第3話 脚本がクソ
覆面を着けた声優さんの周りで起きる話です。
舞台は異世界なので、実際の現場と違うとか言わないで下さいm(_ _)m
事務所の休憩室にて
「いやー、あの脚本クソッスねー!」
良川が〇野に話しかける。
「良川君、そういう事人前で言わない方が良いよ、誰が聞いてるか分からないんだから。」
〇野が良川を嗜める。
「『あの脚本』ですから何の話かは分からないですよね?」
「お、確かに。でも関係者は絶対アレだと確信するよ。」
「あの英雄の登場って、何かへのオマージュだって聞きましたけど。」
「ああ、それ『ドロえもん』だと思うよ。」
※本作品は異世界を舞台にしております。伏字で□(四角)ではなく、カタカナのロ(ろ)です。
「え〜!ドコがッスか?」
「ヒーローものの劇中劇でさ、主人公が絶体絶命になった所でその回が終わって、どうやって助かるのかってのが気になるんだけど、次の週は前振りなくそのヒーローの親戚がニューヒーローとして出て来て、また絶体絶命。ってのを何回か繰り返す話が有るんだよ。」
単行本のページを思い出しながら説明する〇野。
「ああ、似てますね。ってかパクリですよ、ヤバくないッスか?」
「俺もアレはアウトじゃないかと思う。」
肩をすくめる〇野。
そこに桃色の覆面を被った女性(覆面声優)が来て、飲み物を手に二人の向かいに座り、明るく話しかける。
「『ドロえもん』の話してました?」
「あ、フクちゃん、おはようございます。違うよ、あのクソ脚本の話しだよ。」
「良川君、だからそれ良くないって。」
〇野が再度忠告をする。
「うん、それ良くないよ、世の中コネと金が全てだから、どうせ文句言っても何も変わらないんだから。言っても無駄だよ。」
先ほどとは正反対の暗い声でつぶやく。
「あれ、フクちゃん、目が死んでるよ、大丈夫?」
「フクさん、何で急にそんな話になるの?」
心配して声をかける二人。
「こんな格好で仕事するからね、色々説明はしてもらったんだけど、社長と八嶋さんから。」
「あ〜、その二人だと色々関係ない事まで話したんでしょ?」
〇野は過去に長い無駄話に突き合わされたことを思い出して言った。
「脚本はね、制作会社にコネの有る素人が書いてるの。宝くじ当たったから、お金で脚本と宣伝企画をゴリ押ししたんだって。」
覆面声優は公然の秘密とされている話をした。二人も脚本が素人の作という話は聞いていたが、宣伝企画という部分は初めて聞いた。
「宣伝企画って事は、その覆面?」
〇野の問いに、力なくうなずく覆面声優。
「……この世界は陰険なお金持ちが支配してるのよ。きっと、私の結婚相手も、何処かで誰かが監禁して出会えなくしてるのよ!」
こぶしを握り立ち上がる覆面声優。
「(あ、変なスイッチ入った。)さあ!良川クン仕事仕事!」
「え?あ、はいっ!」
そそくさと立ち去る二人。
「ちょっと〜、何か反応してよ~。」
つづく




