第17節 公開処刑の舞台と、揺るがない特待生 全校生徒の前で「家宝の本を盗もうとした」と濡れ衣を着せられる結衣。だが、結衣は全く動じない。
第17節 公開処刑の舞台と、揺るがない特待生 全校生徒の前で「家宝の本を盗もうとした」と濡れ衣を着せられる結衣。だが、結衣は全く動じない。
音楽が止まり、数百人の視線がステージ上の麗華に集中した。
麗華は悲劇のヒロインのような表情を作り、大げさに嘆いてみせた。
「今夜、このようなおめでたい席で、大変遺憾なお知らせをしなければなりません。我が学園の誇りである図書室の貴重な蔵書が、何者かによって盗み出されそうになったのです!」
会場がざわめく。
麗華はステージの上から、真っ直ぐに結衣を指差した。
「犯人は、そこにいる特待生、白瀬結衣さん! 彼女は図書委員という立場を悪用し、学園の重要な古書を外部に横流ししようとしていたのです!」
「な……!」
尊が鋭い目つきで麗華を睨んだ。
だが、麗華は怯まずに続ける。
「証拠はありますわ! 彼女のバッグの中に、図書室から持ち出された本が隠されているはずです!」
側近の生徒が、結衣の控室から持ってきたというバッグを掲げ、中から一冊の古びた本を取り出した。
それはまさに、結衣が修復を続けていたあのボロボロの古文書だった。
「見なさい、この汚らしい本を! 掃除婦同然の特待生が、学園の資産を私物化し、本に触れること自体が冒涜ですわ! こんな卑しい泥棒は、今すぐこの学園から追放すべきです!」
麗華の扇動により、事情を知らない生徒たちから非難の声が上がり始める。
「やっぱり特待生なんて入れるべきじゃなかったんだ」
「御影様を騙していたのね」
突き刺さるような悪意と嘲笑の嵐。
普通なら、その重圧に耐えきれず泣き崩れるか、必死に弁解する場面だろう。
だが、結衣の表情は、驚くほど静かだった。
(……ああ。麗華様は、まだ「生の苦しみ」の中にいるんだな)
結衣の胸の奥で、おつまみが微かに動いた気がした。
他者を蹴落とすことでしか自分の価値を保てない。それはとても哀れで、苦しい生き方だ。
結衣は「答えを決めない」まま、ただ静かに事態の推移を見守っていた。
「白瀬、君は何も言わなくていい」
尊が一歩前に出た。
その声は低く、しかし会場全体を凍りつかせるほどの威圧感を持っていた。
「西園寺。貴様は自分が何を言っているのか、分かっているのか?」
「御影様! 騙されてはいけませんわ! その女は——」
「黙れ」
一言で、麗華の声を切り捨てる。
「その本は、彼女が盗んだのではない。私が、彼女に修復を『依頼』したものだ」
尊の言葉に、会場中が息を呑んだ。




