表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/92

2話

 目が覚めると僕はベッドに寝ていた。起き上がりあたり見渡すとそこはゲーム内の僕の寝室で、横にはテーブルとソファー。

 その奥には僕の机がある。

 すべて僕のお手製だ。

 気を失ったときは違う部屋のソファーにいたと思っていたけど、いつの間に寝室で寝ていたんだろう。

 記憶がない。

 なんか体がだるい、とりあえずログアウトしよう。

 そう思い、メニュー画面を呼び出す。


 「ん?あれ?メニューがでない。なんで?」


 やばいどうしようと思っていたらドアがこんこんと二回ノックされた。


 「誰ですか?」


 僕は弱弱しく扉に向かって声をかけた。

 声をかけた瞬間ドアは勢いよくバンっと音を立て開かれた。僕はその音にビクッと肩をすくめると、そこに現れたのは、メイド服姿のミントだった。


 「あっあっ。ご、ご主人様!目を覚まされたのですね!良かった、良かった!」


 ミントは最初こそ目見開き僕を見ていたが、すぐに駆け寄り僕に抱きついてきた。

 内心僕はびっくりしていたが、ミントからは、女の子特融の甘い香りというかなんかいい匂いが…ってそうじゃない。

 ミントはこんな風に走ったりしない。

 こんな風にしゃべったりしない。

 そう、彼女はNPC。

 ただのAIが組まれたキャラクターに過ぎない。


 「も、申し訳ございません。ご主人様に抱きつくなんて。」


 「いや、ちょっとびっくりしただけだから。気にしてないよ。」


 彼女はそういって僕から数歩下がり頭を下げた。

 しかし、どうなってるんだろうか、まるで本物の人間みたいだ。


 「ご主人様が目覚めたことをみなさんに知らせてきます。みなさん心配されていましたから。あっ、それより先に軽いお食事でもご用意したほうがよろしいでしょうか?300年お眠りになられていたので、何かお口に入れたほうがよろしいですよね?」


 「は?」


 待て待て、とんでもないこと言ったぞ。

 みなさんってことはまぁほかにも精霊や妖精がいるから、わかるよ。

 ミントがしゃべってるんだもの。

 でもそれより、300年眠ってたって。

 人としておかしいよね。

 ゲーム時間は現実よりも早く流れるようになってたけど、それでも1/4ほどだったはずだ。単純に考えても75年も現実で寝ていたことになりますが。

 75年って今の年齢を足したら、92歳のおじいちゃんだよ、白い煙が出るような箱を開けた覚えはないぞ。


 「いかがいたしましょうか?」


 ミントは僕が怒っているように見えたのか、申し訳なそうに、聞いてきた。

 ミントは悪くないんだよ。

 ちょっと混乱してるだけで、大分混乱してるけど。

 とりあえず何か言わないと。

 僕はなるべく優しい声で彼女に喋りかける。


 「そ、そうだね。じゃあ軽い食事でもたのもうかな。」


 「かしこまりました。少々お持ち下さいませ。」


 彼女はそういって、頭下げて部屋から出ていき、扉を静かに閉めた。


 とりあえず、整理しよう。

 えっとほかにも誰かいて、僕は300年眠っていたと。

 うん、理解できんし、納得できない話だね。

 多分、みなさんと言っていたから、精霊や妖精のことだろ。

 シルキーであるミントがしゃべっていたんだから、考えられるのはそれぐらいだし。

 こうなった要因としては、確実にあの<しんか>を選択したから起こり得たんだろうな。

 そもそも<しんか>ってなんだ?


 <しんか>言葉から考えて進化かな?それとも臣下?いやいや、僕は誰にも仕えてない。

 そもそもそんなゲームでもない。

 でも参ったなメニュー画面が開けないなら、ログアウトもできないし、どうしもんかな。

 そもそもあの時は世界樹の種を手に入れてかなり浮かれてたしな。


 「ん?そういえば世界樹の種はどこ行った?確か手に持ってたはずなんだけど。」


 とりあえずこの部屋から探してみるが見当たらない。部屋を出ようかと思ったけど、さっきミントに食事をお願いしたからなぁ。


 「おとなしく、部屋で待機しときますか。種はミントが来た時にでも聞いてみよう」


 それからベッドにまた横になり、30分ぐらいたった時にドアがノックされた。

 どうぞと声をかけると、ミントが銀のトレーに食事もってきてくれた。僕はテーブルに移動して食事をすることにした。


 テーブルには、スープにロールパンとサラダが添えられていた。

 スープは湯気がたっておりコーンポタージュのようで、とてもいい匂いがした。

 パンも触ってみると暖かく焼き立てのようだった。


 あれ?おかしい。

 スープに香がすることがおかしいんだ。

 今のVR機器では、匂いまでは再現できないはずだ。

 それに食べると言ってもメニューから食事を選択して実行する事でその雰囲気を味わうだけだった。


 僕は恐る恐る、スプーンでスープを口に運ぶ。

 うん、食べられる。

 てかおいしい。

 ちゃんと味がする。

 次にパンを食べる。

 パンはほのかに甘みがあり、スープにも合う。

 そして、サラダ。

 サラダの中に入っている野菜もシャキシャキしていて、新鮮な感じするし。

 かけられているドレッシングの酸味ととてもいけてる。

 僕は5分もかからず食べ終えた。


 「ご馳走様でした。おいしかったよ。ありがとう、ミント」


 「いえ、お口にあったのならよかったです。久しぶりにご主人様にお作りしたので緊張しました」


 ミントはどこか安堵したように息を吐いた。


 食事をしたら、なんか落ち着いてきた。

 食後の後にミントが入れてくれたコーヒーもいい香りがして、味もしっかりコーヒーの苦み、酸味が程よく出ておりおいしい。

 ちょっと冷静になってきた頭でコーヒーを飲みながら考える。

 まず、メニューが表示されない。

 香があり、食事もできる。

 これは、アニメや、小説にありがちな、異世界転移とかゲームの中に入りこんだ系のものかと思う。

 でも定番の神様に会って、チートをもらうってイベントがない。

 情報がなさすぎる。


 「あのさ、僕が倒れた時にここまで運んでくれたのはミントかな?」


 「はい、あの時は突然のことであわてましが、ここまでお運びいたしました。何日もお目覚めになられないので、私たちも」


 なんか話が長くなりそうな気がしたので、無理やり割って入る。


 「ミ、ミント。聞きたい事があるんだ!僕が倒れていたとこにさ、世界樹の種が落ちてなかったかな?」


 「種ですか?ご主人様がいたところには、何もありませんでした」


 マジですか!?どこに行ったんだ、僕の世界樹の種!あれを手に入れるために、かなり労力を使ったんだよ!

 ゲームとはいえ、スゲー落ち込むわ。

 僕が落ち込んでいると、ミントが申し訳なさそうな顔をして、さっきみたいになりそうだから、先にしゃべろう!


 「とりあえず、ミントが言ってたみなさんってのに会いに行こうかと思うんだ。出来ればミントにもついてきてほしいんだけど」


 「一応皆さんには、ご主人様が目が覚めたことは伝えております。ご主人様に会いたがっておりましたが、目覚めたばかりなので今はご遠慮していただいておりましたがお呼びいたしますか?人数が多いので、広場にでも集まってもらったほうがいいと思います。」


 「いや、僕から会いに行こうと思うんだ。でもその前にポチやクロたちは家にいるのかな?」


 「はい、ポチやクロたちも会いたがっておりましたから。すぐにお呼びいたしますね。」


 ミントは3匹を連れてきてくれるみたいだ。そのまま部屋から出て行った。


 そう、3匹なのだ。

 この世界での僕のペットで犬のポチ、黒猫のクロ、白ウサギのシロ、安直な名前だが、3匹ともよく僕の後ろをついて歩いていた。

 それがこの世界だときっと手触りもよくなっているに違いない。

 きっとモフり感がグレードアップしてるに違いない。


 そう期待して待っているとドアがノックされて、扉が開いた。

 そこにいたのは、知らない人でした。


 「はい?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ