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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
33/49

31.失敗

 とにかく動かないと。カウントダウンは始まっている。


 「ふかすると たいへんなことになります はやくみつけて もってきてください」


 エルバッキーのそんな言葉を背中に私達は走り出した。

 出ているアイコンは七つ。残り時間の短いものを目指す。


 曲がって、階段を上がって、坂を下って。行き止まりもあるし、細い抜け道も多い。卵を指すアイコンはすべて裏路地を示していた。裏路地を走り回り卵を回収していくが、結構時間がかかっている。

 卵の場所を示すアイコンは出ているが、道筋は示してくれないので自分で道筋を見つけなくてはいけないのだが、この街はメイン通りだけ歩いていれば迷うことはないが、裏路地に入ると迷路みたいに道が滅茶苦茶だ。

 アイコンの所についたと思ったら壁の向こうだったりとか、近づいていると思ったら別の道につながっていたのか、どんどん離れて行ったりとか迷いまくってしまった。

 この街は適当に造られたに違いない。それかプレイヤーを迷わすためのいじわる設計なのだ、くそぅ。

 

 一応カウントダウンが短いものは見つかりやすいところや近い場所にあったから、タイムオーバーにはならなかったし、私が卵を手に入れるとその卵のカウントダウンは止まるので、とりあえず見つけるだけでいいことに安心した。エルバッキーの所に持って行く時間も含まれてのカウントダウンだったら絶対間に合わなかった。


 「あ、あと一つ……。」


 ぜいぜいと息をつきながら呟く。

 目に映るアイコンは五つだが、そのうちの四つは二つずつ固まって動いている。カラクルさんと村長だ。

 私が召喚したからか、二人にも卵のアイコンは見えていたので、三手に別れて探すことにしたのだ。ただそれぞれの居場所がわかるわけではないので、私達は動かないアイコンを目指して走り回っているわけだ。

 あと一つの残り時間はあと一分。アイコンは近くにない。


 ………無理だよ、これ。とにかく私は届かない、全力で走ってもどうせ迷いまくって、辿り着かないのがオチだ。村長とカラクルさんは間に合うだろうか?


 とりあえず動いているアイコンは動いていないアイコンへ向かって動いてるので、私も向かう。もしかしたら奇跡的に間に合うかもしれないので。


 間に合わなかった場合どうなるのだろうか。エルバッキーは孵化する前に持ってきてと言っていたから、普通に考えるなら卵の孵化だ。

 孵化したらすぐに動き出して、人間を襲ったりするのだろうか? 確か映画の『エイリアン』もそんな感じだったな。卵から孵ると人に襲いかかって、子供を植え付けて、ある程度成長すると中から人体を食い破って出てくるんだっけ? あのシリーズ怖いけど好きなんだよな。


 映画のエイリアンは全く別の生き物で会話も通じず、ただ襲い掛かってくるだけだったが、火星人はどうなんだ。火星人は確か頭がいい。見た目がタコだがそれは頭がいいから脳も大きいと考えられていたからだし、火星は重力が小さいから細い手足で大きい頭を支えているっていう説だった。

 ……いやタコ型と決まったわけじゃないんだった。でも、火星人と言ったらタコ型なのだ、私の中では。

 今の宇宙人はヒューマノイド型、アニマル型、昆虫型、植物型とバリエーションに富んでいる。タコ型はむしろ少ないほうなのだ。

 イケメンか美少女型だったらどうしよう。そういうのも嫌いじゃないが、このゲームにそれを求めてプレイしている人は少ないだろう。宇宙人ファンに殴られるぞ。私もクレームぐらいは入れるかもしれない。


 ……話がそれた。とにかく火星人はタコ型であれそうじゃないであれ、頭がいいのだ。大体宇宙『人』とついているものは高度な文明を持っているから賢いだろうと思われている。映画の『エイリアン』はアレだ、宇宙怪物とかって分類で獰猛な獣みたいなもんだ。

 だからもしかしたら会話できるかもしれない。そしたらクエストとかまた出たりして……、あっちが高度すぎてこっちを原始人扱いされたり、本気で侵略を狙っているなら無理だけど。



 さて、火星人に思いをはせながらも走っていたが、やっぱりカウントダウンには間に合わなかった。

 村長はやっぱり速くて、私より先に辿り着いていたけど見つけた途端にカウントゼロになってしまったそうだ。

 村長で駄目ならこのクエスト達成できる人いる? 召喚できる人をめっちゃ増やせばできるだろうけど。

 その後カラクルさんも合流し、回収できた卵を受け取りアイテムボックスにしまう。


 「ごめんね、間に合わなかったわ。」


 「少々街の複雑さに迷わされましたね……、もう少しだったのですが。」


 しょんぼりしている二人を見ると罪悪感が……。私は少し諦め気味だったのでそんなに悔しくないのだ、今回のことは。


 「いえ、しょうがないですって! この街迷路みたいだし、私も迷いまくりましたし!」


 三人で謝りあっているとエルバッキーが目の前に現れる。


 「にんげん だめだったようですね」


 「あ、うーん……。ごめん、あと一個だったんだけど。」


 「まにあわなかったので あれは ふかします」


 地面に落ちている卵を見ると、触手がピロピロと動いている。さっきエルバッキーが潰した卵と同じ動きだ。

 そしてツルツルとしていた白い塊部分がぼこぼこと波打つと、一本の触手が生えている付け根から新しい触手がずりゅずりゅと音を立てて生え増えていく。

 触手の先を地面につけると、ぐぐぐっと力を入れて、最後に塊部分を持ち上げるようにして立ち上がった。水の中にいるタコが垂直にたったらあんな感じだろうと思わせる見た目をしていた。


 「ぴ きゅーーン」


 奇妙な甲高い産声を上げて火星人は誕生した。

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