8.スキル獲得
優しくしてくれた羊男達を死なせるわけにはいかない。だからパーティを組むのを断ろうとした私だったが、
シャララ~ ピロピロピン
▽ おめでとうございます! 絆が結ばれました!
貴女は〈召喚〉を覚えました!
謎の効果音が響き渡り、さらには〈召喚〉スキルを覚えたという謎が襲い掛かった。
「え? 召喚?」
今スキル覚えるタイミングじゃなくない? 絆が結ばれたってのもわからん。
わけのわからぬままに召喚スキルの説明書きを見る。
〈召喚〉
一定の好感度が上がったNPCがいる場合覚えることができる。
NPCの分身を召喚することができる。分身が消えてもNPCの死は訪れない。
これって……。
「あんぱんちゃ」「召喚!」
説明を見て固まってしまった私に、話しかけようとしてくれたカラクルさんを遮ってスキルを発動させる。
すると目の前にカラクルさんがもう一人現れたのだ。
「「えっ!? 私!?」」
「これは……。」
何故か分身のカラクルさんも驚いているが、カラクルさんと村長にスキルの説明をする。
「なんで今スキルを覚えたかはわからないんですけど、これなら皆の危険を心配しなくても大丈夫ですよ!」
「「よかったわぁ~。」」
二人のカラクルさんが同じ言葉、同じ仕草で喜んでいる。何だか変な感じだ。
「私、あんぱんちゃんのお手伝いができるのね~。頑張るわ!」
「心配なのは変わらないけど、私も協力できるなら少しは安心できるかしら。頑張ってね! 私!」
「……ちょっと待ってください。召喚できるのはカラクルだけなんですか?」
「あ、ちょっと待ってください。」
スキル画面を開いて召喚のスキル名を押すと、名前一覧が出てくる。名前はカラクルさんだけだった。
スキルを獲得したときに出た絆を獲得しましたという言葉から考えるに、好感度が高くなると召喚できるようになるということだろうか。
「カラクルさんだけみたいですね。」
「ふむ……、私も召喚できないですかね。」
「えっ、ありがたいですけど、どうすれば召喚相手にできるかはわからなくてですね。」
好感度の高さだったら、このまま村で生活していれば上がりそうだけど、それだけなのかな。
ピロピロピン
▽ アルガリが召喚できるようになりました!
「!?」
なんで!? いや嬉しいけど!
「今のはもしかして。」
「はい……、なんか村長も召喚できるようになったみたいです。」
「「えぇ! 村長も!? よかったわね~」」
何だか怒涛の展開で疲れてしまった。
召喚のスキルを獲得したこと、カラクルさんと村長を仲間として召喚できるようになったこと、いいことばかりなんだけど予想外のことばかりだった。
「とりあえず、これで食人木と戦っても心配ないですよね。」
「そうですね、ただ私はいいですけど、カラクルは戦闘はした事ないですよね?」
確かに村長はがっしりしていて、強そうだなっていうがわかるし、羊男の都市伝説によると羊男はかなりの怪力を持っているそうだが、カラクルさんはそんな感じはしない。
「「うっ……、頑張りますわっ!」」
本人も自覚がある様だ。
「無理はするなカラクル、戦闘は私がやるから。」
「「むうぅぅ〜〜〜。」」
むくれてしまった。うーん、流石に何もできないNPCを召喚するってのはないと思うし。カラクルさんにも何かしら能力はあるんだろうけど……。
「イヤッ! 私にも何かできるはずよ!」
「そうよっ! あんぱんちゃんの助けになってみせるわっ!」
あぁ〜、どうしよう。スキル画面に能力の表示とかないの?
スキル画面を表示させて、色んな所をタップするが説明文はでてこない。どうしようと思っていると、
ポン!
分身カラクルさんの手に緑の液体が入った瓶が現れる。回復薬だ。
もしかして……。
「えっ、何かしらこれ?」
「ほう、カラクルは回復薬を出せるのでは……?」
カラクルさんは戦闘能力はないけど、道具を自由に使えるキャラなのかもしれない。
戦闘はリアルタイムアクションだから、回復薬とか出すのにワンアクションとられるとこれからが大変だとは思っていたんだよね。虫との戦闘だったらすぐ終わるから戦闘後に回復薬を使えたけど、ボス戦とかはそうはいかないから、回復とかのサポートをカラクルさんに任せられるのはありがたいかも。
「出せるのは回復薬の他にもありますか?」
回復薬以外にも出せるならサポートの幅はぐっと広がる。
「ちょっとまってね、…………ふむ!」
気合の声可愛いな。
ポンッとカラクルさんの手に現れたのは、黒くて艶々とした細くて尖がっている針のようなもの。
何か見たことあるなこれ。確か……。アイテム欄を開くと同じものがあった。
「それ百足エネミーからドロップした、〈虫の牙〉ですね。」
「そうなのね、私適当に回復薬以外出ろ~って念じてたら、これが出たのよ。」
これで回復薬以外にも何かアイテムを呼び出せることが分かったけど、〈虫の牙〉は売るか薬の材料にするかだから、これを呼び出しても何の意味もないはず。
「もしかして私のアイテムから、呼び出してる?」
アイテム欄の回復薬の数を確認してみると、丁度一つ減っていた。
「やっぱり、そうみたいですね。」
「「えぇ!」」
私が召喚主だし、それも当然かなー。なんて思っていたけど、カラクルさんはショックだったみたい。まあ自分の集めたアイテムじゃないから、やりづらい感覚はわかるけど。
「そんなにショック受けないでくださいよ。呼び出すアイテムは選べるみたいですし、使ってほしくないのはあらかじめに伝えておきますから。これからサポートお願いします。」
「「……わかったわ、頑張るわね!」」
よかった、元気出たみたいだ。
それに戦闘の時以外にもこうやって召喚できるなら、一緒に旅するみたいで楽しいし。
「じゃあ、これからもよろしくお願いします。」