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目覚め
ここは、どこだろうか。
そんな疑問を持って、私は目覚めた。
天井はむき出しのコンクリートなので、少なくとも病院ではないことがわかる。
どうやら私はソファに寝ていたようだ。
上半身を起こし、辺りを見渡す。
生活感の少ない、キッチンと洗濯機だけがある部屋。
とても殺風景だ。
がちゃり、と扉の開く音がする。
扉のある方を見ると、眼鏡をかけた髪の長い女がいた。
女はくわえていた煙草をもみ消す。
「起きたのか」
誰だと聞こうとして、言葉を発すると、猛烈な頭痛が私を襲う。
頭を抱えると、女はふうん、と言った。
「予想以上に頭痛が酷そうだな。
よし、紙とペンをやろう。筆談だ」
女はどこからかメモ帳とシャープペンシルを出して、私に渡す。
『誰だ』
「私は浜井 鳴子だ。浜井か鳴子でいい」
『ここは?』
「私の家兼研究室」
研究室と彼女は言うが、それらしいものは見当たらない。
『何者だ』
彼女は少し微笑んでいる。
ぞっとするほど美しい笑みだ。
「わかりやすく言うと超能力者。
正しくは魔導師だ」
さっぱりわからないが、まぁいい。
『では、私は?』
そう、私は記憶が無かった。




