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17話

 いつもなら、朝はミントに起こされ、スカートとニーソの間にある輝かしい領域をチラ見して起きるのに。

 残念ながら今日は外の音で目が覚めた。

 テントを出ると、何人かのエルフ達が片付けを始めていた。

 僕が手伝おうとしたら、丁寧に断られた。


 ぼーっと、朝食を食べながらエルフ達の動きを見ていたが、やはり手慣れているんだろう。

 すぐに片付けられ、出発となった。


 昨日から歩きっぱなしなんだけど、不思議と疲れはない。

 これも世界樹パワーの恩恵なのだろうか?


 朝から歩き続けて、お日様が僕らの真上に到着したあたりで、森を抜ける。

 初めて森を抜けて平原を見る。

 生まれて初めて僕は地平線をみた。

 水平線は見たことあるけど、地平線なんてテレビの映像ぐらいでしか見たことがない僕には感動ものだった。

 その感動もエルフ達が少なければもっといいものになっていたと思うんだ。

 森をでたら、そこにもエルフ達がいた。

 たぶん、50人ほどだと思うけど。

 こんな集団が森の横にスタンバイしていると思うとエデンが少し心配になる。

 そして、こんな集団に襲われたら僕たちは逃げれるのかという不安も出てきた。


 「そう警戒しなくても大丈夫ですよ。彼らは、あなた方の護衛ですから」


 隊長さんは笑顔で僕達に言ったが、何となくこの人は怪しいというか、信用しずらい。

 僕の勝手な思い込みかもしれないけど、がつがつと無遠慮に、こちらに食い込んでくるような不快感がある。

 世界樹だけに草食なんです、僕。

 肉食獣な隊長さんとは合わないんだよ。


 「そ、そうですか。それで、エルドラードまでの移動はどうすのですか?」


 「エルドラードまでは、馬車に乗り移動しますので、歩くのはここまでですよ」


 僕たちは進められるがまま、用意された馬車に歩を進める。

 馬車はしっかり帆が張られており、中の様子が見れないような作りだった。

 僕はこれで、精霊たちと5人でゆっくり過ごせるかと思っていた。


 「悪いが、これには乗りたくない」


 ドーガが我儘を言い出した。

 この世界の馬車のランクなんてわからないけど、結構しっかり作られた馬車にみえるけど。

 ほら、隊長さんも困った顔してるよ。

 他の精霊達の顔も……乗りたくなそうだ。

 はて?

 何か仕掛けられているのだろうか?


 「我らはあれに乗る」


 ドーガが指した方を見ると、荷馬車だった。

 もちろん、帆なんてついてない。

 周りのエルフさん達も困り顔で隊長さんの指示を待っているみたいだ。


 「荷馬車に精霊を乗せてエルドラードにお連れしたとあっては、陛下に申し訳が立ちません。それに敵襲があった場合に狙われやすくなってしいます。窮屈な思いをさせるかと思いますが、どうかご容赦を」


 隊長さんの気持ちはわかる。

 自分たちは妖精の末裔といってるんだ。

 妖精の末裔が精霊を荷馬車で運ぶってのはエルフの沽券にかかわるのだろうね。

 ドーガさん、ここは我慢してあげればいいのでは?

 むしろ僕は帆のついた馬車に乗ってみたい。

 そっちの方が見た目立派だし、ゆっくりできそうなが気がするけどね。


 「お前たちの対面なんぞ知らん、我らはあれに乗る」


 ドーガさん、バッサリ切りました。

 自分の意見を曲げません。

 男です。

 頑固じじいです。

 人の顔を立てません。

 もはやただの我儘に聞こえるのは、僕だけでしょうか?


 ドーガが譲らないとみると、隊長さんは部下のエルフに支持をだして、荷馬車に積んである荷物を帆つきの馬車に入れ替えだした。

 人を乗せる馬車が荷馬車にクラスダウンです。


 数分して、僕たちは荷馬車に載って出発した。

 僕の初の馬車体験は帆つきの馬車があったのにも関わらず、荷馬車になりました。

 エデンに帰ったら、豪華な馬車を作って、アオに引いてもらおう。

 荷馬車に乗って、頬なでる風が気持ちいいよ。

 馬は歩いてるけどね!


 「なんで、そんなに荷馬車にこだわったの?あの馬車になんか仕掛けでもあったの?」


 「何もしかけられてはいないとは思う。我らはある程度はマナの動きを読めるが、完璧ではない。周りの状況を知るためにもこの荷馬車が最適なのだ」


 他の精霊も頷いてる。

 そこまで考えてたんだ。

 頑固じじいとか思ってごめんなさい。

 まだまだ、気を引き締めないとね。


 「まだ、エルフ達を信用できないもんね」


 「そういう事だ」


 「ふふ、ユキ様は簡単に騙されそうですねぇ」


 ドーガと話してたら、フェルミナに冷やかされた。

 そんな事はない!と、即答できない自分が悩ましいよ。

 

 それからは、周りの風景を楽しみながら、移動していたのだけど、似たような風景が続くと飽きがくるものだと思う。

 精霊達が心配するような、アクシデントもなく。

 僕たちがエルドラードについたのは、2日後。


 「見えてきましたよ」


 と、御者を務めてたエルフさん。

 目を凝らして見ても、よくわからないんだけど。

 僕には、森が前方に見えるだけ。

 まぁ森の中に国があるならイメージ通りかな。

 すると、前方にいたエルフたちが何をしたのか、急に景色が歪み、僕達一行が通れるだけのサイズの穴が開いた。

 その歪み開かれた穴からは今まで見えていた景色とは違う森が見えていた。


 中に入ってみると、木々が生い茂り…レンガ造りのお家ばかりでした。

 ツリーハウスだろ!そこはっ!

 と心の中でツッコミつつ、街を見渡す。

 にしても防壁とかが見当たらないけど、最初の結果みたいなものが突破されたらアウトなのでは?

 それともエルフでないと結界は開かないのかな。

 もし騙されてたら、逃げれない可能性が高いよねぇ。

 でも隊長さんも僕たちは先遣隊みたいなものだと、思ってるっぽいし、大丈夫だといいな。

 出来るだけ友好的な関係でいたいんだけど。


 「申し訳ありませんが、ここからは歩いての移動になります」


 と御者エルフ。

 

 ここから、歩きになるのか。

 まあ、家はレンガ造りなのに道路となる道は馬車での移動が大変そうだ。

 あちこちに木々が生え、自分たちの住む家の場所だけを確保したって感じがする。

 エルフ達は区画整理と言う言葉をしらないのかな?

 家はレンガのくせに。

 

 「なんというか、変わった造りの街ですね」


 「他国と比べるとそうかもしれませんね。しかしこの造りは敵の侵入を阻むのに適しています」


 たしかに、大規模な敵には効果があるだろうけど、少数の敵には侵入されやすそうですよ。

 しばらくここでお待ち下さい、と連れてこられたのは一件の木造の家。

 待合室的なもんかな?

 でも入る前に聞かないと、


 「えっと、妖精たちが住んでるとこをみたいんですけど?ここで待つのは何故?」


 「今、隊長が報告に行ってますが、精霊の皆様と、その、今回は私たちエルフも初めてなもので」


 はっきりと言いたまえ、御者エルフ君。

 新種の妖精を名乗る怪しい奴がいて、僕たちを先導してきた隊長さんよりも上の上司に指示を仰ぎに行ってんでしょ。

 でもって勝手にうろちょろされたら困るから見張ってると。

 僕は怪しいけど、精霊は達は手に入れたいって思ってるんだろうな。

 トレントとから進化した新種みたいなものって思ってるみたいだし。

 元人間なんだけどね。


 まず、家の中を精霊がチェック。

 その後に僕が入る。

 中は長椅子があって、そこに腰を掛ける。

 外には、ドーガとシルフが、中には、フェルミナとノームが僕の横を挟んで座る。

 しばらく待っていると隊長さんがきた。


 「お待たせして、申し訳ない。妖精たちの居住区に案内します」


 居住区?住み分けでもしてるの?

 妖精や精霊は自分たちの気にいった場所に住むからその環境を作るのは大変なんだけど、エルフ達はそれができているのかな。


 案内されたのは、簡単な柵を設置してあって、牧場みたいに見える。

 牧場には何本か樹があって、小さな泉も見られる。

 広さは結構あるみたいだけど、これって妖精を家畜扱いしてないかい。


 「中に入ってご覧ください、奥には祠もあります。実際に見て回ればここの素晴らしさも分かると思います」


 う~ん。嫌な予感しかしないんだけど。

 ちらほら妖精たちの姿もあるし、話しを聞いてみないと実際わからないし。

 柵はあるけど、簡単に飛び越えれそうだし、大丈夫かな。

 中に入ると、


 「我らがいるとゆっくり話もできないでしょうから、ごゆっくりどうぞ。あとでまた迎えにきます」


 そういって御者エルフ君が柵の扉を閉じた。

 ん?ついてこないの?

 いきなりの自由行動です。

 ありがたいような、怪しいような。

 

 取りあえず、ここに住んでる妖精たちに話しでも聞きに行きますか。



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