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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
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16.憑りつかれる男

 王都は装飾の街と同じく煉瓦造りの建物が並んでいた。違うのは大きさだ。

 道も広いし、建物もでかい。それに賑やかだ。

 入り口から繋がる道の両端には、露天商がずらりと並んでいる。


 新鮮な食材に、装飾品、色んな色の薬もあるし、装備品を売っているところもある。

 見て回りたい気持ちもあるが、また衝動買いしてしまうかもしれないし、余計なお金を使うわけにはいかないので宿屋を探す。


 お上りさん丸出しで見物しながら歩いていると、突然叫び声が聞こえた。


 「があぁああああぁぁぁぁぁ!!!」


 その声は男性でまるで絞り出すような、苦痛に満ちた声だった。


 声の発生源を探そうと辺りを見回すと、一人の男性が首を両手で押さえながら、蹲って苦しんでいた。

 男性の近くには女性プレイヤーが二人立っていたが、彼女たちが原因というわけではなさそうだ。完全に怯えた顔で寄り添いあい、支えあいながら立っている。


 あの人大丈夫か? ともしかして、幽霊騒動か? の心配とワクワクの半々で声をかけることにした。

 苦しんでいる方は喋れそうにないんで、女の子の方に話しかける。


 「あの、大丈夫ですか?」


 女の子たちはハッと我に返ったのか、男から離れて私の近くに寄ってきた。


 「あのあの、私達あの人が話しかけてきたから、それでしゃべってただけなんです。」


 「そしたら、いきなり叫びだして……。私達何もしてないです!」


 泣きそうになりながら必死に弁明する二人。まあ見様によっては危害を加えたように見えてしまうのものね。ただ男の苦しみ方は普通ではなく、何なら今も首を抑えてのたうち回っている。この子たちが何かしたにしてもこれはおかしい、こんな風に苦しむほどこのゲームは痛みを伝えてこない。


 「わかってますよ。このゲーム痛みなんてほとんどないですし。」


 偶にピリッとした感覚や軽い衝撃がくることはあるが、ダイレクトな痛みはほとんどないのだ。そんなのがあったら死人がでるわ。

 ということは、演技か?


 「あの~。」


 男に話しかけるが気づいていないのか、呻いている。

 困ったな。バグとして通報したほうがいいんだろうか、実際苦しんでるならやばいし。ふと、このゲームはNG者がでたという話を聞いたことを思い出す。


 やっぱり通報しようとすると声をかけられた。


 「待った! こいつはほっといていいですよ!」


 話しかけてきたのは鉄の鎧を着たNPCだ。リュウと同じのを着ているから騎士の人かな?


 「外から来た星の探検家さんですよね、こいつはいつもこうなるんです。貴方達のせいではないことはわかっていますから大丈夫ですよ。」


 その言葉に安心したのか女の子達は明らかにホッとしたようだった。

 それにしても迷惑なやつだな。やっぱり演技か?

 すると騎士の人は嫌そうな顔で言った。


 「こいつ今王都の有名人ですよ。ある幽霊に憑りつかれているんです、俺達にも偶にしか見えないんですけど、幽霊から逃げようともがいているとこうなるらしいです。」


 その話を聞いてピンときた、リュウから聞いた話だ。


 「それって、女の子を振ったら自殺されて憑りつかれた話?」


 「そうです。王都の外にも噂広がってます? まいったな……、王都の評判をこれ以上落としたくないんだが。」


 結構酷い言われよう。


 騎士の人にここは任せていいと言われ、詳しい話を聞きたい気もするがとりあえず立ち去る。

 女の子達にはお礼を言われ、装備の可愛さを褒められたので、装飾の街のマーケットにいるメリノさんの店の話をしておいた。宣伝宣伝。


 それにしてもさっきの人気になる、どんな幽霊なのか聞いてみたい。

 騎士の人に聞こうかな、でも王都の評判が…みたいなこと言ってたし、詳しいこと教えてくれるかどうか…………あ! 騎士は騎士でもNPCじゃなくてプレイヤーに聞けば教えてくれるかも! それにリュウがいるじゃないか、詳しい話を聞いてみよう!

 そうと決まれば早速騎士団の宿舎に行ってみよう!



 市街地を抜けて階段を上がると貴族街、ここからさらに北へ向かうと王城に行ける。騎士団宿舎は貴族街の西側に抜けたところにある。親切に立っている案内板を見ながら宿舎に向かう。

 貴族街は少し静かで落ち着いた雰囲気があるが、市街のアパートメントと違って大きなお屋敷がドーンと建っているのを観光の人やプレイヤーの人が眺めているため、人の出入りは意外と多い。


 宿舎に着くと管理人の人にリュウを呼んでほしいことを伝える。

 しばらくするとリュウがやってきた、後ろに何人かがニヤニヤ笑いながらこちらを見ている。気になったので聞くとNPCの同僚と先輩らしい。彼女か、彼女かとからかわれたらしい。

 なるほど、ごめんリュウ。



 「なるほど、あいつに会ったのか。」


 「知り合いだったの?」


 「あいつも騎士団に入ったプレイヤーで、それで仲良くなったんだ。」


 騎士団だったのか。あの時の騎士の人も嫌そうな顔をしたのは身内の恥的な意味だったのかもしれない。


 「でも詳しいことは知らなくてさ。あいつ女好きで色んな女の子に声かけてたんだ、プレイヤー、NPC問わずに。それで気が付いたら呪われてたんだ。」


 「そっかー……、他に呪われた人っていないの? ほら王都には幽霊案件多いって言ってたじゃん。」


 「うーーん。見たことないな……。」


 何とも言えないわけのわからなさだ。二人で悩んでいてもしょうがない、今は諦めて別の案件を探してみようかな。


 「力になれなくてごめん。せっかく頼ってきてくれたのに……。」


 「いや、そんな深く考えなくてもいいよ。私も気になっただけだから。」


 真面目だなぁ。


 「そうだ! フレンド登録しないか? フレンドならチャット機能で喋れるから、何かわかったらチャットできるし。」


 「おお、いいの? ありがたいけど。」


 「その代わりこっちも気になる情報聞いたり、パーティに誘ったりしていい?」


 「いいよ! じゃあ、よろしく。」


 「ああ、よろしく。」


 ▽ プレイヤーリュウとフレンドになりました。




◇◇◇




 リュウに案件を探すならクエスト依頼掲示板を見るといいと聞き、市街の中央広場にある掲示板の元へ早速向かう。


 掲示板は捜索系、戦闘系、生活系と別れている。

 捜索系はなくしものを探してほしいやペットの捜索、ドロップアイテムが何個ほしいみたいなお使い系で、戦闘系はそのまんま、何何を何匹倒してほしいという内容。生活系がちょっと変わっていて、畑仕事を手伝ってほしいみたいな内容から、家で変な音がする、皿が勝手に割れるのでどうにかしてほしい。みたいな内容だ。

 私が求めているのは生活系だろう。何を受けようか物色していると、また叫び声が聞こえてきた。


 「あ゛あ゛あ゛ああああああああああーー!!!」


 うるっさ。


 今度は走りながら叫んでいるのか、こっちの方にくる。


 「あ゛ああああああああああーー!!!」


 「あ」


 男は走りながら通りすぎていったのだが、見えた。


 男の首に腕を回してしがみつく女の姿が見えたのだ。


 やっぱり滅茶苦茶気になる!

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