表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

遠吠え

作者: GUN

初老の男は知り合いを前にして いとも簡単に語った

長年連れ添った妻の突然の訃報を 口にしていた

少しの戸惑いがシワを刻んだ額にうっすらと滲んでいた

それ以外に見受けられたことと云えば 幾分よれたワイシャツ


家に帰るのが億劫だよと コンビニの袋をぶら提げて

西の空を染めていく紅の夕陽が 男を慰めてくれた

お喋りの苦手だったはずが つい立ち話に興じてしまった

しゃんと胸を張って歩くクセは 今日くらいさぼった方がいい


何のために生きて来た どうしたいと願って来たのだろう

意味の無い生き方はしてないよと 少し自慢したかったのに 


”やけに広いんだなこの家は・・”と 天井を見上げるのさ

手のつけられない台所の洗い物 食べかけの食パン

開けっ放しのカーテンから漏れている 部屋の灯りは

大丈夫さ夫婦団欒の気配を 今夜も路行く人は感じてる


何のために生きて来た どうしたいと願って来たのだろう

使い残した愛情は すれ違う誰かに分け与えればいいから


何のために生きて来た どうしたいと願って来たのだろう

部屋の灯りを消したその瞬間に 自分を慰めてもいいのだ


ありったけの全ての想い出に すがり付いてもいいのだ


長い人生の道程で、予期せぬ事態はつきものです。

誰にでも約束されている喪失への道を、一人の男性に託しました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ