのだよ、パック君」
「呼ばれるのいいけど、なんでおいら、ぐるぐるに春巻き状態で捕まってんの?」
「お前が逃げるからだろうが!」
なんで呼んでんのに逃げるのこいつ、捕まえるにわざわざ能力使ったよ!
「トロール相手に悪戯をいや、嫌がらせになりそうなことでもいいんだけど、なにかある?」
「あいつら鼻がいいからなんか臭い物でもぶつけたら?」
うん、安直な意見だね。
それは、僕でもかんがえたけど、臭い物ってなに?
いやまてよ、鼻が利くな別に臭い物じゃなくてもいいのでは?
「森中に偽のオーガ達の匂いをまけないかな?」
それかフィーネ達に頼んで風でにおいをまけば、結構使えるかも。
においの元を作るのが大変そうだけど。
「可能だけど、目視されたらあんまりいみないよ」
「それでも、少しでも時間が稼ぎにはなるはずだから頼むよ」
それからは、着々と準備を進めていく。
もちろんシルフの警戒網を使いながら慎重に。
魔族の国の道づくりは中止になってるけど。
早めに防衛体制を敷く必要がる。
それから3日目の夜だった。
「ユキ大変大変、もうトロール達が近くまできてるよ!」
フィーネが慌てて、報告しくる。
早すぎる!
まだ準備も完璧じゃないのに。
「あと、どれぐらいで、エデンに到着しそうかわかる?」
「あいつらゆっくりとだけど確実にこっちに向かってきてるから多分明日には着くと思う」
「わかった、取り敢えず警備隊と戦闘可能なエデンの民たちにトロールの襲撃が近いことを風精霊達を使って伝えて、準備は完璧とは言えないけど何とかするしかない」
「わかったよ」
フィーネはそう言うとすぐさまに飛んで行ってくれた。
さあ、僕も準備しないと、エデンに手を出したらどうなるかわからせてやる。
まぁ、僕は基本的に後方支援なんだけどね。
回復役は僕と、水精霊たちの癒しの水、いわゆるこの世界でいうポーションみたいのものを準備。
ポーションにはエデンで育てた薬草も配合してるから、エデンポーションは効くよ。
エデンポーションもできるだけ作成して各部隊に渡してある。重症なものは後ろに下がらせる予定だ。
翌朝には奴らトロール達がやってきた。
本当に知性が低いみたいだ、襲撃するなら夜のほうがいいだろうに、でもこちらには好都合。
「風精霊達、においの錯乱を開始!」
風に乗ってオーガ達やオーク達の匂が森に急激に増えていく。トロールがそのにおいの元にたどりつとドスンっと大きな音がした。
パックお手製の落とし穴にグラン達土精霊が改良を加えた落とし穴、中には鉱石で作った棘の山がある、
それをあちこちに仕掛けておいたのだ。
後は誘導するために風精霊ににおいの操作を風で操るだけだ。
それでもすべてのトロールが引っかかるわけじゃない。獲物がいないとなると目視でこちらを見つけた奴らがやってくる。
「火矢、および炎の用意、放て」
今度はドーガが声を上げる、トロール達に直撃した火精霊達のファイアーボールは効果的に聞いているが、火矢のほうは軽く足止め程度のようだ。
それでも大分数を減らしてくれた。
城門は木製で急ごしらえで作ったものだ。
すぐにでも突破されてしまうだろう。
外堀のおかげで城門前のつり橋も上げたまま、このまま城壁の上からできる限り数を減らしていこう。
何体かは外堀から来ようとして溺れる居る所を城壁で攻撃それでも奴らはあきらめずに仲間の屍の上から登ってこようとしている。
よほど腹が減っているのだろう。
このまま籠城戦でもちこたれるだろうか?
未だに負傷した者いないが、ある程度数が減ったら、こちらからうってでるとドーガ達4大精霊は言ってたから、ここからが正念場だ。
「よし、つり橋を下げろ!うってでるぞ!」
ドーガのあいずで、我がエデンの国民たちとオーガ達が勝負にでる。
こちらは数の利点を生かして、トロール1匹に対して4人で挑む手はずになっている。
負傷者が出た場合は、即座に撤退して、僕や水精霊が傷の手当をして、また、出撃することになる。
オーガ達は仲間の恨みもあるのか奮戦している。
ポチ、クロ、シロ達の隊も戦火を上げているようだ。
しかし、苦戦している部隊もいるようだ。
野良から住民になった部隊オーク達だ。
彼らは単体ではオーガにも勝てないだろう。
それを4人とは言えトロールと戦っているのだ。
運ばれてる来る負傷者もほとんどがオークだ。
一応はミノタウロスとの混戦部隊にしているがやはりきつそうだ。
「重症な者は僕の所に、軽症な者は水精霊たちの所へ、だれも死なせるなよ!」
僕は、運ばれてきたけが人たちを必死で治す。
また、戦場へ戻すために。
これが王のすることなのか?
肉体の傷は癒せる、では恐怖は?
自分たちより強い者に戦いを挑むなかで生まれた恐怖は癒せない。
「まだ戦えるか?無理なら救護班にまわれ」
僕は傷を治した者達に声をかけるが、みなが戦いに向かう。
僕の所に到着するまでに死んだ者もいた。
これが野良のモンスター達の日常なんだろうか?
殺るか、殺られるか。
なんと殺伐としているのだろか。
直接戦っているわけではないが、戦場に戻って行く兵士とかした国民たちが此処に置いて行った恐怖が僕は怖かった。
もっと前線近くで治療すれば助かる命も増えるだろか?
それともただ邪魔になるだけだろか?
僕の頭の中にはそんな気持ちと戦いに対する恐怖が織り交ぜたった心情でいっぱいだった。
☆★☆
トロール戦から1日後、なんとかトロール達はやっつけたが、こちらにも死者がでた。
主にオークにオーガ達だ。
もともと野良のモンスターだった、オークはエデンにいるオークエンペラーに付き従う者がほとんどだった。
それは同種族でも生存本能が強い個体と居ることを望んだ結果だろう。
オーガ達はエデンに庇護を求めた、これも生き残るための手段として、支配下に入ることを条件として。
僕は、庇護を認め、トロール達と戦うことを選んだ。
その結果の国民の戦死。
戦死、それはエデンの王たる僕が出した被害だ。
僕が庇護を認めたオーガ達のための戦い。
自己をただすために思いつく嘘。
ほんとはもっと圧勝できると思っていた。
誰も死なないと思っていた。
トロール戦後の会議室で僕は報告を聞く。
「こちらの損害は?」
「通常種のオークが24人死亡です。あれだけのトロール相手でこの数は軽微と言ってもいいですよ、ユキ様」
グランが気を使ってくれているのがわかるけど、僕が指示をだしたから死んだ24人だ。
「すべてがおぬしのせいではないが、おぬしが決断したことだ。それを受け止め今後の糧にせよ」
相変わらず、ストレートなドーガ。
でも気を遣わせているのがわかる。
ドーガの言う通り、僕が決断したことだし、これからも必要とあらば兵士とかした国民に戦いを強要せざるをえない。
いくらモンスターだからと言ってもエデンは差別なく受け入れる国にしたい。
それを邪魔するなら、認めないなら、戦う必要もあるのだろう。
僕はやっぱり弱いなぁ。




