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第3節 「自分軸の確立」と、無敵のスルースキル  「おつまみ」の教えにより、結衣は他人の評価という呪縛から解き放たれ、覚醒する。

第3節 「自分軸の確立」と、無敵のスルースキル  「おつまみ」の教えにより、結衣は他人の評価という呪縛から解き放たれ、覚醒する。


 おつまみから流れ込むイメージは、結衣が今まで抱いていた常識を根底から覆した。


『不変の魂が肉体を乗り換えるような「生命のループ」などという迷信は捨てろ。だが、命という流れが、形を変えて続いていく「再生」は事実だ。お前は、この大きな流れの一部に過ぎない』


 結衣の頭の中にあった、麗華への恨みや、自分の境遇への不満が、霧のように晴れていく。


(……そうだ。彼女たちは、ただ「そういう役割」を演じているだけの、流れの一点に過ぎないんだ)


 結衣は深呼吸をした。

 不思議なことに、濡れた本を見ても、もう絶望は感じなかった。

 乾かせばいい。修復すればいい。

 それはただの事象であり、私の心を傷つける刃ではない。


 おつまみが満足げに「きゅふっ」と鳴いたような気がした。

 結衣は、自分が「心の自由」感覚を味わっていた。

 世間が、他人が自分をどう評価しようと、それは私という存在の本質には触れられない。


「……ありがとう、おつまみさん」


 結衣がそう呟くと、おつまみは姿を消した。

 いや、消えたのではなく、結衣の意識のすぐ隣、次元の隙間に隠れたような感覚だ。


 結衣は淡々と、濡れた本の処置を始めた。

 吸い取り紙を挟み、重しをかけ、最適な湿度で管理する。

 その動きは、先ほどまでとは見違えるほど迷いがない。


 そこへ、再び図書室の扉が開いた。

 今度は、乱暴な音ではない。

 だが、そこから入ってきた人物が放つ空気は、麗華たちの比ではないほど重厚で、鋭かった。


「……誰かいるのか」


 低く、よく通る声。

 結衣が顔を上げると、そこにはこの学園の頂点、生徒会長の御影尊みかげ・たけるが立っていた。


 端正すぎる顔立ちは、彫刻のような冷たさを帯びている。

 学園の創設者一族の嫡男であり、名実ともにこの地の「絶対王者」。


 普段の結衣なら、恐れ多さに縮み上がって視線を逸らしていただろう。

 だが、今の彼女は違った。


「はい。図書委員の白瀬です。何かお探しですか? 御影様」


 結衣はごく自然に、ただの「利用者」に接するように微笑んだ。

 その揺るぎない眼差しに、尊の方が一瞬、言葉を失った。

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