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ミミズ救出大作戦(童話)

作者: n.kishi

 小学2年生のかなちゃんとさっちゃんは、クラスメイトで大の仲良しです。登下校もいつもいっしょ。そんなふたりに、待ちに待った夏休みがやって来ました。ふたりは毎朝、いつも遊んでいる小さな公園で待ち合わせ、ラジオ体操の会場へ向かいます。そんなある日のことです。先に公園に着いたかなちゃんがふと地面に目をやると、細い筋が何本もできています。よく見ると、10匹以上のミミズが砂の上を移動した痕です。夜中からくねくね動いていたのでしょう。でもすでに日が差し、気温もグングン上昇しています。大半のミミズは途中で力尽き、干からびてしまっています。中にはアリが群がっているのもいます。でもよく見ると2匹だけはまだ元気で、体をくねくね動かし、どこかへ向かおうとしています。


 そこにさっちゃんがやって来ました。かなちゃんがミミズのことを説明すると、ふたりは「どうしよう‥‥‥」とお互いの顔をのぞきこみます。このままだと、まだ生きている2匹のミミズもやがて干からび死んでしまいます。「よし!」とかなちゃんは自分を奮い立たせるように言いました。近くに落ちていた草の茎をおはし代わりに、動いているミミズをヒョイッとつまみ上げると、そのまま草むらに持っていき、日陰になっているところにそっと置いてやりました。そばで様子を見ていたさっちゃんは虫が大の苦手、ミミズは見るのもいやです。でも、助けてやりたいと思う気持ちはかなちゃんと同じです。「かなちゃん、それ貸して!」と勇気を出してかなちゃんからおはし代わりの草の茎を受け取ると、恐る恐るもう一匹のミミズに手を伸ばしました。でもかなちゃんのようにミミズをうまくつかめません。ようやくつかんだと思ったらミミズが暴れ、スルッと落ちてしまいます。そばでかなちゃんは心配そうな顔をしてさっちゃんの手元を見つめています。さっちゃんは必死です。「よし、今度こそ!」。これまで少し離れた位置からこわごわ手を伸ばしていましたが、今度はミミズに近付き、しっかり手を伸ばし、ミミズをおはしで挟みます。するとうまくいきました。そのままかなちゃんがしたように草むらに持っていき、日陰になっている地面にそっと置いてやりました。「やったぁ!」とふたりは小さくガッツポーズ。ミミズ救出作戦大成功です。


 そのときです。「あっ、いけない。ラジオ体操!」。公園の時計を見るとラジオ体操の開始まであと3分。ふたりはそのまま公園を横切り、会場まで走りました。汗びっしょりのふたりが会場に滑り込んだとき、ラジオ体操の歌が流れ始めました。ぎりぎりセーフです。ふたりは何事もなかったように涼しい顔をして、ラジオ体操を始めました。かなちゃんとさっちゃんは手足を動かしながら同じようにつぶやきます。「あの2匹のミミズが元気でいますように」。ふたりはにっこり、顔を見合わせました。


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