のっぺらぼうの初恋
私は、人を驚かせるのっぺらぼう。
まず、誰かの親しい人間に化けて、油断させた後に、のっぺりしてる顔を最後に見せて、驚かせるのが大好きなちょっぴりいたずら好きなのっぺらぼうの女の子。
人間を化かすのはいつも楽しい。
私はある夜、ある男を化かそうと思った。
その男のことを考えると、頭の中で、その人の一番親しい人の姿がイメージされて、それに化けることができる。それが私たちのっぺらぼう。
私は、その男の妻と思われる女に化けた。
私は男の前に飛び出して姿を見せた。
男は私の姿を見ると、なぜか泣いて激しく喜んだ。
あまりにもその程度が甚だしかったので、私は「ばぁっ」と、目も鼻も口もない顔を晒して正体を明かす暇もなく、なぜその男が泣いているのかわからず困惑していた。
とりあえず、化かすことに失敗したので、明日の夜にまた化かしてやろうと思った。
次の日の夜。
私はその男のことを遠くから眺めていた。
彼は誰かを待っている様子だった。
彼女とどこかに行く約束をしているのだろうか。
わからない。
彼女はまだ来てなさそうだ。
しばらく眺めていても彼女は来なかった。
今日は彼女は来ないのだろう。
風邪だったりするのかなぁ。
これは、チャンスだなと思った。
また彼女に化けて、驚かせようとリベンジした。
しかし、私はまた彼の喜ぶ勢いに負けて化かすことができなかった。
次の日もまた彼女に化けた。
彼はまたひどく喜んだ。
また、驚かすことができなかった。
噂が近所で立っていた。
聞き捨てならない噂だった。
彼女はもうすでにこの世にいない。
それなのに、彼女の亡霊と歩いている男を最近よく見かける。
男は一体誰と一緒にいるのか。
彼女は二週間前に事故で亡くなっていたのだ。
やらかした事の重大さを知った。
やってしまった。
なんてことだ。
今日も私は彼女に化けて、男の前に現れた。
男は彼女に化けた私に尽くしてくれた。
私は男の優しさ触れて、ますます好きになっていってしまう。
男も彼女に化けた私のことを好いてくれている。
でも、彼が好きなのは彼女だ。
罪悪感と後ろめたさと嫉妬となんとも言えない黒い感情がうずまいている。
ある日、利己的な罪悪感と寂寥感が限界を超えて「私は人間じゃない」と私は素直に男に言った。
男は「嘘だ」と言って信じなかった。
私は最終手段に出た。
化けるのをやめた。
男にのっぺりした顔を見せて、「私は人間じゃない」と言った。
彼は「信じない」と言った。
その顔は引き攣っていて、声が震えていた。
彼は全く信じなかったのだ。
いや、信じたくなかったのだろう。
信じようとしなかった。
彼は「また明日」と笑った。
私はもうそれ以上何も言えなかった。
次の日。
彼は昨日と同じように、私に挨拶をしてくれた
いつもの彼と同じように。
羨ましいなぁ。
彼女が、こんな素敵な人に愛されて。
それが私には辛かった。
しばらくして男は言った。
「知ってたよ。こんなこと最初から声も顔も全部全然違って、それでもまた会いたいと思っちゃったんだ。会えたらいいなって願っちゃったんだ」
…儀式がある。
こんな私でもできることがある。
のっぺらぼう、口もない私、そんな私が唯一できること。
キス。
…みたいなこと。
私に口がなくても、彼女に化けて、キスはできる。
でも、それをしたらいけない。
のっぺらぼうが化けた人間の唇を奪ってしまったら。
化けた状態で人間と繋がってしまったら。
私の心が消えてしまう。
私が人間になってしまう。
ただ、私の心が消える代わりに、その空っぽになった私の身体に死んだ彼女の心が生き返る。
そういうルール。
私は男にキスをした。
「ずっとあなたが好きでした」
私の心は幸せに消えていく。
私の視力も薄れていく。
男の顔はもう見えない。
身体が段々と私のモノじゃなくなる。
「ごめんね」
それを言ったのは誰だったか。
消えていったのっぺらぼうか。
幸せを掴んだはずのその男か。
はたまた、生き返ってしまった彼女だったか。
「死んだらダメだ」とか「生きろ」とか「頑張れ」とか無責任で偉そうで難しいことを言えるほどOBOnは大層な人間じゃないし、あまりそう言う言葉はOBOn自身好きではないので、今、OBOnがこの場で言えることは少ないのですが。
ただ、今この瞬間を正しく生きることができるならそれはとても素晴らしいことだと思います。
とても偉いと思います。
すごいことだと思います。
誇れます。胸を張れます。
帰ったら、好きな人に好きと素直に言いましょう。
大切な人にいつもありがとうと言いましょう。
大切にしてくれる人に大好きだって伝えましょう。
いつなくなるかも分からない、今ある関係を大切に。
OBOnとの約束です。
読んでいただきありがとうございます…✨
と閲覧数を眺めていると、「読まれている…!」と身にしみて実感でき、なんだか勇気が湧いてきます。
ありがとうございます。




