どうしましょう殿下ーうちの王女殿下の場合ー
こちら、短編のどうしましょう殿下とお話がリンクしていますが、読んでいなくても大丈夫です。
うちの王女殿下はアクが強い。
可愛い人でもあるが、まず、負けず嫌いっぷりが凄い。子供の頃は弟が未来の王で、姉の自分が何故女王になれないのだとギャン泣きした。それはもう泣いた。
何故そんなに女王になりたいのかと理由を聞いたら
「1番じゃなきゃ嫌!!!」
理由はそれしかないらしい。
負けず嫌いの王女殿下は勉学も礼儀作法も全て完璧に修めた。剣術も修めたかったようだが駄々をこねてもこねても許されず。ようやく諦めた。
本当に諌めるのが大変だった。本当に。
王女殿下の厄介さはここで駄々をこねても自分の望みは叶わないと学習した事だ。
涙を流して上目遣いでお強請りする事を5歳で覚えた。負けず嫌いだが弱い事を装って騙すのは平気らしい。なお、最初から自力で涙が出せた。強い。
そして、1番の困りごとは剣術は諦めても女王の座は諦めなかった事だ。
「弟のお母様である、今の王妃殿下よりわたくしのお母様の方が家格が上なのよ?わたくしの方が先に産まれたの。なんで諦めないといけないのかしら?」
もう完全に悪役令嬢である。巷の小説で流行っている平民を虐める可愛い悪役令嬢ではなく、本物の悪役令嬢だ。
「わたくしが女王になったら貴方を王配にしてあげる。だからちゃんと仕える事ね」
ツンッと傲岸に顔を上げ、そんな事を言ってくる。私の方が背が高いのであまり意味のない仕草だなぁ。と思うのだが指摘したら台を持ってこさせて見下ろす。きっとうちの王女殿下はそうする。こだわりが強いところも可愛いなと思う。
それはそれとして、ふむ。
「女王になれなかったら結婚して頂けないのですか?」
「絶対になるから安心なさい」
「絶対に結婚して頂けると。熱烈な愛の告白ですね」
「あっ、愛!?はぁああ!?」
カーーーッと顔を赤くしうちの王女殿下が叫ぶ
おお、人間がこんなに赤くなるのを初めて見た。文字通り赤くなるんだ。凄いなぁ。可愛い。
「ッ!王配は!わたくしの言う事を全て聞く都合のいい人間がいいに決まってるでしょう!それだけに決まってるでしょ!調子に乗らないで!」
興奮のあまりゼイゼイと肩で息をしながら、王女殿下は息を整える。
それを待ってから私は呟く。
「つまり」
「何よ」
「私は理想の男性なのですね」
「はっ倒すわよ」
解せない。
さて、そんな可愛くてアクが強いうちの王女殿下、頭が良くて凄く負けず嫌いで厄介であり、そして執念深く、自分が女王になる為の種まきをあちこちにした。
こんな事があった
「あらクリスったら、またイジメかしら」
王女殿下がしかめっ面を扇で隠し、王城の中庭を見つめる。
そこでは王女殿下の弟君、クリス殿下が同い年くらいの子供を木剣で叩きのめしていた。
一応子供にも木剣を持たせていたが、最早戦いにもなっていない。ただ叩かれる的になっている。
「ははッどうしたどうした!!生意気な口をきいたクセに大した事ないな!!」
「…ッ!」
叩かれている子供は痛いだろうに、口を引き結んで声を堪えている。あの年齢で中々大した根性である。
「クリス殿下!もうおやめ下さい!全ては私に責任がございます!」
その横で王子殿下の婚約者、リリアーナ様が泣きそうなのを堪えた表情で必死に止めていた。
うちの王女殿下は溜息ひとつつくと
パン!っと扇をならし
クリス殿下を見下しながら口を開く
「クリス、貴方これからお茶の予定ではなくって?そんな汗臭い格好で出るつもりなの?」
クリス殿下はあからさまに嫌な奴に声をかけられた。という顔をした。
「姉上、この程度で汗はかきません」
「服に皺もついてしまっているじゃない。見苦しいわ」
うん。うちの王女殿下も顔に出ているな。教育係に言っておかないと。
なんて事を考えていたら、扇で突然叩かれた。解せぬ。
しかし、流石の王女殿下も人を痛めつける事は気に食わない様で安心した。…。いや?前にクリス殿下が私の事を「たねなし」などと罵ったら扇で思いっきり叩いていたな。その後自分から大泣きして叱られる事を回避した王女殿下は「下品過ぎる。あと何回か叩きたかったわ…」と、おっしゃっていたから剣術を修めていたらクリス殿下に同じ事をイイ笑顔でやりかねない。いや、絶対やる。剣術を修める事が許されなくて本当に良かった!
「ふん!興が冷めたな。リリアーナ!行くぞ!」
「ッ!クリス殿下、お待ち下さい」
倒れた子供が気になるのかリリアーナ様の動きは遅い。
だが、無理やり腕を掴まれ、クリス殿下に連れて行かれた。ちらちらと振り返っていたリリアーナ様に、倒れていた子供はなんとか口だけで大丈夫です。と言うのが見えた。
「ふうん」
それを目ざとく見つけた王女殿下は扇の裏で手ごろな生贄を見つけた魔女みたいな笑みを浮かべる。
「あの子、中々根性あったわよね」
「ありましたね」
扇を上品に下げた王女殿下は痛みを堪えて起き上がろうとしている子供へ優雅に近づく。
その顔は気遣わしげな顔だ。
純粋な子供を騙そうとする魔女にしか見えない。
「大丈夫?わたくしの弟が厳しすぎた様ね。ひょっとして、わたくしの弟がリリアーナ様に何か失礼な事を言ったのかしら?」
その一言に子供の手が強く握られる。黒髪の間から見える眉間には皺がより、唇は悔しげに噛み締められていた。
「…いいえ。私が無礼を働いたので指導して頂いただけです。この様な姿でお目を汚し、大変申し訳ございません」
「無理はしないで。稽古をつけられていたんですもの。もう少し安静にしていても無礼にあたらなくってよ。…少し、お話してくださらないかしら?貴方、お名前は?」
痛みに耐えながらも礼儀正しい子供に好感を持ったのか、元々利用するつもりなのか優しい声を王女殿下はかけた。
「アントニー・ワンジスと申します。バイオレット王女殿下。リリアーナ様とは乳兄弟でございます。」
「あら、まぁ。ワンジス男爵の…リリアーナ様とは仲が良いのね」
「おかげさまで、良くして頂いております。あの、この様な格好でおりますのも失礼ですので、着替えて参りたいと思いますが…」
既に立ち上がって息も整えたアントニーが礼儀正しく王女殿下に願い出た。
「そうね…」
言葉を探すように視線を一度上に向けてから王女殿下はにっこりと微笑んで言った
「貴方、力が欲しくない?」
王女殿下、それ完全に魔女の物言いです。
「あ、あの…」
ほらアントニー君、完全に警戒しちゃってるじゃないですか。
戸惑っているアントニー君にかまわずにこにこと王女殿下は話す
「ちょっと遠い親戚に武名で名を馳せた辺境伯がいるのだけれど、子供がいないので養子を探しているの。辛い訓練にも耐えて強くなりたいという志が強い子供がね。近い身内の子供はみんな根性が無くてナヨナヨしていて駄目だって言うのよ。貴方、結構見込みがあると思うんだけど」
「…私などには過分な話かと…」
「あら?現状を変える手段を他にお持ち?ご不満なんでしょう?今の自分に」
「…!!」
王女殿下、王女殿下、既に優しげ令嬢の仮面がガッタガタです。もう表情は魔女ですね。素が出過ぎですよ。
「行ったからといって認められる訳ではないわ。でも今ならチャンスがある。やる気があるなら紹介をして差し上げる」
うつむいているアントニー君の顔を不敵な笑みで覗き込みながら言う言葉は悪魔の勧誘にしか見えない。
「あの、私に何か求めているのでしょうか…」
アントニー君の言葉にやぁねぇと王女殿下は微笑む
「頑張っている子を応援したいだけよ。貴方、今のままだとリリアーナ様のお役に立てないでしょう」
「…!」
王女殿下に挑発されたアントニー君は結局話を受ける事になってしまった。
こうして王女殿下は小さな種を蒔いた。政治的な後ろ盾の強いリリアーナ様とクリス様の婚約解消に繋がればいいなぁという小さな小さな期待の種だ。
こんな事もあった
クリス様が学園に入学する歳になり、入学式が行われた日だ。最終学年の王女殿下には、ちょっとした出会いがあった。
入学式も終わり、特に授業もない為王女殿下は門へ向かっていた。
そこへ、1枚の紙が風にあおられ、王女殿下の方へ流れてきた。
「あーーーーっ!すいません、取ってくださいませんか!!!」
その紙を追いかけるようにピンク色の髪の、1人の少女が走ってくる。
王女殿下の周りの人間はギョッとした。護衛に囲まれた、あからさまに高貴な御方にかける言葉ではない。
王女殿下は紙を手に取ってしまっていた。外面がいいのである。うちの王女殿下。
「有難う御座います!いきなり飛んじゃうんでびっくりしました〜」
にこにこと自己紹介もなく少女は笑う
周りの護衛は礼儀について口を出そうか悩んでいる。王城なら迷わず叱責しているが、ここは学園である。大人は基本的に口出しを禁止されている。
私は王女殿下がジッと少女を観察しているので黙っていた。
「貴方、お名前は?とても可愛らしい子ね」
にっこりと微笑み、綺麗な所作で紙を渡しながら王女殿下が声をかける。
「あっ、ごめんなさい!私、マリアっていいます!いや〜可愛いだなんて有難う御座います〜」
「まぁ。とっても素直なのね」
家名はどうした。護衛一同思っていたが、王女殿下は扇を広げて微笑む。
「貴方、今年入学の1年生よね。どこのクラスかしら?」
王女殿下はマリア某さんから何が好きなのか、仲のいい人はいるか、出身地など色々聞き出した。マリア某さんはお喋り好きの様で簡単に喋ってしまった。
マリア某さん…もう少し警戒心を学園で身につけられる事を祈ってるね。
「さよーなら先輩!有難う御座いました!」
手をブンブン振っているマリア某さんに王女殿下は上品に振り返しながら護衛に命令する。
「わたくし、学園の先生方に急用を思い出したわ。こちらで待機していて」
もう帰城されるご予定だったので、学園の敷地内に護衛がいたが、学園の建物内までは原則入れない為、留守番だ。
私と共に歩き出した王女殿下が、扇で口元を隠しながら小声で話しかける
「マリアさん、逸材だわ」
何のことかと王女殿下に目を向けると扇を広げた下で王女殿下が目を輝かせ、暗い笑みを浮かべていた
「わたくしの弟の好みに凄いピッタリ。マリアさんは守ってあげたくなるような可愛いさで、お馬鹿で裏表がなく、素直に言う事を聞いてくれそうよね。そういう女性が好みらしいのよ」
姉に女性の好みを把握されているクリス様、可哀想だなぁ…
「対して婚約者のリリアーナ様のように華やかで勤勉で意思が強くて諌める事が出来る女性が苦手なのよね。王妃候補としてはとても素晴らしい事なのに。なんでかしら?」
私は王女殿下を見てしまった。
「なに?」
「いえ…」
つまり美人で気が強くて成績よくてあれこれ注意してくる女性にトラウマがあるんですよ。鏡用意しましょうか?なんて事は言わず、私は口を引き結んだ。沈黙は良いことである。
リリアーナ様には申し訳ない。貴女は最初の最初からうちの王女殿下のとばっちりを受けてたんですね…涙が出そう…
「?学園の先生方にはマリアさんとクリスがグループ分けの時などに一緒にして貰うよう要請するわ。最初のうちだけでいいけれど。家格も男爵でしょう?リリアーナ様には悪いのだけれど、マリアさんに入れあげてくれたら儲けものね」
駄目なら駄目で特にこちらにリスクはない。そうやって芽吹くかどうか分からない小さな種がクリス様の周りにまた一つ蒔かれた。
勿論他にも種を蒔いている。クリス様の友人、侍女、メイドの好み、弱み、そんな情報はせっせと集め、使えそうな話には種を蒔いた。
ちなみに蒔かれた種に水をせっせとあげたのは王女殿下に指示されたり、されなくても動いた私である。結構大変だったがこれも王座の為である。仕方がない。
クリス殿下の側近の選定で王女殿下派閥の者、もしくは馬鹿が選ばれる様に根回しを頑張ったり、クリス殿下に甘い王妃殿下にクリス殿下の教育を甘くさせたり、クリス殿下の反派閥と水面下で仲良くしたり。勿論クリス殿下の同派閥の情報も欲しいので表向きはとても仲良く交流した。
いや本当に悪役令嬢だな〜うちの王女殿下!
しかしーーーー
クリス様が卒業される年、王女殿下による女王計画が最大の危機を迎えた。
その頃、クリス様の側近として潜ませていた王女殿下派閥の者に、卒業間近だし、旅行に行ってはどうかと提案させ、王都から離していた。総仕上げに、クリス様がいない間に卒業パーティーで色々仕込む予定であった。だが、全てがご破算になる可能性が突如発生したのだ。
国境線での砦の陥落、辺境伯が重傷により戦線離脱との情報が王城に上った。
攻めてきた敵国に、前々から不穏な気配の情報は来ていた。無実を主張しておくが、私も王女殿下も外患誘致はしていない。「そんな事をして成功したら外の人間にあれこれ口をだされるじゃない。嫌よ」自分1番の王女殿下には却下されている。
軍事に関しては敵国が上手だったようで、砦陥落のち、王都一歩手前のカンツァーの街が危機に陥った。
混乱した王妃殿下はこの危機を息子に伝えるかどうかで動揺し
「お義母様、こうなっては王都も危のうございます。クリスはこのまま避難させた方が宜しいかと、幸い、クリスは何も知りません。何も知らせずにしておけば、逃げたと誹りを受ける事は避けられるでしょう」
という、後で王都が無事だったら存分に誹る気満々の王女殿下に説得され、そのままクリス様は何も知らずにご旅行を続行させられた。
「このまま王都が陥落する事があれば、避難が正解だった事になるわね」
「勿論このままでは終わらせませんよ。その為にカンツァーの街へ行く許可を」
無言で王女殿下が私を見つめた。
「私も」「駄目です。剣術は、諦めてくだすったでしょう」
チッと淑女にあるまじき舌打ちをされた。扇からギチギチと不穏な音が鳴る。
「これで敵軍を蹴散らせれば文句なく女王になれるのに!」
「その通りですが、貴女にそんな危険な事を私がさせませんよ。ところで私の殿下」
「貴方のじゃないけど何よ」
王女殿下は怖い顔から一転、うろたえた顔になる。こういうチョロいところが可愛いなぁと思っている。
私は跪いて、王女殿下に願い出た。
「女王になったら結婚して頂けるとの事ですが、王都に戻る事が出来たら、女王になれなくても結婚して下さい」
「わたくし、生きている間は1番を諦める気はないのだけれど」
「大丈夫です。私の1番で唯一です」
「…」
険しい顔で王女殿下は「そういう意味の1番ではないけれど…」とつぶやいたきり、黙っていたが、長い沈黙のあと
「…戻れたらね。死んだら死体を吊し上げるわよ」
ふんっ。と赤い顔でそう宣言された。
よし!!!言質取った!!!
「ではコチラの婚姻届にサインを…これを胸にいれて戦場行ってきますので!」
「用意良すぎない!?あーーー、もう、いいわよ。これで勝率上がるなら書いてあげるわよ」
自分の夢が叶いそうで浮かれてしまう。私は王女殿下と初めて会った時の事を思い出す。
私はいらない子だった。両親とは死別し、王城の隅で見捨てられていた。一応メイドが適当に残飯を持ってきてくれてはいたが、酷いものだった。しまいには臭いとの事で物置に捨て置かれた。積極的に殺しはしないが死んで欲しいと願われていた。
そこに王女殿下がやってきたのだ。
物置で転がっている私を見つけると目を輝かせてメイドに命令した。
「この子をおふろに入れてごはん食べさせて」
「王女殿下、その者は捨て置いて下さ」「わたくしはめいれいしているのよ?」
今思い返せば小さな少女だったのに大人であるメイドに笑顔で圧をかけられる強さは流石うちの王女殿下である。
「お義母様の弱みがないか調べていたのよ。で、貴方を見つけたの。」
のちに聞いた、私を助けた動機も本当にうちの王女殿下である。
その時の私はただ突然現れた天使のように可愛い女の子が自分を綺麗にしてくれて、自分にご飯を与えてくれたという事しか認識していなかった。
「あなたをわたくしのものにする為にお父様の所につれていくわ」
キラキラした笑顔で綺麗な場所へ引っ張っていく彼女の笑顔に私の胸はうずいた。その顔から目が離せなかった。
「おとうさま!この子ーーー」
綺麗な声で彼女が高らかに宣言する
「わたくしの犬にするわ!」
この女、いつか絶対泣かす。
そう決意した4歳の思い出である。
さてカンツァーの街へ向かった話だが、昔蒔いた種であるアントニー君がとんでもない大木に育ち、全て活躍の場をもっていってしまった。
水撒き、もとい、継続して支援していた私もちょっと引くくらいアントニー君が成長していてヤバかった。あんな強いの勝てる?個人の武勇もすごいのに、指揮も素晴らしい。重傷の辺境伯もアントニー君なら勝てると将を任せた。
総大将は不肖、私である。でも実際に指揮を執ったのはアントニー君である。いやー、とっても有能で楽をさせて貰いました。
でも彼の手柄は横取りせずにちゃんとアントニー君を立てたし、褒賞にリリアーナ様を望みなさいと背中を押してあげた。
アントニー君には感謝された。今までの支援もちゃんと覚えていてくれたので、それも合わせて。本当に礼儀正しくていい男ですねリリアーナ様。
卒業パーティーの工作いらなかったなーと、撤退していく敵軍を見て遠い目をしてしまった。苦労したのに…。
さて、アントニー君にはクリス様が戻る前に褒賞を是非ねだって貰いたい。その為王城に私はトンボ返りした。
私が王城にいなかった期間は驚きの3日間である。1週間以上か最悪帰らぬ覚悟をしていたのにアントニー君が本当に頑張って敵を蹴散らしてくれたおかげである。
「早くない?」
流石の王女殿下も呆気にとられた顔をして出迎えてくれた。
「アントニー君を勧誘したバイオレット様のおかげですねぇ」
「そんなに凄かったの?」
「本当の本当に。敵に回ると人望もあるので厄介です。恩を売るべきです。褒賞の時にお口添えお願いします」
アントニー君の希望は無事に通った。リリアーナ様の父君、サンフラヌ公爵が激怒して決闘騒ぎになったのはご愛嬌でしょう。
公爵も戦場でアントニー君見ていたら決闘申し込まなかっただろうなー
「さて…」
決闘騒ぎが収まったのち、国王陛下が厳かに声をあげた。
「私の後継者にクリスを指名していたが考え直してもいいと思っている」
その言葉に王妃殿下と王女殿下が同時に顔を国王陛下へ向けた。
王妃殿下は青ざめた顔で。王女殿下はキラキラした顔で。満面の笑みになりそうなのを我慢している顔だ。
「お待ち下さい!」
王妃殿下の悲鳴の様な声が室内に響く。その言葉に国王陛下は億劫そうにチラリと視線を向け
「反論は後で避難中のクリスから聞こう」
ぐむっと声を詰まらせる王妃殿下。
扇の下で笑む王女殿下。
王女殿下は次の国王陛下の言葉に耳をそばだてーーー
「今回の戦で私の名代を務めたクラックを王太子に。条件はバイオレットと結婚する事だ」
ーーー絶句した。
ギギギ…と音が聴こえそうな所作でうちの王女殿下が私の方へ向く
「…みょう、だい?」
私はとてもイイ笑顔でお答えする。
「はい。頑張りました。バイオレット様の耳に入らないようにするのに」
「けっこんがじょうけん」
「サイン有難う御座います!提出済みです!」
まー、早い話、国王陛下の兄の子供である私の方がクリス殿下より王座に近いのである。庶子の為、誰も守ってくれる人がおらず、殺されそうになったので一旦継承権は返上し、暗殺を防ぐ為に断種させられた王子でたねなしである。という欺瞞情報も流したりして、中々苦労した。
ここまでは王女殿下もご存知だった。なんなら欺瞞情報の流し方の先生である。有難う御座います。
ご存知でないのは、国王陛下と私が交渉し、王女殿下との結婚を条件に継承権を戻して貰うというものだ。
それでもクリス殿下よりは活躍が必要だったので頑張った。
いやーーー頑張ったかいがあったなー
目の前の王女殿下は今まで見たことがないくらい絶望的な表情をしている。
「うっ…うっ…」
王女殿下の瞳から水が溢れて溢れだした。赤い顔でぶるぶると震え、力の限り叫んだ
「裏切り者ーーー!!!!!!」
王族、みんな性格悪い
お読み頂き有難う御座いました。
小説を何か書きたいからテーマが欲しいと募集したところ、友人からケンカップルというテーマを頂いて書いたのがこちらになります。




