ヤンキーな君とパンピーな僕
僕は普通だ。
見た目だって普通だし、性格だって普通だ。
特別なものなんてなにもない。
そんな僕が、普通じゃない君に恋をした。
君と過ごした時間で普通じゃないことを知った。
夜遊びを知った。
時には力を抜くことの大切さを知った。
楽しい時間を知った。
恋を知った。
君と過ごす時間は僕にとって宝物だ。
ただ、君と過ごした時間で嫉妬を知った。
怒りを知った。
後悔を知った。
普通じゃ君に届かないことを知った。
これは、僕の一世一代の決意。
今日は君が卒業する日。
君に思いを伝えるために僕は普通を卒業する。
***
私は普通じゃない。
いわゆる不良生徒というやつだ。
髪は銀色に染めているし、ピアスだってつけている。
学校の教師には何度も注意されたが、私が好きでやっていることだからやめないし、後悔はない。
私には、学校という空間はどうにも性に合わないようだ。
そんな私は、普通な彼に恋をした。
すぐに諦めてしまう私が学校に通い続けれた理由は、彼がいたからだ。
彼と過ごした時間で普通を知った。
放課後の勉強を知った。
真面目に取り組むことの大切さを知った。
楽しい時間を知った。
恋を知った。
彼と過ごす時間は私にとって宝物だ。
ただ、彼と過ごした時間で嫉妬を知った。
怒りを知った。
後悔を知った。
普通じゃない私じゃ彼に届かないことを知った。
これは、私の一世一代の決意。
今日は私が卒業する日。
彼に思いを伝えるために私は普通じゃない私を卒業する。
***
今頃卒業式を行なっている頃だろうか。
僕は「放課後いつもの場所に来てください。」というメッセージを送り、現在は自宅にいた。
髪を金髪に染めて、耳にピアスをつけている。
今の見た目は普通じゃない。
これまでの自分ならこんなことはしない。
ただ、君の隣に並びたい。
君の隣に立っても恥ずかしくない自分でいたい。
君と一緒に笑っていたい。
ピアスを開ける際にチクっとしたが、君のことを考えていたからか、それほど痛みは感じなかった。
髪を染めるのに時間がかかってしまったので、まだ自宅にいる。
今すぐ君に会いたかったが途中から入って君の卒業式を邪魔したくない。
今日の放課後、君に思いを伝える。
最初は、怖い人だと思った。
感情を表に出すことなく、無表情。
僕とは、住んでいる世界が違うような遠い存在。
ただ、君と関わるうちに自分の意思を持った感情豊かな人だと知った。
そして、誰よりも優しい人だと知った。
君は、少年ジャンプの主人公のような強さと優しさを持っていた。
僕がもう1年早く生まれていたら君ともっと一緒に過ごせたのに。
今すぐ君に会いたい。
今日は、僕が君と学校の中で話ができる最後の日。
思い出の詰まった学校。
今日の放課後、君に想いを伝える。
***
彼がいない。
学校に来て、1番に彼に会いたかったのに彼がいない。
2年生の教室でいつも本を読んで座っている彼の姿が今日はどこにも見当たらない。
なんで、こういう時に限って会えないのだろうか。
いつもなら、当たり前にいる人が今日はいない。
始まりのチャイムが鳴るギリギリまで待っていたが彼は現れなかった。
仕方なく、自分の教室に戻るが、クラスメイトからの視線がすごい。
今日の私は普通だ。
これまで普通じゃなかったからこそ、普通な私がみんなの視線を引きつける。
そんな視線など気にせずに自分の席に着きスマホを確認する。
すると「放課後いつもの場所に来てください。」とメッセージが届いていた。
「OK」と返事を返し窓の外を眺める。
最初は、なんの特徴もないやつだと思った。
私の人生における一般村人B。
ただ、彼と関わるうちに人のために頑張れるやつだと知った。
そして、誰よりも優しいやつだと知った。
彼は一般村人Bから少年ジャンプの主人公になれるようなやつだった。
彼との日々は発見の連続だ。
私が1年遅く生まれていたら彼ともっと同じ時間を過ごすことができたのに。
今すぐ彼に会いたい。
今日は、私が彼と学校の中で話ができる最後の日。
思い出の詰まった学校。
今日の放課後、彼に想いを伝える。
***
家を出て学校へと向かう。
君の元へと。
体の震えが止まらない。
君の優しさは、僕だけのものじゃないから。
君は誰にだって優しいから。
僕の気持ちが全く届かないかもしれない。
君と会えるのが今日で最後になるかもしれない。
そんなことを考えると体の震えが止まらない。
普通でいることは居心地が良いが、僕を成長させてはくれない。
君の隣に並ぶために普通を卒業したはずなのに。
見た目は変わっても心の方は全く変わってくれない。
臆病で何かを恐れていて普通を目指そうとしてしまう。
このまま沈んでしまいそうだ。
ただ、このまま君と離れるのは嫌だ‼
君に伝えたい言葉がある。
未開封の勇気を使う時が来た。
これまで君との楽しい時間に甘えて、伝えられなかった言葉、想いがたくさんあるから
だから、たくさんの思いを胸に、君の元へ。
***
卒業式はもう終わるだろうか。
このあと私は、いつもの場所に向かう。
彼の元へ。
私たちが出会った場所。
彼との思い出が詰まった大切な場所。
体の震えが止まらない。
彼の優しさは、私だけのものじゃないから。
彼は誰にだって優しいから。
私はヤンチャだから彼に受け入れてもらえないかもしれない。
彼と会えるのが今日で最後になるかもしれない。
そんなことを考えると体の震えが止まらない。
彼の隣に立てるように普通の姿になった。
見た目は変わってもこれまでの行いが、普通になんかさせてくれない。
遅刻をした。
ズル休みをした。
校則違反をした。
彼の隣に立つためにもっと早く普通でいた方が良かったかもしれない。
周りのルールが息苦しく感じた。
「ちょっとくらいならいいだろ」と考えてしまった。
自分の弱さを隠して強く見せようとした。
普通じゃない私を自分の意思で選択した。
こんな私じゃ彼に相応しくない。
彼は私なんかとは釣り合わないくらいに優しくて、誠実で、真面目な人だから。
このまま沈んでしまいそうだ。
ただ、このまま彼と離れるのは嫌だ‼
彼に伝えたい言葉がある。
彼と会ってから今まで溜め込んでいた思いがある。
彼との時間が楽しくて、輝いていて、伝えられなかった言葉、想いがたくさんあるから
だから、たくさんの想いを胸に彼の元へ。
***
君はいつもの場所にいた。
彼はいつもの場所に来た。
君はいつもよりずっと普通だ。
君の姿を見て、驚きと嬉しさと不安と感情がぐちゃぐちゃになる。
なにから伝えればいいか。
彼はいつもよりずっと普通じゃない。
彼の姿を見て、驚きと嬉しさと恥ずかしさと感情がぐちゃぐちゃになる。
なにから伝えればいいか。
いや、君に伝える言葉は決まっている‼
ずっと伝えたかった言葉‼
伝えなきゃいけない言葉‼
いや、彼に伝える言葉は決まっている‼
ずっと溜め込んでた想い‼
伝えなきゃならない想い‼
『好きです』
「あなたのことが大好きです」
「うちも大好き」
僕たちは、嬉しくて泣いていた。
君は「その格好なんやねん」と泣きながら笑っている。
そんな姿を見て僕は君を強く抱きしめる。
「急に抱きしめんなや」
君は慌てて距離を取る。
頬が少し赤い。
「ここに来るまで、すごい不安で」
そんな僕の姿を前に今度は君の方から抱きしめてくる。
君の暖かさにまたしても涙が溢れる。
僕は、暖かさを胸に決意を伝える。
「これからも一緒にいよう」
僕の言葉聞いて君はまたしても距離を取り
満面の笑みを浮かべる。
「もちろん」
君と目が合い心が通じあっている気がした。
僕は君とキスをした。
この先に幸せなことばかりじゃないかもしれない。
ただ、君と僕ならどこまでも大丈夫な気がした。




