第4話 炎上
覆面を着けた声優さんの周りで起きる話です。
舞台は異世界なので、実際の現場と違うとか言わないで下さいm(_ _)m
収録現場にて
「◯野さん!ちょっとヒドくないッスか?」
良川が〇野に文句を言う。
「あ、あれ聞いたの?やっぱ事前に知らなかったってこと?」
申し訳なさそうに聞く〇野。
「聞きましたよ!ヒドいッスよ!ヒド過ぎるッスよ!あれじゃ僕仕事干されちゃいますよ!」
「まあ、まあ、落ち着いて、落ち着いて。」
両手の手振りも加え、落ち着かせようとする〇野。
時は遡り、その前日の夜。
「こんばんわ!さあ、始まりました。『風呂敷戦記』ネットラジオの記念すべき第一回目の放送です!」
◯野が独りで配信する番組の初回である。
「さあ、初っ端から重大な告発が有ります!聞いて下さい!」
~~~~~~~録音再生~~~~~~~
「いやー、あの脚本クソッスねー!」
~~~~~~~再生終了~~~~~~~
良川が事務所の会議室で話した録音がかかる。
「お、内部告発ですね。ま、この話はおいといて、作品の紹介から……」
その発言についてそれ以上は触れずに番組は終了した。
時は戻り収録現場。
「◯野さんは知ってたんですね?」
「あれ?社長が会社に沢山ボイスレコーダー仕掛けてるの有名な話だけど、知らなかった?」
社長の奇行の一つとして有名な録音について、事務所では気を付けるように伝えられているはずの事を改めて確認する〇野。
「いや、そこじゃなくて、あんな内容の番組録ったなら教えてくれても良いじゃないですか!」
「それは本当にゴメン。昨日の夜に公開してたって俺もここに来て知ったんだよ。アレ録ったの配信の30分前だよ、急に呼び出されてさ。しかも、その後社長に文句言ってたら何故か一緒に飲み始めてて、気付いたら夜中で、って今思うと俺に配信聞かせないためだったなあれ。」
頭を下げて詫びる〇野。
「いや、◯野さんに謝って欲しい訳ではなくて、誰なんですかあの台本書いたの。ってその話だと社長ですよね?」
「いや、八嶋さんだってさ。良川君のトコだけ。」
「え〜、何で八嶋さんが?」
予想外に出てきた名前に疑問を抱く良川。
「ココだけの話しだけど、あの人も脚本がクソだって思ってるらしくて、社長からその話聞いて『え〜、同士居た!』って凄く良川君を褒めてたんだって。良かったね仕事増えるよきっと。……多分。おそらく。メイビー。」
「そんな事言われても、不安しかないですけど。」
そこまで話して仕事に戻る二人。
ラジオの初回配信時点で第3話までの放送が終了し、脚本の酷さが視聴者にも伝わっていた事からプチ炎上し、『悪太クソ発言』がトレンドランキングで上位に来たり、炎上商法だとの批判も有ったりで番組と良川の知名度は急上昇していた。
後日、事務所にて。
「いやー、良川君、バズったってやつだね、良かったね!」
明るく話しかける〇野。
「全然良くないっスよ!八嶋さん以外からは脚本批判する使い難い奴って思われてますって。」
未だに不安なことを伝える良川。
「それは心配し過ぎだって、大丈夫だから。」
「それに、社長がナンカ変な俺のグッズ作ろうとしてるみたいで、さっき採寸させろって来たんですけど!」
「それは心配だ……。」
二人の心配は杞憂で終わり、良川グッズは販売されず、炎上はすぐに忘れられていった。
つづく




