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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

薔薇咲く教室

作者: 1-C ナターシャ・V・ノースコッド

 ある朝オレは誰もいない部屋の扉をガラガラと音を立て開けていく。

 静まり返った教室は冬の寒気を浴びてツンと刺すような肌寒さを感じる。


 一番乗り。クラス代表でもあるオレは日課である当番表に自身の名を記入、そして窓脇に設置された教室備え付けのヒーターの起動スイッチを押した。


 先日手袋を失くしたばかりの両手は霜焼けでカチカチに硬く膨れ上がっていた。


 校庭を飛び交う小鳥たちも元気がないように見える。

 薄暗い空模様、そしてこの寒さ。


 オレは空を眺めながら独り言のように呟いた。


「今年も……降りそうだな」


「雪……か?」



 ふと背後から低く澄んだ声が返ってきた。


「ラドルフ?」

「今朝も早いな、アイル」

「まぁな」


 乱雑に短く刈り上げた短髪、ややワイルドに着崩した制服を身にまとうクラスメートのラドルフ。彼はいつの間にかオレの背後まで近寄ってきていた。


「お前なぁ、気配断って近づくのやめろよな、ビックリするだろ!」

「はは、なぁにお前のその驚いた顔が見られただけでそんな小言なんてなんでもないさ」


 にゃろー、こいつめ。


「それにしても、見事に真っ赤だな」


 ラドルフが悴んだオレの両手をすっと持ち上げた。


「な……」

「寒いだろ……暖めてやるよ」


 ラドルフは何事も無いように、ただ自然に制服の上着のボタンを緩め、その隙間へオレの両手を引き入れる。

 石の様に硬い感触。良く鍛えこまれた胸筋にまだ感覚が機能しない両手がぶつかる。


 暖かい。熱い。身体中に熱が広がっていく。


 ドクンドクンと波打つ鼓動が聞こえる。


 この音はオレの? それともコイツの?



 オレは掌から伝わる熱にのぼせたかのような錯覚に陥る。

 ラドルフもまた、普段の冷静な仕種から一変、耳までほんのりピンクに染めながら必死で何でもないフリを続けていた。


「どうだ……温まったか?」


「まだ……よく……わかんない……な」


 オレは掌をその胸に強く押し当て、一歩前へ踏み出す。


 ラドルフもまた呆然とオレの方に一歩近づく。


 お互いの吐く息が直に触れ合う距離。

 

顔と顔の間の距離はおよそ3センチ。



「寒いな」

「ああ」


「もっと近づけよ」

「もっと……って、これ以上ムリだろ」


 互いの目と目が交差する。


 その距離はおよそ1センチ。


「…………」

「…………」


 互いの唇が衝突する。



 もう二人の間に距離などない。

 その心は、その想いは、その身は冬の教室の中で一つに交わり溶けていく。



◇◆◆◆◆◆



 どれくらいそうしていただろう。


 あとどのくらいこの快楽は続くのだろう。


「ラドルフ……そろそろマズイ、皆登校してくるぞ」


「アイル、安心しろ。今日の一限は移動教室だ。誰も来ないさ」



 なんだと?! そんな予定オレは聞いていないぞ!


 ラドルフは落ち着いた手付きでオレの制服を脱がせ始める。


 オレも無我夢中でラドルフの素肌を覆う邪魔な存在を剥がし続ける。


 唇と掌が触れるだけの触感、それが徐々に広がりを見せていく。


 指と指が絡む。


 脚と脚が絡む。


 胸と胸が密着する。


 オレの陶器のように白く、ガラス細工のように繊細な肉体をラドルフの野性的で鍛えこまれた肉体が貪っていく。


「お前……」

「何も言うな。今は言葉など必要か?」


 ラドルフの舌がオレの舌に絡み付いてくる。


 ダメだ。


 意識がとびそうだ……もう何も考えられない。



 ラドルフの広く大きい手がオレの下腹部に到達した。


「ほら、もうこんなに」

「ばっ、言うな!」


「ほら、こっちも……」

「ちょ……入れてくるな……キツイって」


「あぁ………」



************************検閲削除************************

<青少年に好ましくない描写となりますので脳内で補完ください>

********************************************************




「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

「…………はぁはぁ、お前、場所とか考えろよ!」


「なんだ、まだ満足できないのか」


「いやいや、もう充分だって……」


「どうだった……?」


「ん、何がだ?」



「いや、カーシェやエリュフィとかと比べて……」


 オレは狐につままれたようにハッと顔を上げる。


 お互いがお互いの情熱を存分に浴びビショビショぬるぬるだ。


 そしてオレはこんな情けない姿でそんな女々しい台詞を吐くコイツをきょとんと見つめる。


 そうだ、オレは男とか女とかそんな小さなくくりに自分が拘っていないことを今さっき悟ったばかりなのだ。


 脳天から腹の先までまでおかしさが押し寄せ思わず身悶える。


「あっはっはっは、はーっはっは、ひぃぃぃ、ははははははは、苦しいぃぃぃ」


「お、おい……アイル……」


 不安そうに眉と目元を下げながら縋る目付きのラドルフ。


 はー、本当におかしい。


 オレはしばらく笑い続けると、乱れた呼吸を整えながら呟く。




「ばぁか……お前が初めてだよ」




 冬の教室に二輪の薔薇が咲く。


 まだ蕾だったそれらはお互いの交わりをもって花開く。


 朝の陽光が眩しく反射し、二輪の花はその光を全身から浴び続ける。



 その香りも、その棘も、その美しさも、やがてその光が全て呑み込み溶けていく。


 その心は、その想いは、その身はここに確かに存在した。

当作品は


異世界の無能モノ 笠平・著

http://ncode.syosetu.com/n5928cd/


の劇中劇 となります。

続きが気になる方はナターシャ先生までどうぞ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とにかく、濡れ場の描写がエロかったです。特に、胸筋とただ書くのではなく、岩のように、という例えを入れる所が良かったと思います。 [気になる点] なんで脳内補完なんですか(真顔) [一言] …
2014/09/04 21:49 退会済み
管理
[一言]  こんばんは、ナターシャ先生。上野文と申します。  御作を読みました。  文章に照れが残っています! アイルくんの女子より美しい男子の繊細さと儚さが足りません。ラドルフくんは、口説き文句を…
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