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闇の中の二人

 暗闇の支配する細い路地を、二人の男が高らかに靴音を響かせて歩いていた。黒い服を着込み、気配を断ち切っているので、端から見れば靴音だけが近づいてくるだけのようにも感じられる。夜の帳のその奥で、かすかにサイレンが鳴り響いているのが聞こえる。


「結局、ヤツの命はとらなかったんだな」


 マクレガーがぼそりとつぶやいた。ジークもぼんやりと返事をする。


「まぁな。正しいと信じることのために自分の手を汚すのはためらわへんけど、さすがにあんなくだらん男の血で、この手を汚したくはないわな」


「ふぅん。ま、お前らしいと言えばらしいがな。それにしても、どうしてあのタイミングで麻酔弾なんだ? 実弾しか装填してなかったじゃないのか?」


 マクレガーの疑問に、ジークがふっと頬をゆるめて答えた。


「あぁ、それが俺の銃の特性や。シリンダーに細工がしてあってな、六発の弾丸以外にもう一発装填できるようになってるんや。普段はそれを撃ってしまわんようにシリンダーが回転するんやけど、特殊な操作をする事で撃てるんや。ま、『イタチの最後っ屁』ってとこやな。ダンにかなり無理言って装備してもろたんやわ。いかなる状況下でも、相手を制せられるようにな」


「そうか……」


 マクレガーはポケットからタバコを取り出し、火をつけた。深く煙を吸い込んだ後、ふうっとはきだす。白い煙が、月の見えない夜空に消えていった。


「そう言えば、例の嬢ちゃんはどうした? レイと一緒なのか?」


「そうや。このまま泥棒と行動しててもろくなコトあらへんし、警察に通報する前に先に帰したんやわ。依頼の品は渡したから大丈夫や」


 マクレガーは返事の代わりに、再びタバコの煙をはきだした。先端にともる赤い火が、暗闇の中に浮かび上がる。


「それはそうと、マック、お前ウチにーへんか?」


 ふと、ジークが声をかけた。マクレガーが、とぼけたような声で返事をする。


「いいのか?」


「ああ。一緒に仕事するのも久しぶりやったし、何よりも、直接会うこと自体一年ぶりやし。つもる話も色々あるやろ」


「じゃあ、お言葉に甘えるとしようかな」


「おうよ」


 ジークがにやりと笑いながら返事をする。マクレガーはふっと息をもらした。タバコの先端から立ち上る紫煙が、ゆらりとよどんで消える。


 音もなく、月の光も届かない街角。黒づくめの二人組は、闇の中にとけ込んでいった。

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