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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
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4.羊小屋のあんぱん

 「貴女の拠点、羊小屋でいいですか?」


 「えっ?」


 羊小屋!?


 「いいです!」


 「いいんですか!?」


 拠点登録できるなら、何処でもいいです。


 「で、でも、羊小屋は汚いですし、臭いですし、羊でいっぱいで寝る所もありませんよ。」


 「それなら、羊の上に乗って寝ま……え? ダメ? じゃあ、布と紐でハンモックを作って寝ます。それでもダメだったら、隅っこで膝抱えて寝ますよ! 汚れは掃除しますし、臭いは……何とかなります!」


 何かで見た羊布団は却下されたが、ゲームの中なら寝づらいとこでも寝れるでしょ。汚れはゲーム内だしまぁ……。臭いは嗅覚シャットアウトとかあったっけ? とにかく、ゲーム内睡眠より拠点だ!拠点登録!


 「村長、ここまで言ってますしいいじゃないですか〜。それに彼女はこの世界に来たばかりで、右も左もわからないんですよ。放っておいたら死んでしまいます。」


 「ううむ。……………………仕方ないな。ただここは、羊男(ゴートマン)の種族が住む村です。人間と触れ合ったことのある村人は少ないから、ほとんどの者は当分は貴女を警戒して近寄らないだろう。カラクルや私の家に泊まらせるのも近くの者が不安がるだろうから、本当に羊小屋で暮らしてもらうことになりますが、本当に良いのですか?」


 「いいです!!」


 渋々だったが、何とか許可をもらえたようだ。

 やっとゲームが始められる〜!


 「…………わかりました。羊小屋に案内するので、着いてきてください。」


 「はい!」




◇◇◇




 「おはよー。」


 メェー! メェェ!


 ログイン後の挨拶に返ってくるのは、羊の鳴き声。初めてこの村に来てから何日経っただろう。


 あの後私は無事に羊小屋を拠点登録することができた。ゲーム内睡眠は一瞬で済むから問題なかったが、臭いはシャットアウトできなくて、リアルよりかは控えめだけど獣臭はしたし、汚れもついたので、睡眠後やログイン後は、水浴びをするのが日課になってしまった。

 どうやら汚れは一種のデバフだったらしく、放っておくとNPCの好感度が下がってしまうようだった。一回汚れを放置していたら、村人にドン引かれた。

 あれだ、羊のヨダレとかウ◯コとかつけた人間と仲良くしたいか? …………反省してます。


 井戸から組み上げた水を装備の上からザブザブかけるだけで、汚れが落ちるのでデバフ解除としては楽なもんである。

 その後は小屋から羊達を出して草を食べさせる。その間に小屋を掃除する。終わるともう一回水浴びをしたら、カラクルさんの家に向かう。


 「おはよう、あんぱんちゃん。今日も元気ねぇ。」


 「おかえり! 異世界ではゆっくりできたか?」


 「おはようございます! たっぷり休んだので、今日は村の仕事しますね!」


 道中で羊男の村人達に話しかけられる。何日かこの村で生活していると、初めの警戒ぶりが嘘の様に仲良くなれた。今じゃ羊男のおばちゃんも、青年も普通に挨拶する仲だ。(男でも女でも羊男(ゴートマン)である。羊男は種族名だそうだ。)

 ちなみにログアウトは異世界に帰っているという設定になっている。


 「おはよう、カラクルさん!」


 「おはよう、あんぱんちゃん。朝ごはんできてるわよ。」


 チーズにパンにスープとシンプルな食事が食卓に並んでいる。ゲーム食事でお腹が膨らむことはないが味はあるので、食べるのが好きな人には嬉しい仕様である。


 お昼のお弁当に羊の肉と乳でできたベーコンとチーズのサンドイッチとデザートのオレンジを貰って、また羊達の元に戻る。

 羊男が羊を喰ってるとか、突っ込んではいけない。私は羊肉がでた時点でカラクルさんに聞いてしまったが。彼女によると羊と羊男は違う種類らしい。人間でいうと、猿と人間は違う種類でしょってことみたいだ。

 日本人は食べないけど、外国では普通にあるらしいし、猿料理……。


 戻ると羊を柵からだして、村の周りを草を食べさせながら歩かせ、羊が群れから逸れないように注意しながら小屋まで誘導する。

 夜になるとカラクルさんの家に行き夕食を食べて、小屋に帰り寝る。



 …………………………うん。羊飼いの一日か?



 何故私が羊飼いの真似事をしているかというと、簡単に言うと村人の好感度上げのためだ。

 秘密の村にやってきた人間に皆んな警戒してしまい、親切にしてくれるのはカラクルさんだけだった。警戒されている状態だと物も売ってくれないので、装備も整えられない。

 カラクルさんに全てを頼るわけにもいかないので、住まわせてもらっているからという理由で、仕事を手伝うと申し出たところ、羊のお世話を任されたのだ。

 そうすると、村の一員みたいな雰囲気になったのか、村人の好感度が上がってきて、あちらから話しかけてくれたりする様になったのだ。ちなみに羊の好感度も上がっている。


 住まわしてもらっているし、仕事をくれてるし、すごい感謝しているんだけど、羊飼いのほのぼの生活ゲームみたいになっている。

 そういうゲームも嫌いじゃないんだけど、このゲームでやることじゃないっていうか……。そろそろオカルトに会いたいっていうか……。いや、羊男達はオカルト存在だけど、何日か生活してるとただの羊頭の人なんだよね……。

 明日村長に相談するかぁ……。




◇◇◇




 「そういえば、貴女星の探検家でしたね。…………このまま羊飼いになりませんか?」


 「いやいや、星の探検家なんで! 探検させてください!」


 「ふむ、貴女が羊達の面倒を見てくれると、他の仕事が捗るので助かりますし、村人達ももう貴女を村の一員と思っていますよ。」


 ………………。


 「カラクルなんか、娘みたいに可愛がっていますし。」


 ………………………。


 「羊達も懐いていますし。」


 …………………………………。


 「私も貴女のことは信頼できる方だと思ってますよ。」


 ………………………………………………。




 うわ〜〜、嬉し〜〜〜〜〜。


 初日はカラクルさんと村長以外は話しかけても、無視するか怖がられるかのどっちかで、寂しかったんだけど、こんな風に言ってくれるくらい好感度上がったんだと思うと嬉しい〜〜〜。

 これが別のゲームだったらなぁ、生活系ゲームも大好きだから、放牧物語とか羊の森なんてゲームだったら、迷わず村で暮らしてたんだけどなぁ。


 このゲームオカルト体験するゲームだか…………いや、「Occult-Life-Online」はオカルト生活系ゲームだった。オカルト生活ゲームってこういうこと? じゃあ、このままでもいいのかも……? いやでもなぁ……。……………。



 でもなぁ…………、




 「やっぱり、この世界を沢山見たいので……。」


 悩みに悩み悩んで、羊飼いになることは断念した。やっぱり他のオカルトを見に行きたいのだ。

 いつかはあのメガロドンをもう一回見たいし。


 「そうですか……………。しょうがないですね、星の探検家は星の秘密を記録することが仕事ですし。」


 「すいません。でも、当分はこの村を拠点に探検しますので、まだまだお世話になります。」


 まだスキルもゼロだし、戦闘を続ける中で覚えれるだろうか。それに行ける所も広げていきたい。


 「わかりました。では、村人達にも伝えておくので、しっかり装備とアイテムを揃えてから、活動してください。」


 「ありがとうございます!」


 まずは装備を整えたい。初期所持金三〇〇〇ゴルドでどれだけ買えるかな。森を抜けるための虫除けハーブも欲しいし、空腹デバフのために食料も買いたい。

 三〇〇〇ゴルドで足りるのか? そもそも買い物したことないから物価がよくわからない……。


 とりあえず、カラクルさんに聞きに行こうかな。



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