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造られた妖精の少年は、異能学園で“見えない敵”と戦う。 ― ⅩⅢ 現代群像戦線 ―  作者: 神野あさぎ
第九章・風、疾る日

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第九十四話 編成会議

 神無月の初め。

 外では秋風が吹き抜け、銀杏の葉がひらひらと舞っていた。


 昇降口を抜ける途中、五戸(いつと)が大きく伸びをしながらぼやく。


「だあ……どうすっかね」


 その隣を歩いていた鳩絵が首を傾げた。


「このしろちゃん、決闘体育祭の締め切りって……」

「明日よ」

「げげっ」


 鳩絵が目を丸くし、声を上げる。

 五戸は肩をすくめ、どこか投げやりに笑った。


 二人はそのまま特別対策部室へ向かう。

 今はA組の教室も兼ねた部屋だ。

 中には、頭を悩ませた生徒たちが集まっていた。

 黒板の前には「決闘システム 体育祭 チーム編成会議」と大きく書かれている。


 机の上には書類、端末、ペン、そして軽い焦燥感。


「富はどう思う?」


 夜騎士(よぎし)が腕を組みながら問いかける。

 その声には、リーダーとしての重みがあった。


四月(しづき)を除けば、凶、七乃さん、一ノ瀬さん、六澄(むすみ)あたりが個人戦やれると思ってる」


 王位は静かに答えた。

 そして、黒板に書かれた名前を見つめながら分析を続ける。


「五戸さんや愛主もやれるポテンシャルはある。ただ、五戸さんの異能は“殺害を目的にしない決闘”では使い道が限られる。

 愛主は言わずもがな、異性相手なら強い──」


 淡々とした声が教室に響いた。

 誰も反論できない。王位の言葉には、冷静な事実だけが並んでいた。


「王位自身は?」


 風悪(ふうお)が率直に問う。


 その言葉に、王位は少しだけ顔を伏せた。


「角を折って以来、弱体化してるからね。戦えるけど、個人戦みたいに“個の力だけで”戦うのは向かないかも」


 静かな声。

 その言葉に、教室の空気が一瞬だけ張り詰める。


 王位には“見えざる角”が存在した。

 かつて夜騎士凶を魔の手から救うため、自らの角を折ったのだ。

 その犠牲の上で、特効薬が開発された――だが代償として、王位自身の異能は大きく衰えた。

 角は彼の力の源でもあり、誇りでもあった。


「でも七乃は、二階堂と組みたがってる」


 辻がぽつりと呟く。

 その言葉に、王位が微かに笑んだ。


「どの道、黒八(くろや)や二階堂を入れたチームは編成しなきゃならん。二階堂は七乃に託すか」


 夜騎士は腕を組んだまま、冷静にまとめる。


 チーム戦は三対三。

 四チームを編成し、さらに個人戦に出る二人を選ばねばならない。

 ――そして、全員が必ず一度は出場しなければならない。


 そのルールの重みが、教室全体を静かに包み込んでいた。


「中間テストと期末テストの組み合わせ、悪くなかったよな」


 夜騎士が王位に話を振ると、王位は小さく頷いた。


「オレもそれ思った」


 風悪も同意するように言う。

 過去の連携戦――中間・期末での組み合わせは、確かに好成績を残していた。


「黒八は一ノ瀬とだったか?」

「はい、そうですよ」


 黒八が穏やかに答えた。

 あのときは一ノ瀬の制圧――菌糸による制圧力において最強クラスだった。


「いっそ四月を個人で出して、一ノ瀬と黒八を組ませるか?」


 風悪が提案する。


「一ノ瀬さんの個人戦の弱点は“制圧しきれなかった時”にある。制圧できれば強いが、その分、彼女自身に物理的な力はない」


 王位が冷静に分析する。

 海皇高校との決闘で、一ノ瀬が自力戦闘に不向きであることは明白だった。

 だが、見えない“糸”による制圧は――戦局を一瞬でひっくり返すほど強力だ。


「それに、個人戦ってことは、“個で強い”相手が出てくるのは明白。四月を個人戦に出すのは、確かにありかもな」


 王位がさらに思考を深める。

 四月――雷神。戦闘において、彼女は戦略そのものだ。


 そのとき、ドアが開いた。


「おはよー」

「おはよう!」


 五戸は気だるげに、鳩絵は元気いっぱいに挨拶しながら部屋に入ってくる。


「どうなった?」

「今、決めてるところですよ」


 黒八が朗らかに答えると、五戸は椅子に腰を下ろして腕を組む。


「はー、あんましやる気出ないのよね〜」

「課金に繋がらないとやる気出ないの、このしろちゃんの悪いとこ」

「なにをー!?」


 鳩絵の鋭い突っ込みに、五戸が机を叩いて反論。

 クラス中に笑いが広がる。

 いつもの日常――そんな空気が、久々に教室に満ちていた。


「中間と期末で言えば、オレと辻か……」


 風悪が言うと、隣の辻が静かに頷いた。

 その無駄のない反応に、夜騎士が軽く笑う。


「辻と風悪、三井野と凶、二階堂と七乃さん、一ノ瀬さんと黒八さん。これをベースに決めていこう」


 王位が腕を組みながらまとめる。

 全員の視線が集まった。


「あたしは燦とがいいー!!」


 妃が教室のドアを勢いよく開け、手を挙げながら叫ぶ。

 王位はため息をつき、軽くあしらった。


「三井野とオレと愛主ってわけか」


 夜騎士が眉をひそめると、すかさず妃が叫ぶ。


「あたしだって、あんたとは嫌よ!」


 声が教室中に響く。

 誰も止められない。


「一ノ瀬はどう思う?」


 風悪が穏やかに問いかける。

 一ノ瀬はすぐにスマホを取り出し、素早く文字を打ち込んだ。


『いつも一緒にいるこのしろちゃんか、かじかちゃん居れば安心』


 その画面を見せると、教室中が一瞬だけ和む。

 一ノ瀬らしい――静かながらも温かい回答だった。


 やがて議論がまとまり、王位が最終確認を取る。


「辻と風悪と鳩絵さん。三井野と凶と愛主。二階堂と七乃さんとボク。一ノ瀬さんと黒八さんと五戸さん……

 個人戦は四月と六澄でいいかな?」


「異議なし」


 王位の言葉に、クラス全員がうなずいた。

 ようやく――A組のチームが決まった。


「はー……決まった。決まったら決まったで、なんか緊張してきた」


 三井野は机に突っ伏しながら唸る。


「私も緊張してきました……皆さんの足を引っ張らないよう、頑張ります」


 黒八が苦笑いを浮かべて言う。


 そんな二人を見て、妃が立ち上がり、勢いよく拳を掲げた。


「ええい! A組! 頑張るわよ!!」


 その声が、教室いっぱいに響いた。

 笑い声と拍手が重なり――

 秋の午後、A組の士気は静かに、しかし確かに燃え上がっていた。


主なキャラ

風悪ふうお…主人公。頭の左側に妖精の翅が生えている少年。

・一ノ瀬さわら(いちのせ)…鼻と首に傷のあるおさげの少女。

二階堂秋枷にかいどう あきかせ…黒いチョーカーをつけている少年。

三井野燦みいの さん…左側にサイドテールのある少女。

・四月レン(しづき)…左腕にアームカバーをしている少女。

・五戸このしろ(いつと)…大きなリボンが特徴の廃課金少女。

・六澄わかし(むすみ)…黒髪に黒い瞳、黒い額縁の眼鏡に黒い爪の少年。

七乃朝夏ななの あさか…軽くウェーブのかかった黒髪の少女。

黒八空くろや そら…長い黒髪の少女。お人よし。

・鳩絵かじか(はとえ)…赤いベレー帽が特徴的な少女。

辻颭つじ せん…物静かにしている少年。

夜騎士凶よぎし きょう…左眼を前髪で隠している顔の整った少年。

妃愛主きさき あいす…亜麻色の髪を束ねる少女。

王位富おうい とみ…普段は目を閉じ生活している少年。

宮中潤みやうち じゅん…黒いマスクで顔下半分を覆う男性。担任。

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