第13節 負の連鎖を断つ「おつまみ」の導き 嫌がらせを続ける者さえも包み込む、結衣の不思議な姿勢。その背後には「おつまみ」の導きがあった。
第13節 負の連鎖を断つ「おつまみ」の導き 嫌がらせを続ける者さえも包み込む、結衣の不思議な姿勢。その背後には「おつまみ」の導きがあった。
サユリが去った後、図書室の隅にモゾモゾと動く毛玉が現れた。
「……おつまみさん、また来てくれたんですね」
おつまみは、結衣の足元で嬉しそうに飛び跳ねた。
そして、結衣の脳内に心地よいイメージを送り込む。
『お前は今、他人の苦しみを「自分のもの」にせず、ただ流してやった。それは良い選択だ』
「彼女たちの攻撃性は、自分を守るための鎧なんですね。そう思うと、腹も立ちません」
おつまみは毛を逆立て、力強いイメージを送る。
『「生命のループ」を信じる者は、来世のために今を犠牲にする。だが、真実の再生とは、今の自分の行いが次の瞬間の世界を作っていく「エネルギーの循環」のことだ。お前が投げかけた一言が、彼女の次の瞬間の世界を変えたのだ』
結衣は深く頷いた。
以前の自分なら、サユリのような相手には怯えて逃げていただくだけだっただろう。
だが、おつまみの導きにより、結衣は「答えを決めない」柔軟さを手に入れていた。
「嫌がらせをされても、それは彼女の心の問題であって、私の問題ではない。……そう思えるだけで、こんなに自由になれるんですね」
おつまみは満足げに「きゅぷっ」と鳴くと、結衣の肩に飛び乗った。
結衣の周りに漂う「聖女」のようなオーラは、彼女が特別な修行をしたからではなく、ただ徹底的に「今」を肯定し、執着を手放した結果だった。
「争う時間はもったいないです。そのエネルギーを、自分の好きなことのために使いましょう。……そうですよね、おつまみさん?」
結衣は再び、本の修復に没頭した。
その背中は、どんな権力者よりも揺るぎなく、神々しく見えた。




