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新たな旅の始まり

 花嫁姿の冒険譚は長く人々の間で愛され、勇者・メイリーは、いつの世もウェディングドレス姿で描かれることとなった。


 シオン王太子殿下は後に国王となり、誰よりも慈悲深い王として、歴史にその名を刻んだ。




「もう、恥ずかしいからよしてよ!ディエゴったら」


 思い切り裾が汚れてしまったドレスを引きずって歩く。

 着替えていたら、恐らく国王陛下に出立を止められてしまっていただろう。

 これはもう、やむなしだ。

 何事も勢いは大事である。


 けれど、私がドレス姿に剣を持ってざくざく歩いている姿を先ほどからディエゴがからかってくるのである。


「俺にいつか子供が産まれたら、自慢することってそんくらいのものですからねぇ…。今からお話を考えておかないとですね…。うん、いつか絵本を出版しても良いなあ。勇者・メイリーの冒険譚、なんてどうです!?」


 いちいちチャラいはチャラいのだが、ディエゴは王太子妃となった私にかける言葉をだいぶ選ぶようになったし、ちゃん付けで呼ばなくなった。


「メイリーちゃん」と呼ばれることがなくなって、少々寂しい気もするのはなぜだろう。


(初めは呼ばれるたびにこそばゆい気持ちだったけれど、慣れって不思議だ…)


「あら?…いつか子どもに聞かせるって…まさか、ディエゴにも縁談が!?」

「いいえ!俺にそんな話が来たらもう、他のご令嬢達がキーキー悔しがるでしょうから、当分はいいです!」


 レントに「そうなの?」と聞いてみる。「あいつはいつもそんな調子ですが、そんな事実は一切ありません。本人は至ってモテてるつもりらしいですが」という返答が返ってきた。


 魔物が襲ってこない旅というのは、こんなにもサクサク進むのかと驚く。

 なにしろポーションの消費も最小限で済むのだ。精神的負担も経済的負担もかなり少ない。加えて荷物も少なくて済む。


 まもなくザダクの街だ。

 旅に適した服装と鎧、それから細々としたものを買っておきたい。


(というか早く着替えたい…。ここまで歩いてきた自分を褒めたいわ…。)


「…メイリー、少し休もうか」

「フリ…シオン様。ですが、まもなく街に着きます」

「いいからここに座れ」


 指し示された切り株に、言われるがまま腰掛ける。

 跪いた王太子に、ヒールの高い靴を脱がされてしまった。


「靴擦れだらけじゃないか!」

「あー…いや…やっぱり編み上げブーツが一番いいですね。さすがに森を歩くのには、この靴は適しませんでした。ははは…」

「もっと早く言えば良いだろう」

「言ってどうなると……」


 シオン様はジャケットを枝に引っ掛けて、腕を捲った。それから私のことを抱き上げると、そのままスタスタと歩き出した。


「ちょっと…お、降ろしてください!そもそもシオン様だって、タキシード姿で…」

「君より千倍マシだ。街に着くまでこのまま大人しく腕に抱かれていろ」

「うっ…でも…」

「少しくらい甘えることを覚えろ」

「………はぃ…」


 後ろからついてくるレントとディエゴのニヤニヤ顔に無性に腹が立った。


「これはザダクの街で新たに伝聞が広まりそうだな、レント」

「ああ、新婚の王太子と王太子妃が、結婚式の姿のまま、王太子妃を抱いて街に訪問するんだからな」


 ぼわっと顔が熱くなる。

 それだけは勘弁願いたい。

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