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女神2人と異世界転生する

「ざまぁ。」

これは、転生した俺が運命に抗い、優しく、強く生きる物語だ。だが、俺の口からはたった今、ざまぁと、冷たく冷酷な声が絞りだされた。

――あれ?異世界転生ってもっとこう、希望に満ちて可愛い女の子ときゃっきゃうふふできる感じじゃなかったっけ?俺、何でざまぁなんて言ってるんだろう。


―数時間前―


俺は、平凡な、普通の男子高校生だった...はずだ。そんな俺は、ある日俺の左右の不注意により、事故死した。急だった。即死だったそうだ。

そんな俺は今、”自称”女神様を目の前にし唖然とし、間抜けな顔を披露していた。まさか、始めてこんな間抜けな顔を披露する相手が”自称”女神様が始めてだとは、数週間前の俺には思いも寄らなかっただろう。

「それで?自称女神様。俺は死んで、これから異世界に転生する所だと。そこでお前の自業自得だか可哀想だから異世界に1つだけ欲しい物を持ってって良いと?」

俺はそう言うと自称女神様は顔を真っ赤にして言った。

「おい少年!!いい加減その”自称女神様”という呼び方やめてくれないか!!ボクは暦っとした女神だ!!...まぁ、1つだけ欲しい物を持ってって良いというのは事実だか。」

自称女神様は顔を真赤にしてそう言うと隣にいた、ちゃんと女神をやっていそうな少女が自称女神様をなだめ始める。

「まぁまぁ、ティピカ様。このお方も悪気が...、あるかもしれませんが、そこまで悪気は無いかもしれないですよ?」

なんだ。この少女は自称女神様、ティピカよりももっとしっかししていて良い子では無いか。

それに、何より可愛い。なんなら、この子を異世界へ持っていこうか。いや、流石にそれはキモいな。うんうん。自覚している俺偉い。

「ルミたんもそ言うのかい...?仕方がない。少年、今回は許してやろう。次は無いと思え。」

彼女、ティピカはルミたんと呼んでいるらしい。正直気持ち悪い。が、俺もそれなりにキモいだろう。何せ、自覚しているのだから。

「それで?少年、異世界には何を持っていくのだ?できる限りは叶えてやろう。」

俺は、キモい事を自覚し、冗談半分で言った。

「じゃあそのルミたんと言っている少女を持って行く。」

「はぁ?!」

「わ、わたくしですか?!」

ルミたんとティピカの声はほぼ同時だっただろう。まぁ、そりゃあ驚くよな。が、しかし持って行くと目の前で言われた当の本人はというと、真っ赤な顔でこちらをまっすぐ見つめ、コクリとルミたんは頷いた。

しかしティピカはというとバッと立ち上がり、バチバチと怒りのオーラを放ちながら俺を指差した。

「おい少年!!女神を”持って行く”だ?!モノ扱いか!?はんっ、断じて却下だ!()()()認めない!!」

「けれどその当の本人は頷いてくれたぞ?いくら自称女神様がルミたんが好きでも、()()()()()好きでも、自称女神様はルミたんの親でも何で無い。俺だって、ルミたんの親でも何で無い。なんなら今日始めて合ったばかりだ。だから、これはルミたんが決めることだ。ついていくか、ついていか無いか。」

俺はそう言うとルミたんを真っ直ぐ見つめる。我ながら中々キマったと思う。けど、少しカッコつけすぎてしまった。俺は羞恥心が一気に押し寄せてきた。初対面の人、いや、女神様にこんな事いったらきっと天罰だけではすまないだろう。

死んでそうそうやらかしてしまった。が、しかし俺はルミたんの言葉に驚き、呆気を取られてしまった。

「...。行きます。」

「...え?」

冗談半分で言ったはずが、本気で返されてしまっては、言った当の本人の俺も呆気を取られてしまった。

まさか本当に了承されるとは。思いもしなかった。

「る、ルミたん、本当に行くのかい?!こんなろくでもないやつと一緒に?!」

ティピカは先程よりも血相を変え俺を指差し言った。

「ろくでもないは余計だな()()()()()()は。」

俺がそう言うとティピカは視線をこちらに向け、ぷくっと顔を膨らませ言った。相変わらず生意気なヤツだ。

「本当の事だろう?第一こんなヤツと一緒君にルミたんを連れて行くわけにはいかないよ。ルミたんが行くなら僕も行く!!」

その瞬間、その場が沈黙に襲われた。

「...は?」

「...へ?」

俺とルミたんの口から間抜けな声が絞り出された。えっと、状況を整理させてくれ。今、”一緒に行く”という今の俺にとってはとてつもなく恐ろしい言葉が聞こえた気がする。いや、聞こえた。確かに”一緒に行く”と聞こえた。聞き間違えるはずが無いなんせ俺変わった趣味で家に引きこもっていた際、ウェブサイトの聴力検査が出来るサイト、まぁ本当の事を言えば、聴力検査で結果が良くなるほどポイントが加算されてゆき、新しい武器を手に入れることが出来る、いわば主食ゲームの副菜ゲームをやり込んでいた。

「...。い、今何て...」

俺は念の為、改めて聞き直した。すると、ティピカは顔を真赤にし言った。

「だから”一緒に行く”と言っているだろう!!ルミたんを一人では行かせ無い!」

「とんだ過保護野郎だな...」

そんなおかしな会話を繰り広げていると、どこからともなく声が聞こえてきた。何だ?また新しい女神様でもご登場か?

「ふふっ、ティピカちゃんとルミリエルちゃん、何だかおもしろい会話をしているみたいねぇ。」

そこには淡いピンク色に透ける金髪の女性が立っていた。何だろう、ひたすら美しいと言うか隙が全く無く、いかにも黒幕という雰囲気を(まと)っていた。

「ミルティア!!聞いてくれよそこにいる少年が女神を異世界に持っていくとか行っているんだ!!信じられない!!」

「...お前も随分乗り気だったろ。」

「乗り気じゃない!少年、少年がルミたんを連れて行くと言うから()()()()()ついていくだけだ!!」

二人でギャーギャーと争っているとミルティアという人がこちらをちらりと見る。

「...あら?そこにいる貴方、さっき私が「黒幕みたい」とか思っていたでしょう?」

「...え?」

さっきまでのうるさい空間が一気に静寂に包まれる。

俺はその一瞬で心を読まれた気分に陥った。不思議で、今まで体験した事が無かった感覚だった。まるで、俺の全てが見透かされているような気分。

この目に見られるとまるで「嘘をついても無駄だ。」と言われているような気分になる。

「そんな怖がらなくてもいいのよ、私は何もしないわ。」

...と、言われましても、全く説得力が無い。だって、いかにも黒幕ですという雰囲気をで纏っていて、そんな事言われて、「そうですよねごめんなさい」なんて素直に言える馬鹿がこの世に存在するだろうか。

いや、きっとしないだろう。..嗚呼でもここに一人いるな。

「おい少年、お前今ものすごい失礼なこと考えてるだろ。」

「いやぁ別に?」

「ぬっ...こいつめ...」

俺がティピカと再び言い合っていると、ミルティアさんがこちらを見てふふっと笑い、一言言う。

「なんだか話しについていけないけれど、面白いってことは分かったわ。3人で転生するんですってね?じゃあその転生させる役割、私が務めさせていただくわ。」

「「...は?」」

そう言うと息をつく暇も無く、ミルティアさんは呪文を唱え始めた。

「レヴァ=アウラ・ミナリエ――。」

「ちょっと待てミルティア!」

ミルティアさんが呪文を唱え始めた――。その時。ティピカが間に入る。良いぞ良いぞ!これで転生を阻止して俺を元の世界に戻してくれ!...まぁ、戻ったところでどうせ引きこもりニートに逆戻りするだけだがな。

「あら、どうしたの?ティピカちゃん。」

「ここはボクにやらせてくれ!!ボクだってやれば出来るコだって、ルミたんに見せつけてやるっ!」

...正直ティピカの言っている意味が分からない。え???俺を元の世界に戻してくれるんじゃ?

「レバァ…アリャ? ラヴァアウ…アウアウ……ミラリエ! フェリアエス!フォルマ!ええいもういい!飛べーーーーーっ!!!」

ティピカがそう言うと、俺等(おれら)は宙に舞い、光に包まれた。ミルティアさんが下で何やらごにょごにょ言っている。

「まぁ...。あれでも行けるのね...。、まぁ、楽しんでらっしゃい。ふふっ。」

最後に聞こえたのはそんな言葉だけ。あぁ駄目だ。もう声を聞こうとする気力すら無い。あぁ、俺本当に転生するのか。これからどうなるんだろうか。俺の異世界人生。

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