第14節 図書室の常連(隠れファン)たちの告白 マウント合戦に疲れた令嬢たちが結衣のもとへ集う。図書室は誰でも自分に戻れる場所へ。
第14節 図書室の常連(隠れファン)たちの告白 マウント合戦に疲れた令嬢たちが結衣のもとへ集う。図書室は誰でも自分に戻れる場所へ。
一週間も経つと、図書室の様子は一変していた。
「……あら、北条様。またその席ですの?」
「あら、佐藤様こそ。今日は麗華様のお茶会には行かなくてよろしいの?」
以前は教室でマウントを取り合っていた令嬢たちが、図書室では声を潜めて、穏やかに会話を交わしている。
彼女たちの手元には、結衣が選んだ「それぞれの心に効く本」があった。
「白瀬さん、この前のお本、素晴らしかったですわ。誰とも比べなくていいという言葉に、救われる思いでした」
「それは良かったです。こちらの詩集も、心が整いますよ」
結衣はカウンターで、ハーブティーを振る舞いながら、彼女たちの悩みを聞いていた。
「もっと痩せなきゃ」「良い結婚をしなきゃ」という強迫観念。
それはすべて、彼女たちが「こうあるべき」という幻影に縛られているせいだと、結衣は知っている。
「皆さん、あまり自分を追い詰めないで。私たちの命は、ただ流れる水のようなものです。形を変えながら続いていく『エネルギーの循環』の一部。今、この瞬間を心地よく過ごすこと以上に大切なことなんて、本当はないんですよ」
令嬢たちは、結衣の言葉に涙を浮かべて聞き入っていた。
もはや彼女たちにとって、結衣は「卑しい特待生」ではなく、迷える自分たちを導いてくれる「隠れ聖女」だった。
図書室は、不毛なマウント合戦から切り離された「治外法権の聖域」となった。
麗華の命令で監視に来たはずの者たちが、次々と結衣の「隠れファン」に転向していく。
「……ここは、本当の自分に戻れる唯一の場所だわ」
誰かがポツリと漏らしたその言葉に、全員が深く頷いた。




