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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
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13.マーケット

 メリノさんにマーケットを楽しんで来いと送り出された私は、広場の入り口に戻り入り口から見て回ることにした。

 入り口は食べ物の露店が並ぶエリアで、片っ端から買いたくなるが手持ちが三千ゴルドしかないので、一回マーケットをぐるっと回り、買いたいものを決めてから買うことにした。


 大きなソーセージを焼いたやつにまん丸のコロッケ、玉ねぎが丸ごと入ったスープも美味しそうだし、芋と玉ねぎ、ベーコンにチーズをたっぷりかけたやつ。他にも目移りしそうな食べ物がいっぱい。

 匂いにつられたのか道のあちこちに猫がうろついているのが見える。おこぼれを狙っているな。


 メイン料理の次はデザートが立ち並ぶエリア。

 クリームたっぷりのクレープに、シナモンのいい匂いがするチュロス。トッピングを自由に選べるワッフルもあるし、チョコまみれの大きなマシュマロにリンゴ丸ごとにチョコレートをコーティングしたものも。


 ドリンクは温かいチョコレートドリンクに冷たいフルーツジュースまで、個人的にはスパイスと砂糖がたっぷりのホットワインが気になる。



 ああ゛ーーーーーー、全部食べたい!


 とっとと回ろう!


 食べ物エリアを抜けると装飾品エリア。メリノさんが出店しているのもこのエリアだ。

 今の羊装備が気に入ってるから、新しいのを買う気はそんなにないんだけど見るだけ見てみたい。


 貴族の服みたいなのから甲冑みたいのまで色々ある。武器もナイフが何本かまとめてのセットで売っているのもあるし、ゲームではお馴染みの剣も沢山。

 意外と多いのはアクセサリー、効果があるやつもあるけどないアクセサリーも多い。いわゆるオシャレ装備ってやつだ。

 このゲーム効果のあるアクセサリーは二つしかつけられないけど、オシャレ装備だったら無制限につけられるオシャレさんにも嬉しいシステムとなっている。


 色んな露店をフラフラしながら見て回っていると、声をかけられた。


 「こんにちは。プレイヤーの方ですよね、ちょっと聞いてもいいですか?」


 「こんにちは、大丈夫ですよ。あんぱんといいます。」


 声をかけてきたのは男性プレイヤーで、王都をスタート地点に選んだという。


 「俺はリュウって言います。その装備どこにも売られているのを見たことがないから気になっちゃって。」


 そうか、装備の珍しさで声をかけられたのか。


 「ええと、私ランダムスタートしたんです。それでこの装備を手に入れたんですけど……。」


 うーん。秘密の村だし、簡単に教えていいものか……。

 私が言いづらそうにしているのがわかったのか。


 「言いづらいなら、詳しくじゃなくてもいい、です。」


 「それなら、この街の北の山を越えたところに隠された場所があるんです。」


 このくらいならいいかな。実際ここから行くには厳しい場所だと思うし。

 あとこの人普段敬語使わない人だな、ついでにやりづらそうなので敬語じゃなくてもいいと伝える。その代り私も呼び捨てにすることにする。


 「山を越えたところか……、厳しいな。山の中に拠点にできる場所があればいいんだけど、それがないなら装備もアイテムもそろえていかなきゃ無理だろうな。……俺もランダムスタートを選べばよかったかなぁ。」


 「いやぁ、私も落ち着くまではひどい目にあいましたよ。八回ロストして、九回目でやっと落ち着いたんです。」


 「それは粘ったな、掲示板とかじゃロストしすぎて、キャラを作り直した人もいるのに。」


 早くゲームを始めたい人ならそうすると思う。私はなんか、アレだ。もう意地になってたわアレ。


 それにしても、初期スタートした人はどこまで進んでいるのだろうか? 


 「このゲームさ、イベントが多いんだよ。王都は都市伝説とか幽霊のイベントが多くてさ、王都から出ずにイベント消化してる人もいるし、初めに選べる港町とか山村に行っている人もいるよ。」


 都市伝説と幽霊か! いいなぁ、この後王都を目指そうかな。


 「しかも凄いのがさ、このゲームってNPCが凄いリアルだろ? とあるNPCに惚れられたプレイヤーがいるんだけどさ、そいつは付き合う気なくて振ったら、そのNPCが自殺しちゃったんだよ。」


 「ええ! なんですかそれぇ。」


 「だろ。で、それからそいつがログインするたびにそのNPCの幽霊がついて回るようになったってさ。」 


 ひえ、それはやりすぎでは……。


 「何とか除霊するために走り回ってるよ、そいつ。」


 「うわー。同情しますけど、中々面白いことになってますね。」


 やっぱり王都目指してみよう。楽しそうだ。

 あ、そうだ。


 「私の着けてる装備はないですけど、売ってくれた人がマーケットに出店してるので、よければ紹介しますよ。」


 厳密にいえば売ってくれたわけではないのだが、細かいことはいいだろう。

 ちなみに私の着けている装備は村にしか売ってない限定品だ。


 「本当か! ありがとな!」


 そういうわけで、メリノさんの元へリュウを連れていく。

 メリノさんの露店は荷台の壁が動かせるようになっていて、荷台をそのまま露店のようにできるようになっている。

 ここら辺だと羊毛は珍しいのか繁盛しているようだ。


 「メリノさん、お客さん連れてきましたよ。」


 「お、星の探検家さんだね。羊毛の防具はどう? 寒さに強いよ、防御力も高いよ。」


 おお、ここぞとばかりにセールストークを。星の探検家だったら、防具は欲しいと思うもんね。


 「ええと、……そうですね、羊毛のインナーをください。」


 「インナーでいいの? その鎧より羊コートの方が防御力は高いよ。」


 「インナーなら鎧の下に着れますから、あと……羊のコートは可愛すぎて、着るとなると、ちょっと恥ずかしいというか……。」


 なるほど、羊コートは確かにもこもこ、フワフワで、これであなたも羊になれるっ、と言わんばかりの可愛い感じのコートだった。

 私が着てるのも可愛い系だし。


 「ふふふ、それはごめんね。じゃあ、羊のインナーは千五百ゴルドね。」


 ちなみにインナーはアクセサリー扱いである。体装備は鎧があるからね。


 「ありがとう、あんぱん。いい買い物ができた、情報代にいくらか払いたいんだけど。」


 「え゛、いいよ。そんなことのために教えたわけじゃないし。」


 「そうなの? そういえばこのゲームで情報の売買見たことがないな。他のゲームだと結構情報の売り買いってあるんだけど、このゲームはないのかな。」


 知らん、まともに喋ったプレイヤーはリュウが初めてだし。

 情報つっても、このゲームだと図鑑の内容を売ったりとか? どっちにしろゲームをやりこまなきゃできないし、まだ出てきてないだけかもしれない。


 「そっか、ならやっぱり払うよ。」


 「いや、いいって。」


 何かしつこいな。…………そうだ。


 「じゃあ、ゴルドはいいから露店で奢ってよ。」


 何食べよっかなー!


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