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翡翠の髪飾り

ヒューヒュー

    パチパチパチ

       ヒューヒュー


「よっ!お二人さん、アツいね!」「わざわざこんなところまで駆け落ちかい!?」


(駆け落ち…)


 確かに、そう見える…のかもしれない。望まない結婚式で、花嫁を攫った真実の愛…人々が思い描いている絵図はそんなところだろうか。

 けれど、ディエゴとレントが王国の騎士の鎧であることを見るや人々の態度が一変した。


「え…え?」「おい、あれは…まさか」「王国といえば確か、シオン王太子殿下の結婚式があったと聞いたが…」「じゃ、じゃあ…あれは…」


 ザダクの街の人々は、一様に絶叫して後ずさった。


「ひいいいぃ!!!」「も、申し訳ございません!!!!!」


 人々は左右に分かれ、平伏する。その様は、まるで引き潮のようだった。


「あのなぁ…」言いつつ私を地面に降ろしたシオン様は大層迷惑そうに眉を寄せた。

「僕は冒険者としてこの街に立ち寄ったんだ。あまりそう畏まられてもだな…」

「シオン様…それは無理があります」


 ドレスの裾を払って、シオン様の袖をぐいぐいと引っ張った。


「ともかく、早々に着替える必要があるでしょう。ディエゴとレントなんて尚更だわ。王国の騎士であることがバレバレだもの」


 二人はお互いを見合って「確かに…」と指を差し合っている。





 ザダクは王国が近いこともあって、店舗数が多い。服でも防具でも何でも選び放題である。


 私は伸縮性のある生地の衣服を選び、防具も一通り購入することができたので、早速着替えさせてもらった。


(やっぱり私はこれよね)


 防具が揃ってるんるんしていると、いきなりシオン様が肩を組んだ。


「やめろ、視線が刺さる…」

「?え、なんで…」

「防具を買ってるんるんしてる女性なんて珍しすぎるからだろ…」

「ひ、人を珍獣みたいに言わないでください」

「くくく…っ」

「ちょっと!?いくら王太子殿下とはいえ、怒りますよ!?」

「悪い悪い。っ…はははっ!」

「…全然悪いと思ってませんね」

「本当に悪かったと思ってるって。ほら、お詫びにこれ」


 するり、肩まで伸びた髪の毛を長い指が滑った。

 かちりと音がしたかと思うと、シオン様に引っ張られて鏡の前にちょんと立たされる。


「わ、」

「うん。よく似合う」

「でも、これ翡翠では?金細工もかなり細かいし…こんな高価なもの頂けません」

「気に入らないか?」

「そんなこと…。素敵です、とっても」

「なら黙って受け取ればいい」

「ありがとう…ございます…」


 中途半端に伸びた髪は束ねるべきか、切ってしまおうか決めかねていたけれど、このまま伸ばそうと決めた。

 鏡の向こうの私が赤い顔をして照れていたのが恥ずかしくて、何度か頬を叩く。


「全く…シオン様冒険に出ると急に素直じゃないっすね…」

「五月蝿い」

「そうですよ、お気持ちを素直に表現されないと。新婚なんですから」

「余計なお世話だ!お前ら!いいからさっさと選びやがれ!!」


(…ディエゴとレントにはあんな風に怒ることもあるんだ…)


 意外な一面を見て驚いていると、バチっと目が合ったシオン様の頬は真っ赤だった。

 腕で口元を押さえている。


「すまないな。…あいつらとは子どもの時からの仲なもんで、四人でいるとどうも調子が狂う」

「いえ、そういうお気持ちもなんもなく分かります。三人はそんなに昔からの付き合いなのですね」


 なんだかちょっとだけ羨ましかった。

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