第6話 F登場
覆面を着けた声優さんの周りで起きる話です。
舞台は異世界なので、実際の現場と違うとか言わないで下さいm(_ _)m
事務所の休憩室にて
毎度の三人が本を読んでいる。
良川が雑誌を見て覆面声優に話しかける。
「フクちゃん、グラビアの仕事もしてるんだね。」
「そうなのよ、オホホホホ。」
覆面声優は口元に手を当て、ぎこちなさを強調した反応をする。
「フクさん、ナンカ修正スゴイね。身長倍くらいになってない?」
〇野が突っ込みを入れる。
「……あのね、それ別人なの。」
ため息交じりに覆面声優が打ち明ける。
「「は?」」
意味が分からず首をかしげる二人。
「私、照れ屋なのでグラビアとか断ってたんだけど、『覆面なら別人でも良いんじゃね~』って社長が。」
俯いたまま打ち上げる覆面声優。
「フクさん、それ詐欺じゃ、ヤバいよ。」
犯罪だと思い心配する〇野。
「だからね、来週から名前変えて正式に二人体制になるの、覆面声優Aと、覆面・F・声優だって。」
顔を上げ説明する覆面声優。
「いや、それ大丈夫なの?著作権とか。」
具体的な内容を聞き、更に心配になる〇野。
「クレーム来たら考えるって。」
「さすが社長。」
あきれる〇野。
「で、フクちゃんはどっちなの?」
「私が覆面声優A」
「カップ?」と〇野。
ガチン!(金属音)
「あ゛?なんて言った?セクハラで訴えるよ!」
女性とは思えない低い声で覆面声優が〇野を睨みながら言う。
「すみませんでした!!(社長が代役しなくて良かったじゃん。)」
土下座する〇野。
「あっ、僕次の仕事なんで行きますね。」
危険を感じた良川が去っていく。
「フクさん、その覆面の認識阻害って俺には効かないらしいですけど、他の人にそのグラビアはどう見えてるんですか?」
土下座のまま、〇野が社長から聞いた話を打ち明けて話をそらす。
「え、本当?それ〇野君だけ?」
「多分、なんか才能有るみたいな言い方だったから。」
以前の勇者に成っていたかもしれない、という話を思い出しながら答える〇野。
「そうなんだ。覆面は二人とも同じものでね、私達には真実が見えているから、他の人の見え方は分からないのよ。でも印刷物になると覆面の効果が弱くなるから、別人使って本人との差を減らすって言ってた。それだと〇野君が見てるのは、世間の人とあまり変わらないと思うよ。」
覆面の魔法について説明する覆面声優。
「じゃあ、世間の認識は高身長で爆乳のフクさんなんですね。」
からかう様に言う土下座のままの〇野。
「……」
無言のまま、〇野を上から睨む覆面声優。
「……いえ、良川君がそう言ってたから。」
他人を売る〇野。
「他人なのに双子なみにそっくりだ、って話にするって。次の仕事から二人の見た目を微妙に変える調整が入るけど、過去の記憶も改ざんできるから問題無いって言ってた。記憶が変わるって怖いよね。」
ため息交じりに、追加の説明をする覆面声優。
「なんかもう色々知っちゃって本当に怖いですよ、俺も認識阻害の魔法にかかっていたかった。」
魔法耐性の能力を恨む〇野。
「私は助かったよ、普通に話せるのが社長以外にも居てくれて。」
感謝の言葉を伝える覆面声優。
「「感謝は形にしなさいね。」って昔〇〇さんから教えられたなあ。」
土下座のまま、覆面声優になる前の話をする〇野。
「そうね、感謝の印にこの覆面あげるから入れ替わらない?映画みたいに女性の体験ができるよ。」
軽い気持ちで言った覆面声優だが、ミニスカート姿の社長を思い出した〇野は青ざめる。
「あっ、俺も次の仕事行かなきゃ!」
慌てて立ち上がり、部屋を出ていく〇野。
つづく




