第9話 イベント当日
覆面を着けた声優さんの周りで起きる話です。
舞台は異世界なので、実際の現場と違うとか言わないで下さいm(_ _)m
イベント会場の食堂にて
「〇野さん聞きました?こんなに急なのに、この会場押さえられた理由。」
「いや。」
良川の話題に興味無さそうに答える〇野。
「某アイドルグループで何人か妊娠して、活動休止になるらしいですよ。それで空いたって。」
「え?某って何?ちゃんと教えてよ。」
急に食いつく〇野。
「僕も某アイドルグループとしか聞いてないんですよ。」
「なんだただの噂か。俺の推しのグループなら泣くよ。」
安堵する〇野。後日、〇野は泣くことになる。
「噂といえば、2期があるらしいですよコレ。映画化もあり得るとか。」
福田が〇野と良川に話しかける。
「「いや、無いでしょ。」」
声が重なる二人。
「僕が言うのもなんですけど、脚本クソですよ。」
その話題による炎上を乗り越えたため、少し誇らしげに話す良川。
「一部界隈では評価高いですよ。英雄マントヒヒが窮地に陥り、そこに表れる英雄マントシシ。更にその英雄マントシシの窮地に現れるのが英雄マント寿司。って、寿司ですよ、もう生き物ですらない。なんて斬新なんでしょう。」
福田(一部界隈民)は、少し興奮気味に話す。
「その寿司食われちゃって、ネタ切れで続かなくて、ピンチのまま場面転換して戻らないじゃん。そんな話、ついてけないよ俺。」
話の続きを要約する〇野。
「そこから強引に群像劇にしていく所で更に評価が上がったんですよ。」
登場人物が増えただけのことを群像劇と言い換える一部界隈民(福田)。
「「いや、下がったでしょ。」」
再び声が重なる二人。
「何の話?」
覆面声優Aが話しかける。
「2期の噂ですよ。」
〇野が答える。
「あ、それ社長が面白いからって広めようとしてた嘘だよ。予備の覆面もらう時に聞いた。」
「え~。」
「だよね。」
「あのオッサンがやること全部無茶苦茶だよ。」
三者三様の反応。
「でも、フクちゃん歌上手いよね。ボイトレとかしてるの?」
落ち込む福田を見て良川が話題を変える。
「私、歌手志望だったから昔ね。」
「昔なんだ。」
〇野がつぶやく。
「コラそこ!」
突っ込む覆面声優A。
「でも本当に上手いですよね、かなり本格的ですよ。」
褒める福田。
「上手いだけじゃデビューはできないのは分かってだけど、今回の覆面ゴリ押しでデビューはちょっと……。」
本名でデビューしたかったということを滲ませる覆面声優A。
「この後何曲も出して、それが売れれば問題無いじゃないですか。」
励ます良川。
「そだね、頑張る。ありがと。」
拳を握り頑張りを手振りで示す覆面声優A。
「ところで、フクさん何持ってるの?」
〇野が覆面声優の持つ桃色の布を見て聞いた。
「あ、これ予備の覆面沢山有るからあげようと思って。前に〇野君付けてみたいって言ってたから。」
「入れ替わりじゃなければ、ですけどね。付けてみようかな。」
〇野が覆面を受け取りかぶろうとすると、〇野の視界は暗転し物の輪郭だけが白く見えて停止する。
(んな?体動かない!皆も止まってる!なんだこれ!)
(間に合ったか。)
社長の声が〇野の脳内に響くと、視界の隅に社長が現れる。
(〇野君さあ、その覆面は付けちゃダメって言ったよね。)
(そういえば、選曲後の呼び出しで、そんな話されたな。)
イベントの選曲の後に社長から聞いた説明を思い出す〇野。
(君に魔法が効かないのは、覆面の魔力を反射しているからで、覆面をかぶってしまうと反射された魔力が覆面内で共振して爆発するのだ。爆発は物理的な力だから君の頭は粉々に成るのだよ。)
(そこまでの説明はされてませんけど。)
突然命の危険があったと説明された〇野は恨みを込めた思念で返す。
(まあ、無事でよかった。時空魔法は長く維持できないから戻すよ、くれぐれも気を付けて。)
〇野の視界が元に戻るが、社長は既に見えない。
「どうしたの?」
動きが止まった〇野に声をかける覆面声優A。
「いや、ちょっとトイレ行ってきます。」
部屋を出ていこうと席を立つ〇野。
「里美ちゃんも付ける?」
(いかん、彼女も魔法を反射している可能性が!危ない!)
以前の社長の「能力者か?」という言葉を思い出し、福田を止めようとして振り向く〇野。
「嫌ですよ、そんなの。」
「え~、仲間になろうよ、覆面声優Bとかどう?」
「イヤです!」
福田は、あっさり断り無事に危機を回避していた。
つづく




