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断髪式

 翌日、改めて王城に呼ばれた私は、勇者としての激戦に備えて、特別に断髪式を行った。

 ポニーテールを解いて、ただそうせねばならぬから伸ばしていたに過ぎない髪を、短髪に切り揃える。

 勇者のテストの時の様な冷やかしなど一切ない、咳払いさえ許されない様な厳かな雰囲気だった。

 ただ、しゃきしゃきと軽快な鋏の音だけが場を支配した。

 私は膝をついて目を閉じ、胸の前で拳を握った。国王への忠誠と国の平和を背負う覚悟を刻み込む。


「勇者・メイリー、目を開けなさい」

「はい」

「うむ、良い目をしている。こちらへ」


 これから始まる冒険に、国王は私の肩に剣を置いた。


「メイリー・ミュークレイに神の加護があらんことを」


 パーティメンバーに選ばれたその他の三人も同様、順番に肩に剣が置かれていった。

 大きな槍を携えている大男の、レント・ステファン、ちょっとチャラそうな弓使いのディエゴ・リーリオと続く。

 そして最後は


「フリック・ドヴァンニに神の加護が…あらんことを」


 線は細いけれど、戦うための筋肉が服の上からでもわかる。けれど、彼はどうやら魔法使いの様だ。


(って、あれ?)


 ディエゴという男がキョロキョロしているので、きっと同じことを思ったのだろう。恐る恐る挙手した。


「恐れながら国王陛下」

「なにかね?」

「回復師はいらっしゃらないのでしょうか?」


 国王は「ふむ」と言ってため息をついた。


「数が少ない上、ほとんど出払っておる」


 パーティの中でディエゴとレントが堪らないといった風に抗議した。


「そ、それはあまりにも…」

「帰りは癒しの加護を得た聖女がおる。安心しなさい」


(神殿に辿り着くまで、死なずに切り抜けないといけないということ!?)


 思わず苦笑すると、フリックという男と目が合った。

 ぺこりと頭を下げたが、無言で前を向かれてしまった。


(ああ、これは…思った以上に前途多難だわ!)





✳︎ ✳︎ ✳︎





 いざ王城を出て、ショップで旅に必要なものを品定めしていると、大男がいきなり肩を組んできた。

 太い腕がのしかかって、重たい。


「おい、メイリー。お前公爵令嬢なんだってな。ただのお荷物じゃないか。逃げて帰るなら今のうちだぞ」

「人を見た目で判断しないで。レント、だっけ?手合わせでもしていく?」

「なんだと?表出ろ!」


 私の腕を掴んだレントを制したのはフリックという男だった。


「仲間内で争ってどうする。森に入れば、すぐに魔物と戦うことになるんだ、嫌でもメンバーの実力を知ることになる」

「くそ…わかったよ」


 レントは意外にもあっさりと私の腕を離した。


「そうね。ありがとう、フリック。私がしっかりしなければならないのに…」

「別に。だが、僕はお前が誰だろうと忖度などしない。自分の身は自分で守れるんだろう?」

「当たり前だわ。でも私が守るべきものは自分自身ではなく聖女様よ。自分の身を挺してでも」

「へえ、ご立派だな」


 フリックと睨み合っていると、ディエゴが何やら悪絡みしてきた。


「なんだなんだ、二人とも。喧嘩か?」


 それからなぜか、私を上から下までじろじろ見ると、

「うーん、メイリーちゃん、短い髪もよく似合うね!」

と言った。


「ああ、そう?ありがとう…」


 なんだか拍子抜けしてしまう。

 大丈夫なのか、このメンバーは。


(でもきっとみんな私に対して同じことを思っているんだろうな)


 不安を抑え込む様に、勇者・フェンネルの剣をしっかり握りしめた。

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