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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
29/49

28.根気が必要

 「マンドレイクの安全な抜き方ですか?」


 リスポーンした後私はジェラさんに泣きついた。

 平和なクエストだと思っていたらとんでもない罠が隠されていたものだ。

 手に入れた赤人参は四本。ついでにマンドレイクも一個アイテム欄に入ってた。


 マンドレイク。

 魔法の材料に毎度お馴染みのアレである。見た目は人参や大根に似ていて、先端は足が生えているように二又に分かれていて、その足で歩き回るとも言われている。

 引っこ抜くと物凄い叫び声をあげることが有名で、この声を聞いた人は正気を失うと言われている。

 今回は即死のデストラップだったようだ。


 「……なるほど赤人参のクエストでしたか。でしたらこれを。」


 ジェラさんが目の前に出してくれたのはフワフワの耳当てだった。


 「え、耳当てしてれば大丈夫なんですか……。」


 確かに某魔法学校の話でも耳当てしながらマンドレイク抜いていた描写があったっけ。

 けど、ジェラさんは目をそらして気まずそうに言う。


 「これは気休めです……。実は耳当てをしていてもマンドレイクの叫びが耳当てを通り越して届いてしまうことがあるんです。赤人参を抜くかマンドレイクを抜くか、運次第なんですよね。」


 耳当てはもし万が一マンドレイクを引き抜いても、運が良ければ死なない運を僅かにあげるためのアイテムらしい。

 マンドレイク抜きってそんなに運ゲーなの? NPCの人達は赤人参抜くときどうしていたの?

 私の顔が引きつっているのを見たジェラさんは詳しい話をしてくれた。


 「赤人参抜きは昔は死刑の方法として用いられていました。」


 「へ」


 「赤人参は大変美味しい人参なのですが、マンドレイクの近くにしかならないという厄介な植物でして……。昔は、今もですけど、超高級食材として扱われていました。しかし間違えてマンドレイクを抜くと死んでしまいますので、どうしても食べたいグルメな人間が採りに行って死んだりしていました。」


 赤人参やば。死んでも食べたいとか大昔のふぐみたい。


 「当時の王様は困りました。赤人参は食べたいけど、人の命には代えられない……、そうだ! もう死ぬ罪人に採らせればいいんだ! 赤人参が採れたらラッキー。マンドレイクを抜いて罪人が死ねば、死刑執行人の手間が省かれるよね。と考えて、赤人参抜きは死刑の方法として用いられていました。」


 うん……、何というか。王様そんなに赤人参食べたかったの? と聞きたい。赤人参食べるときにこれを抜いた人死んだのかなーって思っちゃうじゃん……。


 「あ、勿論今はそんな事してませんよ! 何十年か前に人命軽視だってことで取りやめになったんです。……不気味な噂もでたみたいで、赤人参の赤は罪人の血の色だ。とかマンドレイクの叫びは罪人の死に際の断末魔だとか。それであの森は叫びの森ってつけられたんです。」


 「そうなんですね。じゃあ赤人参はそこから全然食べられなくなったんですか?」


 「いえ……、今度は一攫千金を狙う人がでてきてですね……。」


 あぁ……、マンドレイクの被害者は減らなかったのね。

 流通がなくなって超超高級品になった赤人参は高かったんだろうな……。

 でも今は三本一〇〇〇ゴルドで売れるくらい値下がりしたのか。


 「星の探検家さんがこの世界に来てから、赤人参採りは再開されたんです。星の探検家さんは死なないのでその特性を利用して、赤人参を大量に手に入れることができますし、マンドレイクも薬の材料として採れますしね。」


 「あーなるほど。」


 確かに、これは死なない星の探検家向きだ。お金が欲しい序盤は皆このクエストを受けるだろう。ロストして宿屋に戻っても宿屋代は三〇ゴルド。赤人参の報酬に比べれば屁でもない。宿屋以外の拠点を手に入れたプレイヤーはもっとラッキーだろう。


 仕方ない。ここは腹をくくって赤人参抜きでお金を稼ぎまくるか。


 「ありがとうございました。この耳当て、お借りしますね。」


 「はい。マンドレイクが取れた場合は是非商人ギルドにお売りくださいね。」


 私は耳当てを手に叫びの森に向かうのであった。




◇◇◇




 「キキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 赤人参合計七本。マンドレイク三個目。

 ▽ プレイヤーがロストしました。拠点に戻ります。



 「キキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 赤人参合計十二本。マンドレイク五個目。

 ▽ プレイヤーがロストしました。拠点に戻ります。



 「キキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 赤人参合計十七本。マンドレイク九個目。

 ▽ プレイヤーがロストしました。拠点に戻ります。



 「キキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 赤人参合計二十本。マンドレイク十個目。

 ▽ プレイヤーがロストしました。拠点に戻ります。



  「キキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」


 赤人参合計二十七本。マンドレイク十四個目。

 ▽ プレイヤーがロストしました。拠点に戻ります。



 これで九〇〇〇ゴルドの稼ぎ。マンドレイクも十四個で九八〇〇ゴルドで買い取ってもらった。


 「お疲れ様でした。」


 本当にね…………。最終的にはマンドレイクの方が高値で売れたし。

 でもこれで色々買える!


 叫びの森に行く途中でちょこちょこ倒して集めていた牛の角十五本と一角獣の角を加工して、薬屋で毒薬、痺れ薬、睡眠薬を二十個づつ買った。ついでに回復薬も補充。

 結構かかったが、まだ二万ゴルド以上は残っている。だいぶ余裕が出てきた。

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