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第23節 「おつまみ」の旅立ちと、完成された理想郷  結衣の心のわだかまりを吸い込むおつまみ。祝福を残し、現世の浄土を完成させた結衣の前から姿を消す。

第23節 「おつまみ」の旅立ちと、完成された理想郷  結衣の心のわだかまりを吸い込むおつまみ。祝福を残し、現世の浄土を完成させた結衣の前から姿を消す。


 結衣がうつむき加減になったその時。

 ふわり、と空気が揺れ、足元に真っ白な毛玉が現れた。


「あ……おつまみさん」


 おつまみは、結衣の膝にピョンと飛び乗ると、彼女の胸の奥から漏れ出ている不安や負い目を、スースーと吸い込み始めた。


『……まだ、未来を恐れているのか。契約の終わりという幻に怯える必要はない』


 おつまみのイメージが、脳内に直接響く。


『過去の嘘も、未来の不安も、すべては「今」という瞬間の連続の中にある。お前はすでに、自分で自分の心の中に理想郷を作り上げた。「理想郷」などを夢見る必要もない。「自己実現(自分軸の確立)」は、すでにここにあるのだ』


 おつまみの言葉に、結衣はハッと息を呑んだ。


(……そうか。契約がどうであれ、私は今、尊さんの隣にいたい。その気持ちだけは、嘘じゃないんだ)


 結衣の心から、最後の迷いがスッと消え去った。

 それと同時に、おつまみは満足げに「きゅるっ」と鳴き、毛を大きく揺らした。


『お前はもう、私がいなくても、自らの足で歩いていける。他人の評価に惑わされず、ただ自分の命の輝きを全うしろ』


 おつまみの姿が、光の粒子のように少しずつ透けていく。


「おつまみさん……行っちゃうの?」


『私は消えるわけではない。「エネルギーの循環」の一部として、また別の形でお前を見守っている。……達者でな、優しき本の守り手よ』


 最後の祝福のイメージを残し、おつまみは完全に空気に溶けて消えた。

 結衣の心は、生老病死という四つの苦しみから完全に解き放たれ、どこまでも澄み渡っていた。

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