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26話

 僕に娘のアウラが出来て1ヵ月が過ぎた。

 アウラの事はすぐにエデンのみんなに伝わり、ちょっとしたアイドルになってきている。

 パパは鼻が高いような、近づく男どもが気に食わないような。

 この気持ちはなんだ!


 ここで僕の愛娘について、補足をしておこうと思う。

 アウラは普通のアウラウネとはちょっと違う。

 アウラウネと言えば、花から上半身が見えているイメージがあると思うが、アウラはその花が無い。

 僕が蕾の段階で成長を止め、エルフ王がまだ成熟していないアウラを無理やりアウラウネの花から引き抜い為だ。

 そのため、本来なら定着している花の部分が無い。

 トレント、ドライアド達から話を聞く限り、普通は花と引きはがされたアウラウネは衰弱して死に至るらしい。

 だがアウラの場合、アウラウネとして未熟の状態であり、僕が世界樹として治癒を行なった為、花の無いアウラウネとして生きていけるのではないかと結論に至った。

 僕としては、アウラを助けられて『良かった』としか思わなかったけど、他のみんなは色々考えてんだなぁ。


 「パーパ、どしたの?」


 「なんでもないよ、もうちょっとお散歩したら戻ろうか?」


 「うん!」


 僕が考え事をしていたら、アウラが首を上げ僕の顔を見る。

 それだけで、なんか嬉しいというか、カワイイというか、パパ頑張る。


 アウラと手をつないで、散歩を終え、家に戻るとミントがアウラの為にアップルパイを焼いてくれていた。

 アウラをミントに預けて、僕は会議室に向かう。

 ここ最近の報告を受けるためだ。

 部屋に入ると、ドーガ、グラン、ポチの3人が……あれ?なぜに3人しかいないの?


 「なんで3人しかいないの?他のみんなは?」


 みんな苦笑いを浮かべていた。


 「アウラ様と一緒におやつを食べるそうですよ」


 呆れた口調でグランが答える。


 僕だって、アウラとアップルパイ食べたかったけど、ここに来たのに!

 それはヒドイ!

 僕も行ってくる!


 「どこに行く?ユキが居なくてはいつまでも終わらんぞ」


 ドーガにつかまりました。

 しょうがない、早く終わらせましょうかね。


 「行かないよ、冗談に決まってるじゃん!で、どうなってんの?」


 「じゃあ、僕から説明させてもらうよ」


 グランの説明を聞くところによると、エデン周辺の森にはエルフ達の姿は無いらしい。

 これは、エルドーラード内がまだ落ち着いてない証拠だと思う。

 ちなみ僕の眷属をなった3人のハイエルフ達は森の警邏をよくしてくれている。


 次に人間達。

 前回にがした人間をシルフ達が後をつけ、小さな街を見つけている。

 その街から今も少数ではあるが、人間達は森に入ってくるらしい。

 逃がした人間のパーティ達はちゃんと報告しなかったのか、でも数自体は減っているみたいなので多少の効果はあったみたいだ。

 表だっての混乱も人間の兵士が集まってきている事もないみたいだし、エデンの事はまだ一般的には露見していないとみていいかも。


 獣人とドワーフも以前とあまり変わらないようだが、問題なのは魔族だ。

 魔族に関しては、すでにこちらが2人殺害している。

 魔族側にまだエデン自体の存在はわかっていないようだが、敵対存在がいると認識していると思っていい。


 魔族の国、ガルガンティス。

 エデンの民の山羊人、羊人の2種族は魔族と容姿が似ているらしいので、ガルガンティスに潜入している。

 潜入部隊から魔族の国名がわかり、魔族の動きも探ってもらっている。

 僕は、潜入なんて危険だから反対していたんだけど、気が付いたら、部隊編成が志願兵から編成され、出発した後に知らされた。

 そのことに文句を言ったら4大精霊全員に怒られた。

 相変わらず、覚悟やら自覚やらと正直うんざりしている。

 僕が王様にならなくても精霊達がやればいいのでは?とか口にだしたらさらに怒られた。

 王様ってえらいんじゃないの?

 僕、怒られすぎ。

 精霊、怒りすぎ。

 怒られすぎて、僕の反対意見をうやむやにされている気もするし、いいように担がれている気もしないでもない。


 む?また話しがそれた。


 魔族の国、ガルガンティスの王はどうやら女性らしい。

 女王だね。

 女王の名をマルスマリアって名前らしい。

 マルスなのかマリアなのかはっきりしろよ!と思う。

 魔族の国ガルガンティスには、今、問題が起きている。

 『瘴気』と言われる、聞くからに体に悪そうな、未知のエネルギーが発生しているらしい。

 瘴気は魔族を病に犯し、魔物を狂化させているらしく、ガルガンティス国内でも少なくない混乱が起きているとの事。

 女王マルスマリアは、この瘴気を抑える為の研究に妖精を使っているらしいんだ。

 妖精は自然の象徴であり、自然の自浄作用を強くする力があるらしい。

 実際、エデンで暮らしている妖精にそんな能力があるかわらないし、試すつもりもないので、あくまで『らしい』だ。

 この世界の住人はなんでもかんでも、妖精に頼りすぎだよ。

 まぁエデンにもお手伝い妖精のヘルファー達、家妖精シルキーのミントに僕もかなりお世話になってるけど、ちゃんと住処も用意してるし、食事もある、交代で休みもある。

 給料は……ゲームシステムにはなかったので、今もあげた事がないけど。

 あげたほうが、いいのかな?

 クワとかもって妖精一揆とかおきない……よね?

 

 「魔族もエルフ達みたいに妖精を捕まえて、どこかに閉じ込めてるって事かい?」


 「エルフ達より、悪いと思うよ」


 「悪いって、何が?」


 「魔族は捕えた、妖精から能力だけを取り出せないかと研究しているらしいよ。これは噂の段階で、事実かどうかは、わかないけどね」


 「噂かぁ。あのさ、妖精から力の吸出しなんかできんの?」


 「それは、わからない。でもこの世界には魔石と呼ばれる力の塊みたいな不思議な石が存在するしね。あるいは、その魔石を妖精から作ろうとしているのかもしれない。ま、妖精から作られたなら、魔石ではなく、妖精石と呼ぶべきかな」


 「いやいやいや、グラン。魔石でも妖精石でも妖精からもし作られたら、それこそ妖精狩りがもっと進行してしまうじゃん。ただの噂であればいいけど、事実なら何とかしないと」


 「何とかって、言われても……いっそのこと正面から魔族に戦争でもふっかけて力でねじ伏せるかい?」


 おい。

 なんですぐに戦争になるんだ。

 まったく脳筋精霊め、なんでも力づくはよくないんだぞ、グラン!


 「そうだな、正面もいいが戦となれば奇襲も必要になるだろうな」


 ドーガ、君は予想どおりだよ。


 「お二方共。お館様は戦争は望まれておりません」


 おっ。

 さすが、ポチ。

 脳筋精霊と違って僕の方針をわかってるね。


 「ここは、速やかに迅速に豪速に女王マルスマリアを暗殺が手っ取り早いかと」


 こらこらこら!

 暗殺もダメでしょ!

 やばい、ポチまで脳筋たちに毒されていってる。


 「3人とも、戦争も暗殺もしません。できるだけ平和的に解決できるように考えようよ」


 「平和的とは、どうするのだ。何が案でもあるのか?」


 「魔族達が妖精を誘拐するのは、瘴気による、魔族達の病と魔物の狂化が原因なんでしょ。じゃあ、僕が行って、まず病気を治す。瘴気も世界樹の力を使えば、浄化は可能だと思うし。解決すれば、ガルガンティスに恩も売れて、妖精の誘拐もなくなる。そうすれば、ガルガンティスと交易も結んじゃったりして、平和でしょ」


 どうだ、これが平和の使者、世界樹ユキの平和的解決方法。

 いい感じじゃね。


 「「「はぁぁ」」」


 なんで、3人共、ため息が出るんだよ!

 超平和的じゃん!

 何故だー!!



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