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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

機械になった、愚かな俺。

主人公になりたいなんて願うから、こうなる

作者: 苗字名前

 物語の主人公になりたい、そんな当たり前な願望は何処から来るのだろうか。


 誰かに認められたい。

 己を見てほしい。

 目立ちたい。

 注目されたい。

 強くなりたい。


 その理由は上げてみれば、キリがない程にある。


 俺はそこら辺に居るような普通の人間だった。

 建築業を営む父と主婦業を務める母の間に生まれた子供。容姿は、普通(人によれば、ちょっとブサイクと評される顔)。勉強もまあ、悪い時があれば、良い時もある、言うなれば中の中。運動能力もサッカー部には入っているが未だにレギュラーになれず、スタメンだ。


 特に生活に不自由を感じている訳では無かった。いじめられているわけでもなかった。

ただ、羨ましい、と思う時があった。


 俺の学年には人気者が居て、そいつはその社交的な性格のお蔭か、顔が広く、誰かとすれ違えば必ず他愛のない会話を繰り広げられる奴だった。


 一目で充実した毎日を送っているんだな、と分かる顔をしていた。否、顔がどうこうという訳ではない。ただ、何となくではあるが、奴が“特別”だと言うオーラを感じ取れたのだ。


 言うなれば“主人公”。俺がよく読むライトノベルや漫画に出てきそうな存在に見えた。


 そんな奴が俺は羨ましかった。

 中二病、とでも言うのだろうか。俺はああいうアニメ系の主人公とか、キャラクターに憧れていた。


 超能力とか、魔法とかはもちろん、武術とかも大好きだ。

 サッカーを始めたのだって、某サッカー漫画に影響されたからだった。一時期は本当にあんな超人的な技が出来るかもしれないと思って、周りの目を盗んでは試行錯誤して、そんな技術テクニックを開発しようとしたものだ。


 他にも登校中、電車の中や、酷い時には歩いている間でさえも、俺は自分が主人公的存在になった妄想をしていた。


……その、なんだ。何か、異世界に転生したり、異世界を旅したり、はたまたはこの世界に突然未知なる敵が進行してきて、俺は特殊能力に目覚めたりして、奴らと戦う的な……うん、まあ、うん、そんな感じの恥ずかしい妄想を、俺は繰り広げていたわけだ。


 流石に行動にまで移すような真似は、羞恥心の方が勝ってしなかったが、それでも俺は只管に、密かに願い続けた。

 

――俺は、俺が主人公になれる“非日常”を求めていた。それが、いけなかったのだろうか。


 ある日のことだった。何時ものようにオンライン小説に、オンライン漫画を検索して、Pixivにも触覚を伸ばそうとしていたところで、一つのバナー広告を見つけた。


『なろう、主人公育成計画――プロジェクトS』


 それはイベントだった。コンセプトはアニメ主人公のようになりたい人たちへ――つまり俺のような願望を持つ人間のためのものらしい。


 会場は舞浜アンフィシアター、自宅からそう遠くは無い場所で、昼と夜の部がある。

 そのネーミングに惹かれた俺は、気が付けば初めて、こういうアニメイベント的なもののチケットを購入していた。

 イベントのホームページも、SF系を連想させるデザインを模していて、何だか俺が好みそうなタイプだな、と胸を弾ませながら、当日を待ったのを良く覚えている。


 きっと楽しいイベントになるのだろう。そうやって思いを馳せながら、碌にイベントの内容を見ず、俺は初イベントととなるそれのことを誰にも触れ回らず、知りもしない内容を勝手に妄想していた。


 けど、それは勘違いだった。それは決してアニメイベントではなかったし、また、俺の想像していた物でも無かったのだ――。






♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢ ♢


――あれ、意外と人少ない?


 イベント当日、踏み入れた会場は閑散としていて、あまり人が居るようには見えなかった。

 100人は俺が来場した時には既に居たのだが、それ以上増える様子はなかった。


 意外と少ない人数には俺は首を傾げながら、真中の席、前方部分へと移動し、腰掛けた。右側、左側の観客スペースと比べて、やはり真中の方が人で埋まっている。


 何処か異様な光景に疎外感を覚えながらも、イベントの幕が上がるのを待つ。初めてのイベントのせいか、或いは、この無駄に広く感じてしまっている会場のせいか、心臓がバクバクと大きく鼓動を刻んでいた。


 それから十分ぐらいだろうか、照明が落とされ、前方のモニターに電源が点いた。


『ご来場の皆さま。本日は当イベント“なろう、主人公育成計画――プロジェクトS”へお越しいただき、誠に有難うございます』


 女性の声がアナウンスを通して空間に響き渡り、不思議と、今から異世界へと飛び立つような感覚を味わって、俺は自分の胸が高揚するのが分かった。


『まずは当イベントの立案者、プロデューサーの土方錬次郎のご挨拶から始めさせていただきます』

『はい、どうもどうもー。皆さんこんにちはー、プロデューサーの土方錬次郎でーす』


 紹介と共にステージ上に現れた男は紺色のスーツに黒縁の眼鏡で登場し、30半ばだろうか、妙に軽薄そうな笑みを浮かべていた。その後に続く何人かのスタッフが生真面目な雰囲気を漂わせているせいか、その軽やかさは更に浮き彫んで見えた。

 

 ヘコへコと軽く会場全体へと会釈しながら、男は言葉を紡ぐ。


『さて、皆さん、此処に来たということは少なからず、主人公のように、何かの“中心”になりたい、或いは、“特別”な存在になりたい、と思ったっということでしょうか?』


 その問いに、俺は僅かに頷いた。

 と言っても、だからと言って本当になれるとは思っていない。恐らくこのイベントは疑似体験とか出来る、そういうお遊びのようなイベントなのだろう。


『……もし、本当に主人公のように、特別な存在になれると知ったら、あなたたちはどうしますか?』


 そんなもの、決まってるだろう。なるさ、その“特別”な存在に。誰もが圧倒するような、驚くような、尊敬されるような人物に、出来るものなら俺はなりたい。

 平凡な日常とか、そんなものはいらない。俺は、“非日常”が欲しい。


『ここで、僕は君たちにそのチャンスを与えたいと思います』


 男、土方錬次郎が大袈裟にその腕を掲げると、背後のモニターに何やら設計図が表示された。


(なんだ……?)


 表示されたそれはロボットのものの様で、見目は人間とあまり変わらない。人形のようにも目に映るそれはリアルで、何処か非現実的にも思えた。


 ”ファイナル”と言う単語が付く某ファンタジーゲームを連想させる容姿だ。


『ゲームをしましょう』


――ゲーム?


 何か新しいゲームソフトの宣伝だろうか?

 予想だにしなかった言葉に俺は僅かに瞠目した。同時に呆れの感情も覚える。


 『なろう、主人公育成計画』なんて言うものだから、もっと別の、何か違う物を想像していたわけだが、まさか唯のゲームの宣伝だったとは……。

 『育成計画』、とか言うネーミングからして、アバターを使う、そこらのオンラインゲームと大して変わらないのだろう。

 そこはかとなく、一応期待していた自分は、不覚にも落胆してしまった。


(……とりあえず、話だけでも聞くかな)


 まだ、ゲームが自分が想像している通りのものだと決まっている訳ではない。様子を見よう。


 壇上の男を見上げれば、奴は嬉々として口を捲し立てていた。


『君たちは、何が主人公を“主人公”にさせているのだと思いますか?

 人に好かれる要素? 諦めないと言う信念? カリスマ性? 特殊能力?』


 カツンカツン、男がステージを歩くたび、無機質な靴音が会場に響き渡る。


『答えは、物語ストーリーだ』


 くるり。背をこちらへと向けていた男はまたもや、大袈裟に足を踏み込みながら口を開いた。


『誰もが驚くストーリー。その中心に立っているからこそ、その“人物”は初めて“主人公”になれるんですよ』


 何が楽しいのか、高揚したように頬を赤らめると男は、やっと本題に映る気になったのか、例のモニターを指さした。


『だから、僕は差し上げよう。君たちに“体”を、誰もが振り向かざるを得ない絶対的な“物語”を、ゲームと言う名のストーリーを』


 ニタリ。三日月に唇を歪めるその顔を、一瞬気味悪く思ってしまった俺は悪くないだろう。

 精神病者を思わせる笑みを目にして、俺は今更ながら不安を覚えた。


(大丈夫か、あの人?)


 演技には見えないそれを怪しみながら、変な演出だなと思いながら感慨無くステージを見つめる。他にも役者を雇っているのだろうか。


 壇上の男がパチンと指を鳴らすと、今度はステージの床から一体の“人間”が現れた。

 プシュー、なんて音を立てながら浮上してくるそれに、俺は不覚にも興奮した。何か面白そうなことになると、直感したからだ。

 目の前の壇上に立つそれは、正にモニターに映っていた”ロボット”だった。


『さて、此処に試作品の“人形”が一つある』


 ポン、と見目麗しい、どう見ても人間にしか見えないそれの肩を、男は叩いた。


『この人形の頭に、君たちの“脳”を入れます』


 どくり。先程と反して、心臓が一瞬、怯えたように大きく跳ね上がる。


 唯の演出だと分かっているのに、俺は不思議と嫌な予感を覚えて、会場の中を見渡した。

 恥ずかしながら、どこぞのグロテスクで、サイケデリックなアニメとか、そういう小説を連想してしまったのだ。そんなこと、現実にあるはずがないのに。


 大丈夫、これは公式なイベントだ。だからこそ、舞浜アンフィシアターなどと立派な会場で行われているんだ。


(そうだ、幾ら人数が少ないからって……)


 その瞬間、ふと違和感を感じて、俺の思考はそこで留まった。


(人が少ない……? なんで?)


 そうだ、何故、気付かなかったのだろう。


 舞浜アンフィシアターなんて、こんな大きな会場でやるんだから、イベントは大手会社が開くような大規模なもののはずだ。例え、それが新しいゲームの宣伝のためのものだったとしても、それは多くの人に知れ渡っているはずだし、100人なんてそんな小規模な人数より、もっと大多数の観客が居たって可笑しくない。


 それなのに、何故、この会場はこんなに空っぽなんだ……?

 

 思い返せば思い返すほど、違和感の正体は浮き彫りになり、俺は体を震わせた。


 このイベントのことを知っている人間は、どれぐらい居るんだ? 


 このイベントに来ること自体、家族や友人には伏せていたので、その答えは分からない。たらり、冷汗が頬を伝った。


 他の客席に座る観客はこの不自然さに気付いていないのか、黙々と男の演説に耳を傾けていた。何人かは、あの“人形”に大きな興味を抱いているように見える。


『大丈夫。例え、脳が取り出されたからと言って、君たちは死にません。そうですね、まあファンタジー風に言うなれば、“魂”を取り出して別の“肉体”に入れると言う感じですかね』


 それはまるで夢物語だ。最近のオンライン小説で良く見る“転生”のような話。前世の記憶を持ちながら全くの別人になり替わる話。


『とりあえず、今は君たちの“脳”をコールドスリープさせるとして……舞台は100年後。世界も文明も発達した未来、になっているかは分かりませんが、とりあえずそんな感じの場所でどうでしょう?』


――いや、どうでしょうって、何がだよ


 ニコニコとやたらと非現実めいた話を繰り広げる男は本当に楽しそうで、俺の不安は益々膨れ上がった。


『そこで、君たちには“殺し合ってもらいます”』


 パチン。再度、鳴らされた指音に反応してモニターが切り替わる。


『この“肉体”は、とても頑丈で強く、また“個体”によっては違う“機能”を取り付けられておりますし、“武器”もあります。戦車なんか、もうポン、と叩けば破壊出来ちゃうんですよー』


 朗らかに笑う男に、口がひきつった。これは、冗談だよな? 本気で言ってるんじゃないよな?


『まあ、あれです。とりあえず何か君たちが良く読むVRMMOものの小説だと思ってください。で、君たちはその主人公! あ、未来●記のようなものだと、考えても良いですよ!

 正に、SA●的なデスゲームを現実世界でやるんですよ! ね、想像してみたら楽しくなってきたでしょう?』


――否、現実でそんなことしたくねーから。ってか、無理だから。ありえないから。そんなデスゲームじゃなくて、俺がやりたいのはテンプレ的なラノベのハーレム主人公とか、そんな感じだから


 などと冷静に頭ではツッコミを繰り出してはいるが、内心では、男の発言に恐れおののいていた。


『衣食住の方はご心配なく! ちゃんと戸籍も何も新しく作れるようにしておきますからね! 

 もう一度学校生活を送りたい人は高校生! 或いは小学生でも何でも好きな年齢の”個体”を差し上げます! ただし、それを決めたら最後、一生その姿で過ごすことにお忘れなきを!』


 ありえないなのに、ありえるはずがないのに、それでも男の口調は何処か本気のように聞こえて、全身に鳥肌が立った。気付かれないように後ろの出入り口をチェックして、恐る恐る、立ち上がる。


『まだ正確な予定は決まっておりませんが、君たちが目覚めた時に、ゲームのルールを改めてさせていただきたいと思います。

 とりあえず、今確定していることは、殺し合うと言うルール。生き残れるよう、頑張ってくださいね。脳を破壊されれば死にますから。あと、他のプレーヤーを殺せば殺すほど、”ポイント”が加算されて、特典とかもらえます。

 参加者は君たちを入れて、1000人。人数は少ないですが、実は海外にも同じようなことが行われていたりして……』


 聞こえない聞こえない。そんな現実逃避を繰り返しながら必死に足を動かした。大丈夫、これは唯のイベントだ。


 けど、それでも怖いから、ちょっと外へと出るだけ。大丈夫だ、きっと、大丈夫だ。

身の内に広がる恐れを押しとどめながら、やっと扉に辿りついて、俺は安堵した。

 取っ手に手を伸ばして、静かにそれを押し開ける。途端、


『あと、これ、もう逃げられませんから』


 首に何かを“刺された”感覚がして、一瞬で俺の恐怖は爆発した。思考は停止し、驚愕で頭が真っ白になり、けど直ぐに首元に痛みが襲ってきて、俺は叫ぼうとした。


 だけど、それは首から広がる麻痺感で阻まれて、逆に俺の瞼は重くなっていった。



――訳も分からず、視界が暗転した。








次目が覚めた時は未来、しかも何かロボットあり、超能力者ありな時代になっていて、おまけにギャングとか組織的な派閥があったりして、何これアニメイベントですか?的な事件が起きたりしてる。

主人公はそれをテレビ越しに見ながら、関んせず、とりあえず紆余曲折しながら今の生活に馴染もうとする。

泣きながらも何とかやっと今の生活に慣れると、アパートの隣の住人がこれまたライトノベルに出てきそうなハーレム男で、それを日々妬み、羨みながらも過ごす。

でもなんか、隣のハーレムの一人の美少女ちゃんに巻き込まれちゃって、しかも同じ”プレーヤー”に遭遇しちゃって、殺されそうになりながらも逃げ回るお話。

とりあえず、イレギュラーな主人公たちプレーヤーが、そんなSFアニメ的な世界になっている未来で、デスゲームをしながら、周囲の中二病(じゃないけど、そんな個性的な人たち)に何か驚かれながら、マジで注目され始めちゃう感じの展開を書きたい。

でもって、アンドロイド的な者になっちゃった主人公たちの苦悩とか、何これ!?的な機能とか、戦闘とか、書きたい。


……というわけで、息抜きに時々、つづきを書くかもしれません。

女の子バージョンも書いてみたいな……。


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