1話
所謂、VRゲームが一般に普及して、昨今、剣と魔法のファンタジーゲームや、モンスターをハンティングするゲーム、銃を撃ちまくるFPSなど、戦いを主とするゲームが多いと思う。男の子なら一度は憧れると思う。
でも僕こと、神谷 幸仁は、そういったゲームが大の苦手だ。苦手というか、すごくへたくそなわけで、アクションゲームなどクリアできたことがない。
最近のゲームはなんだか難しくてとてもクリアできず、購入しても未クリアのソフトが結構ある。
嫌いなわけではない、ゲームは好きだから、プレイ動画とか見ては楽しんでる。
自分はああうまくはできない。
時間制限のミッションなんか必ずと言っていいほど失敗する。
そんな僕でもできるゲームがある、のほほんとできるゲーム。
『Free Farm Fantasy(フリー ファーム ファンタジー)』通称スリーエフという所謂、農ゲーというやつだ。
畑を耕して、作物を植えて、収穫して、売却してお金を貯めて、新しい道具を買って、耕地を広げての繰り返し。
その中には酪農があったり、鉱山があったり、林業があったり、漁業があったりといろいろできる。
そして得た、物で生産して時には自分で家を建てたり、増築できたりとまさに何でもできる。
ちなみに僕の家もいろいろできるかとやりすぎた感がある。
っていうかカオスだ。
和室には、戦国甲冑と刀(模造刀)があったり、ちょっと長めの廊下には西洋風のフルプレートアーマーに剣を持たせたり、ランスを持たせたりと、統一性のない作りになってる。
そして、どこにファンタジー要素があるといえば、精霊や妖精がいるのだ。そして条件を満たせば、そこに精霊が現れ、住み着く。
精霊が住み着けば、そこはさらにに豊穣な土地になる。
また妖精を雇って畑仕事などを手伝ってもらえる。
時間さえかければ、いいだけなので、片手間にやってるプレイヤーもいるみたいだけど、僕はこれにはまってかれこれ中学1年から高校2年の今まで5年はプレイしている。
「やったー!やっと手に入ったぞ!やっほいー!」
何をそんなに興奮しているかというと、これもファンタジー要素の一つ。世界樹の種が手に入ったのだ。大きさはクルミぐらいの大きさで、少し光っているように見える。世界樹の種を手に入れる条件は、精霊をすべての施設、土地に住み着かせ、全てのクエストをこなし、家畜、ペット、などもコンプリートして、高水準な作物や良質な鉱物などをそろえて、精霊王に託されるのだ。
世界樹はそれひとつで、僕が所有するすべのものが高ランクのもになる。
作物も、水も山もそこに生きるすべての生物が最高ランクになるのだ。
ただ、そこに至るまでにもうすでに最高ランクになっているので、これはやりこみ要素の一つなだけなので、植えてもあんまり意味がない。
でも達成感は半端ない。
だってそうだろう?無意味に使わないものまで、倉庫に収集しておいて、にんまりと眺めるのが好きなんだ。
コレクターとしては全てコンプしておきたいんだ。
「どこに植えようか迷うな、やっぱり家の前かな?でもかなり大きくなるみたいだし、やっぱり裏の庭に…。ん~土地も余ってるとこあるから、そこを世界樹ように作り変えてもいいしな」
そんなことをにまにましながら、世界樹の種をもちつつ考えていた。
そんなときに、一人のメイド服をきた女の子が近づいてきた。
彼女は僕の屋敷に憑いている妖精?のシルキー。
シルキーは本来は妖精ではなく、幽霊だといわれているが、この世界では家憑きの妖精にとなっている。
家を大きく増築していくといつの間にか現れる、比較的早い段階でてに入る妖精で、シルキーの由来通り僕の屋敷全般の家事をしくれる。
見た目は、150センチぐらいの慎重で、髪はきれいな金色、長さは胸ぐらい。
つつましいぐらいの胸のふくらみがある。
顔は美人の一言。
少し目がたれ目でどこか眠たそうな表情に幼さが残っている。
少女から女性への階段をのぼり始めたって感じ。
メイド服のスカートはミニで黒のニーソを履いており、絶対領域を確保している。
そしてさすがゲームというべきか、彼女のスカートは鉄壁である。
そんな彼女の名前は『ミント』。
ネームセンスなんか僕にないとだけ言っておっこう。
たまたま思いつきそのままつけたのだ。
ミントはNPCで決められたAIの行動しかしない。
でも笑顔が今日もカワイイと思う。
ミントはどうやらソファーで座りながら、考えていた僕にコーヒーを持ってきてくれたみたいだ。
もちろんこのコーヒー豆も自家製。
僕はコーヒーを一口飲み、雰囲気を楽しむ。
世界樹の種をどこに植えようか、思案していると、視界の右下が点滅していることに気づく。
「ん?メールかな?それともなんかイベントあったかな?」
とりあえずメニュー画面を開く。そこには、設定項目に <しんか> と書かれた項目が点滅していた。
「なんじゃこりゃ?こんな項目初めて見た。とりあえず選択してみるか」
<しんか> と書かれた項目を選択。
『 <しんか> を実行しますか? Yes/No 』
とアナウンスが流れてきた。
「なんの説明もないのかよ、せめてどうなるか教えてくれもいいじゃないか。とりあえずヘルプで確認してみよう」
ヘルプ機能で検索するが、そんな項目の説明はなかった。
「ん~。どうしよかな?もしかしたら世界樹の種と関連あるのかな?公式サイトにも見たことないし、とりあえずやってみなきゃわかんないし、ここはやってみようかな。」
メニュー画面から <しんか> を選択。またあのアナウンスが流れた。
『 <しんか> を実行しますか? Yes/No 』
今度はYesを選択。
『 <しんか> を実行します。これより世界、アルガイアスへ移転します。これにより、現存在世界の修正を行います。修正対象者 <神谷 幸仁>。データ修正完了。』
「は?修正ってなに?てかなんで俺のフルネームを知っt」
知ってるんだ!って叫ぼうとしたけど、言い終わる前に目の前の景色が歪む、気分が悪くなって、そのままソファーから転げ落ちた。
そこで僕の意識は途絶えた。
『対象者<神谷 幸仁>の <しんか> を実行。対象者に世界樹の種を移植。同調を開始……達成率0.1%。対象の心肺停止。蘇生を始めます。…蘇生完了。対象の修復、及びに修正を実行。対象は休眠期に移行。 <しんか> 実行により、<神谷 幸仁>の所有物を対象者を頂点に置き、全て進化を進めます。進化完了。ようこそ、アルガイアスへ。ご武運を。』
幸仁が意識をなくしてもその声は続き、世界から幸仁を切り取った。そして新たな世界へとつないだ。