14話
初、エルフさん達の出会いは、いきなり武器を向けられ、今はお持ち帰りされそうになっている。
これは、どうしものかな?
僕のイメージのエルフはもっとこう、あんまり争い好きじゃないイメージ。
自分たちの森から出ずに閉鎖的なんだけど。
なんだか結構好戦的?
「えっとですね、ご厚意はありがたいんですけど、僕はこの森から出ていく気はないんです」
「生まれた森から出ていくのは辛いことでしょうが、いずれこの森も戦火に巻き込まれるかもしれないのです」
「それは、戦争が起きるという事ですか?」
「断言はできません。しかし他国もこの森には侵入してきているのは、あなた方妖精も感じているでしょう」
もしかして、エルフたちは、戦争を起こす気なんだろうか?
この森を手に入れるとか、言ってたし。
そうなると、当然エデンにも手を出してくる可能性は高い。
「それにこの森は正直なところ少し不気味でもある」
「どういうことですか?」
「気を悪くしないで、聞いてほしい。この森で生まれた妖精は知らないだろうが、我らエルフは森の民たる力がある」
隊長さんは、僕の顔色をうかがうように話す。
なんだろ?
気分が悪くなるような話しなんだろうか?
「我らエルフは精霊術をつかい、森の木々を動かし、操る術をがある。だから森である場所なら我らは無類の強さを誇る。しかしこの森では木々どころか、その辺の蔦や草でさえ我らの声に耳を傾けはしないのだ」
要するに普通は、自分たちのいう事を聞くのに、ここの森はいう事をきかない、と。
だから不気味だと。
「得体のしれない何かに汚染されている可能性が高い。一刻も早くこの森を掌握し正常に戻さなければならない」
いう事を聞かないから、いう事を聞かせるためにこの森を乗っ取る、て聞こえます。
得体のしれない汚染源はたぶん僕だと思う。
で、エルフの隊長さんは、汚染源と思わしき僕を連れ行こうとしてるのかな。
そこまで、言われたら何となくわかりますよ。
拒否すれば無理やりお縄にする気だ。
何とか時間を稼いで、逃げる算段を考えないと。
「だから、僕のような新種が生まれたってことですか?」
「可能性はある。君もエルドラードに来れば、この森より素晴らしいと実感できるよ。そこに住む妖精たちとも仲良くなれるさ」
「そういえば、精霊術って言ってましたよね、魔法とは違うんですか?」
「そういったことも含めて、エルドラードに向かう道中で教えてあげよう。あまりもたもたしてると他国の者と遭遇して安全に君たちを連れて行くのが難しくなる。奴らは野蛮だからね」
時間稼ぎ失敗。
もうタイムアウトみたいだ。
「わかりました、ちょっと考える時間がほしいんですけど、いいですか?」
「少しぐらいなら、待ってあげれるけど、ほんとに時間があまりないんだ」
おおう、立ち去る気はないみたいだ。
まぁ、そりゃそうか。
「ありがとうございます。2,3日待ってもらえますか?僕の友達に何人か精霊がいるんですけど、ここから結構離れた所にいるんです」
「場所を教えてくれたら、こちらから迎えを出そう」
そうくると思いました。
「彼らは、とても気難しくてエルフさんが行っても姿を見せないと思いますよ。僕、一人の時しかお話できませんし。でも、僕が行って話しをすれば大丈夫だと思います」
隊長さんは考えているのか手を顎にやってから、答えた。
「わかった、そういう事なら3日後にここで落ち合おう」
「はい!よろしくお願いします」
何とか危機は脱したかな?
僕はその場から妖精と魔獣達を連れて歩き出した。
「お願いがあるんだけど、エルフが何人ついてきてるか調べる事ってできる?」
僕は小声で、妖精に話しかける。
「うーん、人数までわかんないけど、ついては来てるみたい」
やっぱり尾行されてるか。
どうやって撒こうかな。
さすがにこのままエデンに真っすぐ帰るわけにはいかないし。
もうちょっと歩いて距離を稼いだらこっちも動きますか。
30分ほど歩き続けて、魔獣たちとは別れた。
僕はそのまま妖精たちと歩き続けながら、徐々に周りの木々を動かしていく。
そのまま最終的には木々の壁を作り出していく。
「もう、エルフたちはいないみたいだよー」
妖精たちに警戒してもらいつつ、僕はようやくエデンにたどり着いた。
たどり着いた時にはすでに夕日がもう沈もうとしているとこだった。
案の定、僕が抜け出していることはみんなにばれており、4大精霊の王たちに小言をもらい、ミントに小言をもらい。ペットの3人には、泣きつかれた。
なんでも、もう少し帰りが遅ければ、エデン総出で、僕の捜索隊が組まれ出発するとこだったみたいだ。
ごめんなさい。
エルフたちのせいで、僕の完璧なお散歩計画が台無しなったよ。
勝手に抜け出した僕が悪いんだけど。
気が付けばもう夜になっていたので、みんなからの報告と僕の報告は翌日に行われることになった。
翌日、朝いつも通りミントに起こしてもらい。
朝食後に報告を聞くためにみんなに集まってもらった。
メンバーは、前回の会議と同じ、
フェルミナ、フィーネ、グラン、ドーガ、ポチ、クロ、シロ、ミント、僕の9人だ。
それぞれの前にはミントが用意してくれた、紅茶が置かれている。
僕は砂糖を入れて、まず一口飲む。
うん、おいしい。
「じゃあ、まずは森を巡回してもらったと思うけど、何かあった?」
僕はまず、クロを見て聞いた。
クロはゲームの時から猫らしくあちこち自由に行動してるイメージがあるから、ちょっと心配だったんだ。
「俺は、魔族に会った。警告したけど、あいつらいきなり武器を向けてきたから戦闘になって、逃げられたんだ」
やっぱり戦闘になったのか。
怪我はないようだけど、他の子達は大丈夫だろうか?
クロは、どこか自信がないというか、不安があるような、何とも歯切れが悪い感じだ。
けが人が出てないか聞こうとしたら、グランがしゃべりだした。
「概ねその通りだけど、僕がカークから聞いた報告とはちょっと違うみたいだね」
「ん?どういうこと?」
「カークが言うには、会話らしい会話などは、行われず、クロが一人で突撃。3人の魔族の内、2人を殺害。1人は『もう来るな』と警告だけして逃がした、と報告を受けているよ」
「クロ?」
僕は、クロの顔をみると、下に俯いていた。
悪いことをして、怒られてる子供みたいにシュンとしていた。
心なしか、耳と尻尾が垂れさがってるように見えなくもない。
「ご、ごめんなさい。でもあいつらが、」
「この場で言い訳はいらんと思うぞ!」
クロの言葉を遮ったのはドーガだった。
やってしまったものはしょうがない。
でも、殺しちゃったのか。
そうか、殺しは良くないよね、やっぱり。
「報告に嘘はいらん。それに相手が武器を抜いて戦闘になったのなら、敵に止めを刺すこともある」
ドーガはクロを慰めてるのかな。
結構、優しいね。
グランも頷いている。
「そうですね、敵を倒すことは、必要な事です。ここで問題なのは魔族を2人を殺した事より、1人、生かしておいた、魔族から攫った妖精たちの事を聞き出す必要がありましたね」
「戦において、情報は必要だな」
グランが言って、ドーガがそれを肯定。
他のみんなも頷いてる。
あれ?殺した事より、情報を聞き出さなかった事に対して、の方が重要みたいな。
僕の感覚がずれてる?
むしろ、命の重さが軽くない?
ゲームの時から、命のやり取りなんかなかったと思うんだけど。
「ま、まぁ、みんな。その辺で。怪我もなかったみたいだし、クロも次からは気を付けようね」
僕がそういうと、クロは顔を上げて、
「あるじぃ、ほんとにごめんなさい」
クロはなんか泣きそうだった。
女の子に泣かれるなんて、経験したことないから、わからんよ。
どうしたらいいのかな。
「別に僕は、怒ってないし、クロを責めたりしないから。これからも頑張ろうね」
みんな頑張ってるのは知ってる。
だから、次は頑張ろうとか、言わない。
これからもみんなで、協力すればいい。
よし、エデンの今年のスローガンは、『みんなで協力、みんなで支えあう』にしよう。
横断幕でも作って張ろうかな。
なんとかクロも落ち着いたみたいだし、次の報告を聞こう。
僕は、シロを見た。
シロは頷いてたって喋りだした。
いや、別に立つ必要はないんだけど、話の腰を折るのも悪いし、そのまま続けてもらおう。
「わたくし達の隊は、人間4人と接敵しましので、全員で協力して、捕えて妖精の事を聞きましが、捕えられた妖精が最終的にどうなったか、まではわかりませんでしたが、4人とも解放し、その後をシルフ達に追ってもらっています」
「その話は、聞いてるよー。でもまだ、帰ってきてないから何とも言えないなー」
シロの報告を聞いて、フィーネが続く。
シロはその大きな胸を張って、自信満々に報告してくれる。
「そっか、よくやってくれたねシロ。ありがとう。フィーネも何かわかったら、教えてね」
「は、はい!これかもシロは旦那様のために尽くしますから!」
「僕も了解だよー」
シロは鼻息を荒くして、答えてくれたけど、美人さんの顔がちょっと台無し。
口には出しませんが。
フィーネは変わらず、元気な返事だね。
まさに風の子だね。
他の4チームの話は、ミントがまとめて教えてくれたけど、特に問題はなかったみたいだ。
「それでぇ、昨日、ユキ様はどこに行ってたんですかぁ?」
「そうですね、お館様。お聞かせください、今日この場でお話し頂けると昨日言いましたよね」
今まで黙ってた、フェルミナとポチが僕を問い詰めるように笑顔で聞いてくる。
何よりミントさんの笑顔が怖い。
僕は、昨日、起こった事を包み隠さずみんなに話した。




