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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
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2.ロストしまくり死にまくり

 メガロドン。

 約二千三百万年前〜三百六十万年前まで、生息していたという絶滅種の鮫である。

 史上最大級の捕食魚類とされていて、全長は約十メートルから十八メートル。体重は最大六十五トンあったとされている。

 恐ろしいのは咬合力で、十八万ニュートンもあり、これはティラノサウルスの六〜十倍だったらしい。ちなみに人間は千三百ニュートンくらい。

 とても人気の古代生物で映画化もされたことがある。


 さて、そんな恐ろしい怪物に出会ってしまった私はというと……。


 「心臓止まるかと思った……。」


 ゲームを一時中断しホームに戻ってきていた。


 滅茶苦茶怖かった。逃げることもできなかった、エンカウントした途端死んだ、あんなん勝てるか。

 ゲームとわかっていても本当に死んだかと思った。プレイNGがでるのも納得できる。


 でも、このゲームをやめるっていう選択肢はなかった。メガロドンという現代では見れない古代生物に会えたことは正直嬉しいし、さっきは口開けた姿しか見えなかったから、今度は全長丸々見たい。


 そうと決まれば再プレイだ! ロストしたので、またランダムでスタート地点が選ばれる。今度は死なない様に頑張ろう。




◇◇◇




 「ガルルルルルッ ガルァッ!」


 「ぐああぁああぁぁ!」


 二回目。なんかデカい狼に噛みつかれる。ロスト。




 「nngn! nngn! ggknd! nizuwtr,nuwsrbr!」


 「うわぁあぁああぁん!」


 三回目。なんか宇宙人に襲われる。ロスト。




 「ギャオオオオ!」


 「ああああああぁぁぁぁ!」


 四回目。ドラゴンぽいのに火を吹かれる。ロスト。




 「まってまってまってまってまってまってまって」


 「〜〜〜〜〜〜〜〜!」


 五回目。背のデカい女に追われて、逃げるも捕まる。ロスト。




 「………………。」


 ゲームを一時中断して、ホームで一休みする。


 ゲームが始まらない……! めっちゃ死ぬ。


 これは一回調べてみるかな。せめて拠点を見つけてから死にたい……。スタート地点ですぐに死んでいるせいでまだ序盤にも入れていないのだ。

 あんまり見ない方だけど、ここは攻略サイトを見てみよう。抜け出したい、このランダムスタートエンドレスロスト状態から……!


 攻略掲示板を開き、私と同じランダムでスタートした人を探してみると結構いた。

 ほとんどの人が私と同じようにすぐにロストしているようだ。

 検証した人によると、ロスト五回目くらいまでは大体死ぬらしい。わざとボス級モンスターの近くがスタート地点として選ばれているのではないか、そして段々生き残る確率は高くなっているのではないか、とのことだった。


 確かにメガロドンはデカさ的にも場所的にも、ボスっぽい。二回目の狼もデカかったし、色味も薄く青色に光る体毛で、伝説の生き物ぽい。

 三回目は宇宙人グレイだろうし、四回目は多分ワイバーン。五回目は幽霊か怪談系都市伝説かな? 


 うーん。生き残る確率は高くなっていってるのか……? 大体直ぐに見つかって追いかけられてるからわからん。

 まぁ、掲示板でも五回目より前に生き残った人はいないみたいだし、六回目からに期待だ。





 「寒っ!!」


 ごうごうと、風の音が耳元で響く。目の前は真っ白で先が全く見えない。

 六回目。雪山スタートみたいです。しかも猛吹雪。

 これで生き残る確率上がってるとか、厳しいなこのゲーム。


 とりあえず歩き出すと、目の端に緑の体力バーがでてきて、少しずつ減っているのがわかる。

 多分寒さでダメージ受けている。初期装備だしね。

 山小屋でもあればいいんだけど。


 とにかく歩く。

 歩く。歩く。歩く。歩く。


 「…………。」


 変化がない……!

 体力バーが半分以下になったが、何も見えないし、聞こえない。

 ボスが近づいた時のあの心臓が早く動く様な不安を煽るBGMも、存在を気づかれた時にでる視界を埋める赤い点滅もないのだ。

 このまま凍死で六回目終わるのか……? 何か一番嫌な死に方だなぁ。と思った時。


 ーーン、…! ワン! ワン!


 犬の鳴き声が聞こえた。

 このゲームにはオカルト生物以外にも普通の動物もエネミーとしている。もしかしたら強くてまたロストするかもしれないが、凍死するよかマシだ。ダメ元で戦ってやる!


 鳴き声に近づきながらも装備を確認する。

 初期武器はナイフ。防具は探検家の服。それだけ。

 ショボイ装備だが、贅沢は言っていられない。やるぞ!

 私はナイフを手にダッと駆け出した。


 「アンタ! こんな吹雪の中、なんて格好でいるんだ!」


 「!!???」





◇◇◇




 「助かりました。本当、死ぬかと思ってたので。」


 山小屋で温かいスープをご馳走してもらいながらお礼を言う。

 この山小屋は猟師のための山小屋で、本来こんな吹雪の時はでないが、あまりにも猟犬が吠えて外に出たがったので、少しでたら私を発見したそうだ。


 「礼ならこいつらに言ってやってくれよ。アンタの気配を感じたのはこいつらだからさ。」


 いい人だ……。

 さっきまで殺されまくっていたので、優しさにジーンとする。白くて大きい犬も私を暖めようとしてくれているのか、ワフワフ鳴きながら足元に身体を寄せてくれる。可愛い。


 このいい人は、ソーンさん。猟師をしているNPCだ。猟犬はサモくん。

 このゲームのNPCは高性能感情AIが一体一体に搭載されており、本当にこの世界で生きている設定をしてあるみたいで、感情がすごくリアルである。


 とにかくこれで、ロストから抜け出せたかな? 確か拠点を登録すれば、今度からロストしてもリスポーン地点が拠点になる。

 さっそくこの山小屋を拠点登録してと……、ん……? できない?


 「あの、ソーンさん。この山小屋って拠点登録できないんですか?」


 「あ、あぁ。アンタ星の探検家だったんだな。拠点登録はもう少し安全な場所じゃないとできないんだよ。」


 拠点登録できる場所はある程度安全な場所か、星の休憩所と呼ばれる不思議な力が湧いている場所じゃないと登録できないそうだ。

 ちなみにNPCには拠点登録は必要ない。というかできない設定だそうで、彼らはこの星に実際に生きているから死んだら、死んだままなのでリスポーンのための拠点登録は意味がないそうだ。


 「ここは少し休憩するための小屋でな。吹雪が止んだら、山の麓の小屋まで行こう。そこなら拠点登録できる筈だ。」


 「ありがとうごさいます。何もかもお世話になりまして……。」


 拠点に出来ないのは残念だけど、光明が見えてきた。体力もスープで回復できたし、防寒着も貸してもらえた。ソーンさんには何か恩返しをしなければ。


 「じゃあ、少し休むといい。吹雪が止んだら起こすよ。」

 

 では、お言葉に甘えて……。



 キラキラと睡眠BGMが流れると視界が暗くなる。



 「おい、アンタ起きろ。吹雪が止んだ、雪はまだ降っているが、今のうちに降りるぞ。」


 なるほど、今のがゲーム内睡眠か。

 さて装備を確認して出発だ。拠点まで行けるといいなぁ。


 外はすっかり明るくなっていた。雪はちらほらと降っているが少しだし、風は吹いていない。ここは曇っているが、麓の方角は太陽の光が雲の切れ間から見えている。


 「よし、行くぞ。ついてきてくれ。」


 サモくんが先導して歩き出す。私とソーンさんは注意深く辺りを見回しながらついていく。


 「ソーンさん、ここら辺はエネミーはでないんですか?」


 周りは静かだ。私達の足音だけが響いている。このエリアはエネミーが出ないのだろうか。


 「……いや、いつもなら雪ウサギとか雪狐とかでるんだがな……、急ごう。」


 ドッ ドッ ドッ ドッ ドッ


 嫌な予感にドキドキしてきた。ここまできてまたランダムスタートはちょっと……。



 ドッドッドッドッドッ



 …………いや、これボスが接近してるBGMだ! 緊張してると分かりづらっ!

 赤い点滅もきたっ! 後ろから地響き音も近づいてくる!


 「ソーンさん! 何かきます!」


 「走れ!!」


 私達は脇目も振らず走り出した。

 捕まりたくない! いい加減ゲームスタートしたい!

 その一心で走っているが、地響き音は大きくなっていく。


 「ゴアアアァアァアアァァア!!」


 雪を撒き散らしながら現れたのは、毛むくじゃらのデカいゴリラのような姿をしていた。奴は四足走行で、こちらに凄い勢いで走ってくる。


 「くそっ、イエティだ! 雪道じゃあいつの方が早いぞ!」


 距離はどんどん詰まっていく。これは厳しいか!?


 「くっ、仕方ない。俺とサモが足止めするから、お前は走れ!」


 えっ! ありがとう!


 とも思ったが、ただのNPCは死ぬとどうなるんだろう? と直ぐに頭に浮かんだ。

 プレイヤーは拠点からリスポーンできるが、NPCは拠点登録できないわけで、それはリスポーン出来ないって意味で……。

 ゲームのキャラクターなんだから、とも思うけど。思い出す。温かいスープとサモくんの暖かさを。


 「……もおぉ! ソーンさんとサモくんがそのまま逃げてください! 私死んでも復活できる星の探検家ですから!」


 止まろうとするソーンさんを押して逃走を促す。たとえNPCだろうが、ここまでリアルな感情してて、しかも恩人となると、見捨てたら寝覚めが悪すぎる。

 私ならまたロストするだけだし! また七回目頑張ればいいだけだし!


 「っしかし!」


 「しかしもかかしもないっ! 私が無駄死になる前に走ってください!」


 「っ!! くそっ、すまん!」


 謝りながら彼と一匹は走っていく。

 私は振り向き、こちらに走ってくるイエティに向かって走る。

 エネミーはエンカウントしたら、こちらを狙ってくるからその間は足止めできる。すぐにロストするだろうから、その間に少しでも逃げてくれるのを祈るしかない!


 「ゴルルル  ルガァ!」


 目の前にイエティが来た。二メートル以上のデカさに、灰色の毛に覆われた筋肉流流な肉体。腕は長く爪は鋭い。


 「〜〜〜っくるなら、こぉい! こちとら死になれとんだ!」


 長い腕がブンッと鞭の様に振るわれる。後ろに飛んで避けようとするが相手の方が速いし、リーチも長いしで当たってしまった。

 途端に体力バーが一気に弾ける。やっぱり一撃死だった。


 「七回目は絶対に生き残ってやる〜〜〜!」



 ▽ プレイヤーがロストしました。ランダムでスタート地点が変わります。





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