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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
28/49

27.そううまくはいかない

 「ということでこれをどうぞ。」


 「これって……?」


 カラクルさんに手渡したのは牛の角だ。しかしただの牛の角ではない。

 角の先は削ってさらに鋭く尖らせて、すぐに壊れないように鉄でコーティングしてある。

 ただのドロップ品が立派にダメージを与えられる武器になった。名前を付けるとしたら牛のナイフか? 何かを切ることはできないが、刺すぐらいならできる。

 これを投げつける役なら戦闘に参加できるだろう。中距離サポート役といったところか?


 「よかったですね。これなら戦闘に参加できますよ。」


 「本当に!? ありがと~、あんぱんちゃん!」


 「喜んでもらえてよかったですよ!」


 本当によかった。作れて。

 あの後、私は王都に移動して、商人ギルドのジェラさんに相談したのだ。

 魔法アイテムじゃなくても投げつけて攻撃できるアイテム、投げナイフ的なものがあればいいんじゃないかと思ったのだ。

 だが投げナイフは売っていたが人気はなかった、与えるダメージが少ないのだ。初期装備のナイフより小さく軽いので投げやすいが、ダメージも小さいというものだった。

 ただのナイフを沢山買うというのも考えたが、それも投げても大してダメージにならないし、金もかかると言われた。

 どうしても投擲に拘るのかと聞かれ、できればと返すと、私の手持ちにもある牛の角の加工を勧められた。角ならば加工すれば立派な武器になるし、加工代だけなので沢山武器を買うよりかは安く済むとのことだった。

 それからはあれよあれよと話が進み。牛の角のナイフが出来上がったのだ。

 ただ持っていた牛の角は四本。心もとないので牛狩りをしなきゃならないし、加工代でお金も減る。

 まあでも、牛は王都の周りにたくさんいるし、お金はクエストで稼げるし、こんだけ喜んでくれればよかったと思うのだ。



 「ということでしばらくは狩り&クエスト消化です。」


 のんびり羊飼い生活は見送って、王都で動くことになった。


 クエスト掲示板で報酬のいいクエストを探すと気になるクエストがあった。



 〈赤人参の収集〉

 野生でしかできない赤人参を集めてほしい。

 王都の東にある叫びの森に生えているのでとってきてくれ。

 報酬:赤人参三本につき一〇〇〇ゴルド



 結構報酬がいい。人参の収集なのに。

 赤人参は普通のオレンジの人参と違って真っ赤な人参だそうだ。人の畑では育てられず、完全野生で叫びの森でしか見つからない貴重な人参だそうだ。

 滋養強壮作用があり、攻撃力UPの効果のある食事や薬の材料になるとか。


 このクエストをやってみようかな。加工代もそんなに高くないけど沢山加工すればそれなりの金額にはなるから、高いクエストを受けておきたい。牛のナイフは余裕を持たせて三十本くらい……本当は百本くらい欲しいけど牛の角を百本集めるのは大変だから、三十本くらい欲しい。三十本も大変だろうけど。


 というわけで赤人参のクエストを受けることにした。

 掲示板のクエストが書かれた紙を剥がし取り、広場の近くにあるクエスト屋に持って行く。

 クエスト屋は名前の通り、そのまんまクエストを出したい街の人とクエストを受けたい星の探検家の間に立つ仲介屋だ。

 一応クエスト屋は国王の許可を得てある立派な職業なので、掲示板に張ってあるクエストはクエスト屋を通さずに受けられない設定となっているらしい。


 「すいません。このクエストでお願いします。」


 「はい。………了解しました。クエスト完了しましたら、またこちらにいらしてください。頑張ってくださいね。」


 よし、平原で牛を狩りながら叫びの森に行こう!




◇◇◇




 しかし叫びの森って不吉な名前だ。


 平原を越え森の入り口にやってきた私はそう思った。

 森の中はそこまで暗くなさそうだ。木々が生い茂っているが、道はあるし木の隙間から日が差し込んでいて意外と明るい。

 なんでこんな名前なんだか。

 この森を抜けると初期スタートで選べる『のどかな山村』と『賑やかな港町』に行けるらしい。北に進むと山村に、そのまま真っ直ぐ東に進むと港町だ。

 牛の角が集め終わったらぜひ行きたい。でもリュウから聞いた装飾の街のエイリアンの胎児も気になるし、王都の南にあるナイタカ湖にも何かありそうで、行きたいところが沢山だ。


 とりあえず、クエストをとっとと終わらせてから考えようと、森の中に足を踏み入れる。

 森の中はチチチだとかキィーだとか動物の声が響いている。鳥だろうか、それともここにもオカルトがいるのだろうか?


 その時木の後ろからぴょん! とウサギが飛び出してきた。

 ただのエネミーかとも思ったが、よく見るとそのウサギには立派な角が生えている。

 ハヤブサから聞いていたジャッカロープではない。同じ角ウサギだが、ジャッカロープは鹿のような角で、今出てきたウサギは長い一本角だ。

 ウサギの上に出ている名前は▽アルミラージとでている。


 アルミラージは某ゲームの敵モンスターで出てくることで有名だが、元はアレクサンドロス大王物語の竜退治の話に出てきたとされる一角ウサギだ。

 アルミラージは凶暴で、あらゆる動物はアルミラージの姿を見ると逃げ出してしまうという。


 目の前にいるアルミラージは凶暴そうには見えないが、体は普通のウサギよりも大きい。小型犬くらいあるだろうか。

 とりあえず敵エネミーのようだし戦闘だ。気を付けるべきはあの一本角だ、先は鋭く長い。アレに刺されたら大ダメージだと思う。

 がそこまで心配はしていない。一角獣の戦い方は有名だ。


 アルミラージは私を見るとブウブウと音を立てて威嚇する。私は後ろにそれがあることを確認して動かず待つとアルミラージは丸まったような姿勢になり、後ろ足にグッと力を入れて私を角で一突きにしようと飛んできた!


 結構速い! と思いつつも飛んで攻撃してくることはわかっていたのでギリギリでかわす。

 これで戦闘は終わり。


 私がさっきまで立っていた所を見ると、木にぶっすりと角が刺さって抜けなくなったアルミラージがもがいていた。

 昔何かの物語で一角獣は、角が木に刺さっているうちに倒せばいいと見たことがあったので、実践してみたがうまくいったようだ。あとはホーンでアルミラージを二三回叩くと、ドロップ品を残して消えていった。

 ドロップ品は≪一角獣の角≫。これも加工して投擲武器にできそう。


 運のいいことに赤人参もすぐ見つかった。道を外れた茂みに人参の葉のようなものがあり、葉の上には▽のアイコンが浮かんでいる。

 一本抜いてみると▽赤人参とでたので、間違いない。

 人参は密集して十本くらい埋まっているのでこれで、三〇〇〇ゴルドの儲けだ。

 ルンルン気分で引き抜いていく、だが五本目を引き抜いた時


 人参が叫んだ。



 「キキャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」



 死っ―――――――――


 ▽ プレイヤーがロストしました。拠点に戻ります。


 叫びの森ってこういうことね…………。

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