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25話

 エルドラードから脱出して、僕たちはエデンに無事、戻ってこれた。

 追手が来るかと思っていたけど、そういった事もなかった。

 先に逃げていたハイエルフがエルフの結界を抜けると、穏健派とコンタクトを取り、エルドラード国内は今、内部分裂を引き起こしていて、追手差し向けるどころではないらしい。

 

 エルドラードでポチがあそこにいた理由はというと。

 ミントの指示だったらしい。

 何でも、僕の危機にいち早く動けるようにと、隠密を重視して、ポチ一人で後を付けていたらしい。

 しかし、エルフの結界で中に入れず、2、3日エルドラードの周りでうろついていたとろ、脱出してきたハイエルフ率いる妖精達に会い、事情を説明。

 エルドラードに潜入となった。




 しかし、ミントは出来すぎだ。

 今も僕の執務室で、紅茶を淹れてくれている。

 ちょうど喉が渇いたころに持ってきてくれた。

 秘書を超えた、(スーパー)秘書だね。

 金髪だし。

 スカートの中に尻尾を隠してないかな。

 いつかあの鉄壁スカートを攻略してみせる。

 あっ、ミントがすごい慈愛に満ちた笑顔を向けてくる。

 絶対、心の中読んでるのに、その笑顔は反則です!

 ざ、罪悪感が、ひしひしと生まれてきております!

 心のなかで土下座しておこう。

 スイマセンデシタ。

 でも表情は僕も、イケメンスマイルのつもりで微笑み返す。


 「そういえば、ご主人様がお持ち帰り(・・・・・)された、アウラウネの子が目を覚ました」


 目覚めたなら、部屋に入ってきたときに先に教えてほしかった。

 しかもいい方に棘を感じます。

 見た感じ5歳児ぐらいの少女?いや、幼女をお持ち帰りしたら、犯罪です。

 これは、保護ですよ、保護。

 誘拐でもなんでもないのです。

 だからミントさんや、妬気持(やきも)ち(注:こんな漢字の使い方はしません)は焼かないでいいんだよ。


 アウラウネの幼女が目を覚ましたと聞いて僕は幼女がいる部屋にミントと向かう。

 エルフ王がやろうとしていた事は眠っていたから覚えてないだろうけど、女子(ミント)がいた方がいいだろうと思って。


 扉の前について、まずはノックをする。

 相手が幼女だろうと、女性だからね。

 僕は紳士なのだよ。


 しかし返事がない。

 うーん、寝てるのかな?

 取りあえず開けてみよう。


 ガチャっとな。


 アウラウネの幼女はベッドから体を起こしていて、僕の顔を見て“はっきり”と言った。


 「あっ、パパだ!」


 「は?」


 幼女は言うやいなや、ベッドから飛び出して僕に抱きついてきた。

 衝撃的な出来事すぎて、理解が追い付かない。

 抱きついたまま幼女は続ける。


 「パパに会いたかった。寂しかったよ~」


 その声は鼻声で、安堵からくる涙が流れていた。


 「落ちつて、もう大丈夫だから」


 僕は、なるべく優しく声をかける。

 膝をまげ、幼女の高さに合わせて、優しく抱きしめる。

 落ち着くまで、まってあげよう。

 僕は、パパではないけど、幼い子が泣いている。

 きっと混乱しているんだろう。

 もう少しこのままでいてあげよう。

 きっと冷静になれるはずだから。


 何となく、ミントに顔を向けると、ミントは笑顔のままだ。

 というか、笑顔のまま硬直してないかい?

 まさかね、あのミントだもの。

 そんなことがあるはずがない。

 目を見開きながら、笑顔って器用なことするね。

 さすが超秘書、ミント。


 「落ち着いたかい?」


 「もう、パパはどこにも行かない?」


 まだ、パパ言うのか。

 僕は誰とも結婚してないですよ。

 もちろん、子供ができるような事もした事もな……って、うるさいわ!

 あぶない、あぶない、危うく自分で自爆するとこだった。

 僕は紳士、僕は紳士、僕は純情、ピュアボーイ。

 ん?だれか、混乱の魔法をかけた?


 たぶん、落ち着いてきたぞ僕。

 きっと、大丈夫だぞ僕。

 いつか、大人になれるさ。

 グスン。


 「パパ?」


 アウラウネの幼女は、首をこてん、と傾けた。

 可愛いすぎる!

 パパ、堕とされちゃった。

 誰にも誘拐されないように、パパが保護します。


 いやいやいや、いい加減に正気になりましょうかね。


 「残念だけど、僕は君のパパじゃ……」


 「えっ」


 アウラウネの幼女が今にも泣きそうな顔で僕を見つめてくる。

 ダメです。

 その顔はダメです。

 反則です。


 「僕は君のパパじゃ……パパじゃあ……パパです」


 無理。

 あんな悲しそうな顔されたら、抵抗できません。


 「パパ!パパ大好き!」


 満面の笑みで抱きついてくる、アウラウネの幼女。

 可愛い。

 僕、育てます。

 言っておくけど、僕はロリコンでもペドフィリア(注:同じ意味です)でもないからな!









 「と、いうわけで。僕はパパになりました」


 ここは会議室。

 エルドラードから戻ってきたら新しく建築されてました。

 ここに居るメンバーはいつものごとく。

 ドーガ、グラン、フェルミナ、フィーネ、ポチ、クロ、シロ、ミント、僕と娘。

 合計10名です。

 ちなみに突如できた娘は、僕の膝の上で抱きついてます。


 「緊急会議だと聞いてきてみれば、なんなのだ」


 ドーガを始め精霊の皆様、呆れております。

 クロとシロがなぜか固まっています。

 おーい、会議中だよ、ぼーっとすんな。


 「ユキ様、聞いたところによると、そのアウラウネはユキ様が種から途中まで、育てたのですよね?」


 「うん、そうだよ。それをあのエルフ王が成長途中のこの子を無理やり花から引きちぎるようにこうやって」


 「ユキ様、落ち着いてください!」


 はっ、あのエルフ王を思い出すとつい怒りが。


 「いいですか、アウラウネもトレントやドライアドのような植物の妖精です。まぁ魔物とも言われていますが」


 娘を魔物扱いするやつはエデンの軍勢で、蹂躙します。

 てか、さっきから何が言いたいのかな?グラン君。


 「種からユキ様のマナを浴びたのなら、それは眷属です。娘とは違います」


 グランに言われ見れば確かに、眷属にするときにも植物をただ育てるのにもマナを使うけど。

 あれ?みんなもしかして僕の子供たち?


 「何を考えてるか、わかりませんが、マナも使い方次第ですから」


 「わたし、パパの子じゃないの?」


 「そんなわけないだろ?パパの子供だよ」


 僕はそう言って、愛娘の頭をなでる。

 娘は嬉しそうに僕に引っ付いてくる。


 「これは重症ですねぇ」


 フェルミナ、重症ではない。

 これが愛ですよ。


 「別にかまわん。それで、緊急の会議とはなんなのだ」


 と、そうだった。

 ドーガに言われて思い出した。


 「この子の名前を考えようと思って。仮にも僕はエデンの代表だろ?だからこの子にもふさわしい名前がないかと思って」


 「そんな理由で集めたのか」


 そんな理由って、名前って大事だと思うよ。


 「親になるなら、自分で考えた名前はないのか?」


 「考えたんだけど、いい名前が思いつかなくてさ。『ひまわり』とか『花子』とか『たんぽぽ』?」


 「却下だな」


 ドーガにバッサリいかれました。

 わかってるよ、ネームセンスがないから、みんなにも考えて欲しかったんだ。


 「ご主人様、さすがにそれは……」


 「お館様、いい名前だと思いますよ」


 順にミント、ポチ。

 ミントもやっぱり反対だね。

 ポチよ。

 何でも僕に賛成してはいけないよ。


 「よし、我が考えてやろう!名前は、ゴンドービッドでどうだ」


 「却下」


 今度は僕がドーガをバッサリと。

 ドーガもセンスないね。


 その後もみんな名前を考えてくれたけど、これと言った名前がない。

 愛娘もいつのまにか膝の上で眠り姫になっていた。


 「うーん、困りましたね」


 さすがのミントも困っているようだ。


 「アウラウネだから、アウラとかどう?可愛いくない?」


 これは、もちろん僕の意見。

 皆の表情が安直すぎる!って、顔してるのがわかります。

 でもいいとおもうんだけどな。


 「アウラ?それが私の名前?」


 おや、起こしてしまったようだ。

 まだ決まってないから寝てていいよ。


 「わたし、アウラ!ありがと、パパ!」


 あっ、やっちまった感が半端ない。

 皆も、エッってなってる。

 でも嬉しそうに何度もアウラって呟いてる。

 これには、誰も声を掛けれなかった。


 僕的には『アウラ』っていい名前だと思うんだけどなぁ。

 本人も喜んでるしね。



 「ママはいないけど、シングルファザーとして頑張るよ、アウラ」


 僕は自分の決意をこめてアウラに話しかける。


 なぜかその瞬間に、女性人がアウラに優しく話しかけたり、お菓子を作ってあげると言ったり、急に優しくなった気がするけど、気のせいかな?


 よかったね、アウラ。

 優しいお姉さんがいっぱいいて。




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[気になる点] 言っておくけど、僕はロリコンでもペドフィリア(注:同じ意味です)でもないからな! 本来の意味は ロリコンは恋愛感情や性欲を伴わない愛情 ペドフィリアは恋愛感情や性欲を伴うが、愛情が…
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