第18節 総帥の登場と、古文書の真価 御影財閥の総帥が現れ、結衣が直していた本が「学園のルーツを示す重要文書」であると明かす。
第18節 総帥の登場と、古文書の真価 御影財閥の総帥が現れ、結衣が直していた本が「学園のルーツを示す重要文書」であると明かす。
「その通りだ、尊」
大講堂の重厚な扉が開き、現れた人物の声に、全員がその場に凍りついた。
白髪を撫でつけ、仕立ての良すぎるスーツを着こなした初老の男性。その後ろには、数人の見知らぬ大人たちが付き従っている。
「そ、総帥……!」
「御影財閥のトップが、どうして……」
現れたのは、御影尊の父であり、学園の理事長も務める御影財閥総帥だった。
彼はゆっくりとステージへ歩み寄り、麗華の側近が持っていた古文書を恭しく受け取った。
「西園寺のお嬢さん。君はこれを『汚らしい本』と言ったね?」
総帥の静かな声に、麗華は顔から血の気を引かせた。
「あ、いえ、それは……」
「この方は、世界的な古書鑑定士のブラウン氏だ。彼に鑑定してもらったところ、この本は、我が御影家が数十年かけて探し求めていた『中世の薬草学』の写本であり、表紙の裏には、我が一族のルーツを示す極めて重要な記録が隠されていた」
総帥は古文書を高く掲げた。
「資産価値として数億円は下らない。だが、それ以上に、これは我々の『歴史』であり『誇り』だ」
会場が静まり返る。
総帥は、結衣の方へと向き直った。
「白瀬結衣さん。尊から報告は受けている。君は、誰に命じられることもなく、たった一人でこの本を湿気やカビから守り、世界に数人しかいない専門家レベルの技術で修復してくれたそうだな」
「あ……はい。本が、苦しそうでしたので」
結衣は控えめに答えた。
総帥は深く頭を下げた。
「君がいなければ、この学園の誇りは永遠に失われていた。君は雑用係ではない。我が御影家にとって、計り知れない恩人だ。心から感謝する」
財閥の総帥が、一介の特待生に頭を下げる。
その光景に、会場は水を打ったような静けさに包まれた。




