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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
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32.可愛い

 タコ型だ!

 火星人は私の期待通り、タコ型だったのだ!

 あまりの嬉しさに頭の中で勝利のファンファーレが響く。


「ふかしてしまってなら しかたがありません ここでたおしてください」


 「まだ産まれたばかりで的は小さいですが力は弱そうですし、攻撃が当たれば一撃で倒せそうですね。」


 「そんな村長、まだわからないわ。油断しないでください。」


 カラクルさん達が何か言っているが、私は産まれたばかりの火星人に目が釘づけだ。

 四センチほどの卵に触手の足が生えただけなので、大きさは小さい。十五センチくらいか? 小さい。手に乗せられそう。手乗り火星人……。

 うまく力を入れられないのか頭が重いのか、ぐらんぐらんと頭が傾いて、触手がバランスをとろうとちょこちょこ動いている。

 そしてキューだかプーだかわからない鳴き声を発している。口は見た感じ見当たらないので、タコと同じで体の下側にあり見えないのか、そもそも口がないか。火星人はあんな見た目なので、固形物は食べずに触手でエネルギーを吸収してるみたいな説も見たことがある。

 目はまだ完全に開いていないようだ、体に纏わりついた粘液が邪魔しているのだろうか、薄く開けた目をしぱしぱと何回も瞬きしている。


 つまり何が言いたいかって? 可愛い。その一言に尽きる。


 私は常々思っていたのだ。

 最近の宇宙人は可愛げがないと。宇宙人に可愛げを求めてどうすると言われるかもしれないが、どんなジャンルにも可愛さは多少必要だと思う。○○界のアイドル的な。

 グレイとかエイリアンとかプレデターとか好きだけど、そいつらはホラー系なのだ。可愛くない、全く持って可愛くない。

 それに比べればタコ型宇宙人は、リアルに描かなければ丸っこいフォルムで可愛いし、デフォルメされることも多く宇宙人界のアイドルと呼んでいい存在なのでは?


 「あんぱん? 行きますよ。」


 「まず、私が毒薬を投げるわね。」


 声をかけられて、二人を見ると何故か戦闘態勢をとっている。しかもカラクルさんに至っては、毒薬を火星人に向かって振りかぶっているではないか。


 「え。ちょちょちょっ! ストップ! ストップ! ストーーーップ!!」


 「え? え?」


 叫んで静止した私にカラクルさんは、毒薬を投げるのを振りかぶった体制のまま停止してくれたが、なんで? って顔をしていた。何でじゃないよ……。


 「だってかわ……んん! まだ産まれたばかりじゃないですか。敵って決まったわけじゃないし、直ぐに倒すんじゃなくてコミュニケーションをとれませんかね?」


 「にんげん! なにいってるですか!」


 エルバッキーが焦った様子でにゃんにゃん言っているが、そもそもエルバッキーを完全に信用していいのか? という思いが今更ながら湧いてきた。

 エルバッキーは平和を愛し宇宙人を監視する存在らしいが、それはエルバッキーが言っているだけである。エルバッキーが火星人と敵対しているだけかもしれない。

 私の目が疑惑に染まっているのがわかったのだろう、エルバッキーはマジかよこいつ、みたいな目をしながら私を説得しようとする。


 「にんげん かせいじんがにんげんに きがいをくわえるというのは ほんとうです かれらのしょくじは ちです」


 「へぇ……、まあ血もエネルギーみたいなもんだしね。」


 「…………ほおっておけば このまちの にんげんがぎせいに なるでしょう おおきくなれば ちをすうりょうも ふえます」


 ぶっちゃけて言うと、この火星人の子供を仲間にできないかなー、なんて思っているのだ。

 いや、ごめん。エルバッキーの信用がどうのこうの言ったが、ただ単に一目ぼれしたのだ。見るまで倒す気満々だったんだけど、仲間にしたい欲が出てしまったのだ。

 食糧問題は私が血をやればいいし、多分このゲーム内の血が吸われるって体力が減るだけだと思う。多分。


 「ためしにさ……、飼いならせないか試してみない? ほら産まれたてだし、すりこみとかないかな?」


 それにこうして話し込んでいても火星人は攻撃してこない、相変わらずゆらゆら揺れているだけである。

 ええーという顔をしている三人を尻目に、ゆっくりと火星人に近づいていく。目はもうぱっちりと開かれていて、黒くてまん丸なつぶらな目をしていた。


 「よーしよし……、いい子いい子……。」


 驚かせないように声をかけながら、ゆっくりと手を差し出す。


 「ぴ きゅ ?」


 差し出した手に火星人は触手を一本、ゆっくりと伸ばしてくる。

 いけるのでは? 異星間交流に何だかドキドキしてきた。


 「ぴぃ」


 「いたっ」


 触手は私の指先にグサッと刺さった。視界にある体力を見ると減っているので血を吸われたのだろう。


 「大丈夫!?」


 カラクルさんが心配して駆け寄ってくるが、声が出てしまっただけでそんなに痛くない。体力も減ったのはほんのちょっとだけだった。


 火星人はそれで満足したのか、地面にへちょっと伸びて寝始めた。潰れたクラゲみたいで可愛い。

 うーん、警戒心も何もない生物だ。卵の時にエルバッキーに始末されなくても、勝手に死んでいくのでは? と思わせるような無防備さだった。


 「どう? 連れて帰っていいですかね?」


 「村に連れて帰るのは……、まだ判断できませんね。羊や住人を襲っても困りますし。」


 と村長は苦い顔。村長の立場的にはしょうがないだろう。


 「じゃあ、私が連れて歩きますよ。安全がわかるまでちゃんとお世話しますから。」


 「……しっかり見極めるんですよ。もし貴女に危害を加えるようなら始末しますからね。」


 「ご飯も血じゃなくて別のを食べれないかしらね?」


 村長とカラクルさんは何だかんだと言いつつ、火星人を飼うことに同意してくれた。村長は物騒なこと言っているけど……。

 さてエルバッキーの反応は?


 「ううむ わたしはうちゅうのへいわをあいする あるたーごぞ・えるばっきー・むにゅーだ すきでしまつしているわけではない おたがいにてをとりあえるのならば いろんはありません」


 エルバッキーが火星人の卵を潰しているのは、争いの種を事前に回収しているだけで、つまり平和に仲良くできるのならいいってことね。

 あと関係ないけど宇宙の平和を愛するってウル○ラマンみたいね。


 というわけでお許しも出たので、火星人を飼うことにした。

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