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覆面声優  作者: 王烈夏
6/10

第6話 F登場

覆面を着けた声優さんの周りで起きる話です。

舞台は異世界なので、実際の現場と違うとか言わないで下さいm(_ _)m

事務所の休憩室にて


毎度の三人が本を読んでいる。

良川が雑誌を見て覆面声優に話しかける。

「フクちゃん、グラビアの仕事もしてるんだね。」

「そうなのよ、オホホホホ。」

覆面声優は口元に手を当て、ぎこちなさを強調した反応をする。


「フクさん、ナンカ修正スゴイね。身長倍くらいになってない?」

〇野が突っ込みを入れる。

「……あのね、それ別人なの。」

ため息交じりに覆面声優が打ち明ける。


「「は?」」

意味が分からず首をかしげる二人。

「私、照れ屋なのでグラビアとか断ってたんだけど、『覆面なら別人でも良いんじゃね~』って社長が。」

俯いたまま打ち上げる覆面声優。


「フクさん、それ詐欺じゃ、ヤバいよ。」

犯罪だと思い心配する〇野。


「だからね、来週から名前変えて正式に二人体制になるの、覆面声優Aと、覆面・F・声優だって。」

顔を上げ説明する覆面声優。

「いや、それ大丈夫なの?著作権とか。」

具体的な内容を聞き、更に心配になる〇野。


「クレーム来たら考えるって。」

「さすが社長。」

あきれる〇野。


「で、フクちゃんはどっちなの?」

「私が覆面声優A」

「カップ?」と〇野。


ガチン!(金属音)


「あ゛?なんて言った?セクハラで訴えるよ!」

女性とは思えない低い声で覆面声優が〇野を睨みながら言う。


「すみませんでした!!(社長が代役しなくて良かったじゃん。)」

土下座する〇野。

「あっ、僕次の仕事なんで行きますね。」

危険を感じた良川が去っていく。


「フクさん、その覆面の認識阻害って俺には効かないらしいですけど、他の人にそのグラビアはどう見えてるんですか?」

土下座のまま、〇野が社長から聞いた話を打ち明けて話をそらす。


「え、本当?それ〇野君だけ?」

「多分、なんか才能有るみたいな言い方だったから。」

以前の勇者に成っていたかもしれない、という話を思い出しながら答える〇野。


「そうなんだ。覆面は二人とも同じものでね、私達には真実が見えているから、他の人の見え方は分からないのよ。でも印刷物になると覆面の効果が弱くなるから、別人使って本人との差を減らすって言ってた。それだと〇野君が見てるのは、世間の人とあまり変わらないと思うよ。」

覆面の魔法について説明する覆面声優。


「じゃあ、世間の認識は高身長で爆乳のフクさんなんですね。」

からかう様に言う土下座のままの〇野。

「……」

無言のまま、〇野を上から睨む覆面声優。

「……いえ、良川君がそう言ってたから。」

他人を売る〇野。


「他人なのに双子なみにそっくりだ、って話にするって。次の仕事から二人の見た目を微妙に変える調整が入るけど、過去の記憶も改ざんできるから問題無いって言ってた。記憶が変わるって怖いよね。」

ため息交じりに、追加の説明をする覆面声優。


「なんかもう色々知っちゃって本当に怖いですよ、俺も認識阻害の魔法にかかっていたかった。」

魔法耐性の能力を恨む〇野。

「私は助かったよ、普通に話せるのが社長以外にも居てくれて。」

感謝の言葉を伝える覆面声優。


「「感謝は形にしなさいね。」って昔〇〇さんから教えられたなあ。」

土下座のまま、覆面声優になる前の話をする〇野。

「そうね、感謝の印にこの覆面あげるから入れ替わらない?映画みたいに女性の体験ができるよ。」

軽い気持ちで言った覆面声優だが、ミニスカート姿の社長を思い出した〇野は青ざめる。


「あっ、俺も次の仕事行かなきゃ!」

慌てて立ち上がり、部屋を出ていく〇野。



つづく

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