38.クエスト探し
「いいクエストはあるかな~。」
「ぴぴぃ~?」
私とマルスは王都の掲示板を見ながら首を捻っていた。
マルスとアリエスの戦闘訓練のために戦闘系のクエストにしたいけど報酬も良いのがいい。高望みしすぎだろうか?
クエストを受ける前に王都周辺で出現する牛やウサギ、野犬と戦闘してみたが、アリエスの戦闘能力は割と高かった。他の皆と比べてオカルトじゃないからそこまで期待して無かったから嬉しい誤算というやつだ。
一番は防御力が高い。牛の突進攻撃を受け止めて、ケロッとしていたのには驚いた。モフモフしているから? 攻撃力はまあまあで攻撃方法は基本とっしんからの頭突き攻撃で、角も大きく体格がいいため割といいダメージを相手に与えられたが、村長や私ほどではなかった。
しかも召喚されることにより新たな能力を得たのか、私達を乗せて走れるようになったのだ。普通は鞍とか必要なんだろうが、多少の揺れはあるものの誰を乗っけて走っても安定しているし、速さも落ちない。戦闘で乗れば機動が上がるし、街から街への移動が楽になった。役目は盾役と足役かな。
私のパーティも段々強くなって、いい感じではないだろうか?
攻撃力、というか戦闘力が一番高いのは村長。一撃の威力もだが立ち回りも上手いので、戦闘では一番頼りになる人だ。いや、戦闘以外でも滅茶苦茶頼りにしてしまっているけど……。
とにかく冷静なので、様々なところで助言をしてくれる保護者枠である。
カラクルさんはサポート兼中距離攻撃担当。戦闘能力は低いが、アイテムをタイムロスなしでポンポン出せるのは強い。使うアイテムも増えてきたので、私達の回復、敵への状態異常づけ、ナイフ投げによる中距離攻撃など戦闘での役割も多くなってきた。彼女に回復を任せれば私達は突っ込んで攻撃するだけなので、今後も頼りにしています。
私はというと村長と同じく前衛担当である。村長よりも攻撃力は低いし、カラクルさんみたいな特殊能力はない普通の戦闘力なのだが、このパーティのリーダーなので、戦闘時は周りをよく見て支持を出すのが私の役目。パーティの人数も増えたことだし、もっとしっかりせねば。
マルスは……まあ、まだ子供なので今後に期待だ。熱線も安定して出せるようになってきたが、まだ糸みたいなビームしかでないのだ。ただ遠距離から攻撃できるのはいいし、ダメージもそんなにないが、熱線というだけあって当たると熱いのか、相手は怯むので足止めができる。
いつもは私の近くにいるが戦闘時はカラクルさんと後衛にいてもらうことにする。
そしてアリエスはさっき言った通り。盾兼足なので前衛だ。
だいぶ完成したパーティになってきたのではないだろうか?
なので次に用意したいのは装備だ。私の装備強化もだが、召喚した仲間も装備を変えることができるという情報を小耳にはさんだのだ。
イベントに向けて装備を揃えたいので、こうして報酬の多そうなクエストを探しているのだ。
「この中だと〈赤人参の収集〉が一番高いんだよなぁ……。」
赤人参。例のマンドレイクの近くにしか生えない高級人参だ。マンドレイクの叫びで死にまくったのは記憶に新しい。が確かに稼げるクエストではある。
でもまたあの地獄のマンドレイク周回をしたくない、思い出すだけで空耳であの叫び声が聞こえるようだ……。それに戦闘でもないしね。
そんな事を考えていると目の前で別のプレイヤーが赤人参のクエストの紙を死んだ目で破っていった。報酬凄く良いしやっぱり人気のあるクエストなんだろうな……。
「あの人、また赤人参クエやってる……。」「もう何回目だよ。」「ベテラン赤人参農家……。」
…………周りの人に覚えられるほど赤人参のクエを? 彼は一体何を思って赤人参を抜いているのだろうか……。
気を取り直して、ここは報酬がそんなにないけど戦闘周回の牛、ウサギ、野犬のドロップ集めがいいだろうか?
因みに私はよく牛と戦闘をしているが王都周辺には他にもウサギ、野犬がでるし、叫びの森には鳥、リス、キツネがいる。一番図体がデカい牛が戦いやすいので、牛ばかりと戦闘しているのだ。
仕方なく牛の角収集のクエストを受けようとすると。
「新しいクエストがでました、貼りまーす。」
新しいパンが焼けましたー。くらいの軽さで、クエスト屋の職員は掲示板に新しいクエストを貼っていった。
その中で一際目を引くクエスト、つまり報酬の高いクエストが見えた。
私は内容も確認せず、紙を剥ぎ取る。こういうのは早い者勝ちだ、掲示板に貼られた状態でのんびり見ていたらとられてしまう。
何何? 内容は〈妻の大切な物を探してほしい〉。妻が落し物をして塞ぎ込んでしまった、何とか見つけ出してほしい。とのことだ。依頼者はフォード侯爵、貴族だ。
探し物クエストだ、しかし報酬はなんと一〇〇〇〇ゴルド。難易度が高いのか、依頼者が貴族ゆえなのかはわからないが、他のクエストと比べると段違いに良い報酬だ。
「受けてみようか?」
「ぴぴ?」
「王都は広いけど、皆を召喚して手分けして探せば見つかるのも早いと思うんだ。」
クエスト屋に紙を持って行くと、フォード侯爵の屋敷で詳しいことを聞く様に言われた。
「フォード侯爵家は貴族なので、職員が案内しますね。」
一人で行くと不審者と間違われる危険性があるらしい。貴族って怖い。