30話
短い列と言っても門番さんもちゃんと仕事をしているのか荷物の検査など、何しに来たのだと、しっかりお仕事している様子。
なかなか回ってこないなぁって思ってたら、後ろの商人さんに話かけられた。
「見ない顔だがあんたらも薬草茶を売りに来たのかい?」
「ええ、そんなところです。この町は初めてなんですよ。よくこの町には訪れるのですか?」
「まぁここが俺のホームだからな」
商人のおじさんと雑談していたらついに僕たちの番が回ってきた。
「次の者、なっ、モンスターを騎獣に使っているのか」
ああ、アオとその一行はどう見ても黒で統一されているから怖いよね。
「でも、気は穏やかなので襲い掛かったりしませんよ」
「ま、まぁいいだろう、目的はなんだ?」
「瘴気に効く薬草茶を持ってまいりました。」
「ん?ちょっと待て、黒い騎獣に異なる種族どうしで、行商をしている。報告に上がっている、お前が黒い豊穣の男神とうたっている者か?」
「??」
心当たりはあるけど、しかも黒いってなに?自分から名乗った事はないぞ。
まるで、アオたち、黒いユニコーンに乗ってるからかな?なんか悪役っぽいぞおい!
「きたら、領主様がすぐ通しせとのおたっしが来ているしばし待て」
そう言って横にそれて応接室みたいな所にとおされた。
すぐに若い兵士が走っていくのを見たので、多分領主様のところにもでも行ったのだろう。
でも、移動しながら治療はして回ったけど噂が廻るの早くないですか?
「すでに親方様の偉業がこの町にも届いておるのですね、さすがです」
ポチはそういうけど良い風にとらえられているといいけどねぇ。
しばらくするとさっきの門番さんがきて先導するからと領主様の館までドナドナされました。
領主の館はすごく立派な門構えで広さもあり屋敷自体もかなりでかい。
自分たちが建造中の砦でより立派なのでは?なぜか負けられないと思ってしまった。
ここでも応接室に通されてソファーでくつろぐ。
さすが貴族なのか高額そうなツボとか絵画とか調度品が整っている。
僕の家のカオス感とは別格だなぁと思っていると、突然ドアから勢いよく大男が入ってきた。
「噂は聞いている、君が黒い豊穣の男神と言われている者か!?」
挨拶もなしに単刀直入に聞く人だ。
「自称はしてませんが、私たちは村々を回り治療していることは確かです」
「なんでも瘴気に侵されている者を助けて回っている者が聞いている。特徴も一致している。本物なら妻を治してくれ!もう妻には薬草茶の効き目がほとんどきかんのだ!」
「奥様の容態をみてもかまいませんか?」
「もちろんだすぐに来てくれ!」
僕は、領主さんの後ろについて奥さんの寝室まで通された。
そこには、瘦せこけて息が苦しそうな今までの瘴気に侵されていた人たちと同じ症状の女性がいた。
これならいつも通り治せる。
僕は、彼女胸に手をかざして力を使う。
いつもながらに不味くて苦い空気を我慢して清浄にしていく。
これで、彼女の瘴気は取り除けたはずだ。
「これで一先ずは大丈夫です」
すると彼女も息苦しさが取れて目を覚ます。
「あなた、この方たちは?」
「君を治す為に私が呼んだ医者だ、気にしなくていい。今はゆっくりと休んでくれ。私はこの者達と話をする必要がある」
僕たちは部屋を出てもう一度応接室にて話をすることになった。
「君たちには感謝する。藁にもすがる思いでね、まじないでも何でも試していたが、君たちは本物のようだ、改めてありがとう」
領主さんは頭を下げた。
領主って簡単に頭を下げていいもんなんだろうか?でもこの人の言葉には確かに優しさと感謝の気持ちがこもっていた。
「頭を上げてください、こちらも当然のことをしたまでですので」
領主さんは近くに立っていた、執事さんに目配せをするとテーブルの上に袋が置かれた。
「金貨300枚だ、受けっとってくれ」
はて?報酬?そんなものは今まで受け取ってこなかった。
たいていは作物の苗や寝床、食事で済ませてきたからお金の概念が無かった。金貨がどれぐらいの価値があるのか僕はわからないぞ。でも頂けるのであれば頂いておきましょう。
お金はあって困るものはではないしね。
「ありがとうございます。では、遠慮なく」
やったー、価値は分からないけど金貨をゲットしたよ。
使い道がわかんないけど。
「そういえば、未だ名乗ってなかったな、私の名前はフィル・ベルク・スベレーニアだ。このあたり辺境伯をやっている」
辺境伯って結構偉い人だったりするよね?どうしよ、対応の仕方がわからない。
「僕は、ユキともうします」
思わずあだ名で答えてしまった。ほんとはユキヒトってなのろうと思っていたのに。
「ユキ殿か。それで、どんな魔法をつかったのか教えてくれないか、今まで何人もの薬師、魔術師にも見せたが治らなかったのユキ殿は一瞬で治してしまった。治癒魔法を使ったのだろう?」
そんな魔法しりません、しかしなにか設定を考えておくべきだった。
でも、この人なら信用できそうな気がするし辺境伯なら魔王にも詳しいはずだろう。
「そんなところです。実は私たちは、あなた達魔族が妖精を狩っている森からきました。」
「なんと、あの魔の大森林からの住人なのか!?報告には人影や消えた者たちがいると聞いていたが、まさか本当に住人がいたとは!」
魔の大森林なんて呼ばれていたのかぁ、全然空気もきれいで良いとこなのにな。
「はい、私たちはそこから来ました。これは辺境伯を信じて話をしています」
「妻を助けてもらったのだ、こちらもそれ相応に対応させてもらうことを約束する。それで何か条件でもあるのか?」
「はい、我々はあなた方のとらえた妖精の解放を要求します、その代わりこちらは、瘴気の問題を解決できる」
「ふむ、しかし妖精が瘴気の元と考えている者もいる。いきなり解放は難しいだろう。それこそ魔王様の命令で妖精の研究がされているのだ。ユキ殿が瘴気を治せるのわかったが、原因がわからなければ、それこそ、そちらのマッチポンプだと思われかねないぞ」
原因かぁそれもまだわかってないんだよね、多分瘴気の一番濃い場所に原因があると思うのだけど。
あっ!そういえば、ゲーム内でも瘴気の汚染で作物が枯れたことがあった。
あの時は、嵐と共に悪魔がやってくるから、台風対策をして、悪魔を追い払う準備をしたら大丈夫だったはず。
悪魔は清めた水で確か追い払えて、世界樹の枝で倒せるんだ。だから世界樹の種を手に入れときは悪魔も倒せるって浮かれていた気がする。
でも僕自身が世界樹になった今、枝ってどうすれば?僕のこの細い腕(枝)で倒せる気がしない!
それに悪魔がいたとして、どこに潜伏してるかなんだよね。
「なにやら、考えこんでいるようだが、心当たりでもあるのか?」
「多分なんですが、悪魔が絡んでるとおもいます。」
「なにっ!?悪魔だと、して何か解決する方法があるのか?」
「追い払うのは簡単ですが、倒すのはなかなか難しいんです」
倒すってなったら僕のが戦うことになりそうだからね、戦闘なんかむりですよ、各ゲームでも戦闘はRPGでレベル上げて物理で倒してきた僕だからね。
実際に戦うとか無理ゲーですよ、辺境伯様!
水は僕自身が世界樹の力で清める事ができるから大丈夫、それに悪魔は清浄な土地では生きられないはずだから、魔族の国、全土を清めるのは何年もかかるよ。追い払ったら追い払ったらでまた他の国で瘴気をばらまかれても困るし。
どうしたもんかね、ここはやはり魔王様に頼んで戦ってもらって僕のエコプラントで檻でも作って封じ込めるようにするしかないかも。
「追い払うだけでも十分だ、どうすればいいのだ」
僕は自分の考えを辺境伯に伝えた。




