噂の洞窟
いつものように水をくみに行った。ただ俺の村は山々に囲まれていて水を得るには山を越えた先にある王都にいかなくてはならない。距離があって水をくみに行くだけではもったいないから俺はいつも村で作った野菜などを店に届けている。
今日もいつもと何も変わらない日になるはずだった。
だけど、見つけてしまった。噂の洞窟を。
‥‥どうやらこの洞窟には金銀財宝が埋まっていてその噂を聞いたものは皆一攫千金を狙って探しにいくとか
そんな噂を信じてはいなかったが、もし見つけることができたらと思うと少し信じたくなって俺は洞窟の入口に向かった。
洞窟は暗いかと思ったが、一攫千金を狙った者達が残したいくつもの松明の火が洞窟の奥深くまで続いていた。火が消えずについているのもこの風も通らない乾燥した空気と外より寒い気温のせいなのかもしれない。
洞窟の道は想像よりと長かったが、やはり途中で終わっていた。
‥‥ただでさえ長い王都への道を外れたというのに
そう思うと損した気分になった。諦めて帰ろうとしたとき肌で温かい風を感じた。
‥‥この洞窟に風は通らないはず
違和感を感じた俺は風の方へと歩みを進めた。風が来る場所は案外すぐに見つかり、岩と岩の隙間にあった。隙間は直径1メートル位といった所だろうか。
‥‥俺の体格なら通ることができそうだ。
明らか怪しい隙間と通ることのできる幅だという条件から俺は噂を余計に信じ、砂が入らないように目を閉じ、俺は体を隙間に通した。
目を開ける。そこは小さな個室で、壁は岩ではなく石のタイルのようになっている。天井にはそこそこ大きな穴が地上まで繋がっている。穴からは風が流れ、地上から光が差し込んでいる。
‥‥やはりここだったか。
そんな疑問を解決したのもつかの間、俺は自分の周りの状況に気付く。
規則的に並べられた木でできた古びた椅子、まるで天井を支えていたかのような岩でできた太い柱。まるで教会のようだった。ただ、それだけではなかった。広い教会の奥には白骨化した人骨が座っている。
‥‥見た感じ、偉い人のようだ。王のような存在だったのだろうか。
その骨の近くには光で輝く金銀財宝があった。俺は無我夢中でその場所に歩みよった。ただ、それよりも目を引かれるものがあった。それは王の座っている椅子に立てられた剣だった。
‥‥金銀財宝はいくらでもある。が、剣は一つしかない。手持ちにも限界がある。これだけ売って帰ろう。
俺はその剣だけを持って外へと出た。
王都に着いた。ここはいつも商売が盛んで賑わっている。売る側からするととても助かることだ。
「勇者様!?」
その声に俺は振り向いた。




