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Occult-Life-Online  作者: シンヤ
10/49

10.決着

 向かってくる蔓と枝を二人で協力しながら撃退していく。

 蔓は引きちぎりながら、枝は叩き折りながら、じりじりと本体に近づいていく。


 「このままなら行けそうです!」


 「このまま手数を減らせば、二人で本体に集中攻撃できるでしょう! 一気に行きますよ!」


 いい調子だ。これなら食人木(しょくじんぼく)を撃破できるだろう。

 それにしても装備がいい仕事をしてくれる。初期装備だったらここまでいい戦いはできなかっただろう。ただ気になるのはシープホーンの説明であった連撃とブーメラン攻撃だ。装備をもらってから何回か練習してみたが、クルクル回す前に落としちゃうし、ブーメランみたいに投げても戻ってこない。

 バトンの回し方とかブーメランの投げ方を調べて実践してもうまくいかなかった。だから戦うときはこうして振り回して殴ることしかできないのだ。

 プレイヤー自身のリアルスキルってやつが必要だったら、私には永遠に使えないやつだ。現実では運動なんてからっきしだし。


 まあ、今はないものねだりしてもしょうがない、殴るだけでも結構威力でるしね!


 そうこうしているうちに、蔓と枝の猛攻が少なくなってきた。私達に千切られまくって、手が少なくなってきたのだろう。


 蔓と枝が復活するかはわからないけど、今のうちに本体に攻撃を!


 「行きますよ! 村長!」


 「えぇ、ここで決め」「危なーーーーーーい!! 二人とも! 足元! 見てーーーーー!!」


 村長の返事を遮って、カラクルさんの大きな声が届いた。


 足元?


 ちらっと足元を見ると、地面にはモグラが地面を荒らしたような跡が沢山あり、茶色い蛇の尻尾のようなものがひょこっと出ていた。


 「!!?」「しまった!」


 村長が私の襟首を掴んだと思うと、カラクルさんの方に投げ飛ばされた。


 「わあぁ!!」


 「あんぱんちゃん、大丈夫!? ……あっ!? 村長が!」


 カラクルさんが声を上げる。私も急いで体制を起こし、村長を見ると、村長はぐるぐると足を拘束されてしまっていた。


 「そ、村長ーー!! あんにゃろうがっ!!」


 あいつは私たちが上のほうにある蔓と枝に夢中になっているすきに、根っこの細い部分を地面に潜らせて、私達に迫っていたのだ。


 急いで助けようと近づこうとするが、他の蔓が邪魔して近づけない。


 私が近づけずにいると村長は足を吊られ、逆さまになってしまう。


 すると木の幹がミキミキと音を立てて割れていき、割れ目から球根の頭をだした。


 あれは、私のこの前の死因! あれに食べられてロストしたんだ、あれを出したということは……! 近くに行きたいが、蔓だけじゃなく根っこも邪魔に入ってきた。


 「村長ーー! 何とか逃げてくださーい! 食べられちゃいますよー!」


 仕方なく村長に叫んで、逃げ出すように伝えるが、


 「…………いえ! 考えがあるのでこのままで大丈夫です!」


 「えぇ!? ちょっ……!」

 

 村長はそのままじっとして球根頭に運ばれている。腕は拘束されていないから、村長の力なら脱出しようと思えばできるのに。


 球根がバキッと割れ口を開き、村長は口元に運ばれていく。


 このまま食べられる! と思っていたら、


 ゴッと音を立てて、村長の拳が球根頭にぶつかった。


 「!!?」


 そのまま続けざまにゴッ、ゴッ、ゴゴゴゴッと拳をふるう村長。


 「思った、とおり、ですよ! ここが、弱点ですね!」


 村長が言う通りなのか、体力が幹を殴っていた時よりも大きく削れていく。私を邪魔していた蔓達もやばいと思ったのか、村長の方に向かっていく。

 蔓達は村長を拘束しようと腕に巻き付き締め上げてダメージを与えるが、彼は持ち前の怪力で蔓を巻き付けたまま、ダメージも無視して球根頭を殴りつけている。


 村長すっご……。でもこれはチャンス! 邪魔する奴がいなくなった私も走り出し、シープホーンを振り回し幹を殴りつける。


 食人木の体力はあと僅か、あと球根頭に一二撃ほど叩き込めば勝てる! といったところで、村長の腕がついに動かなくなってしまった。見ると村長の両腕は蔓と枝が何重にも巻かれてがっちりと固定されていた。


 球根頭が今度こそ村長を食べようと口を開き、彼に噛り付きそうになる。


 「このっ」


 咄嗟にシープホーンを投げつけた。シープホーンは真っ直ぐに飛び球根頭にぶち当たった、が倒すまでのダメージは与えきれずにあとほんの少し、体力が残ってしまった。


 「あと少しです、頑張って。」


 その言葉を残し、村長の分身は噛り付かれ体力バーが弾けた。


 分身とわかっていても知った顔がやられるのはいい気がしない。

 私は蔓につかまらないように後ろに下がった。


 さっき投げたシープホーンは球根頭に当たった後跳ね返り、やっぱり私の所には帰ってこずにあらぬ場所へ落ちている。

 アレを取りにいかなければ勝てない。丁度今は蔓が届くか届かないかといったところに落ちているのだが、奴か少し動けば蔓が届き捕まってしまうだろう。が。

 さっき村長が捕まった時に気づいたけど、捕まった時にあまり動かなければ追加で拘束されないようだ。彼は足を拘束されたときに球根頭の前に運ばれるまで、じっとしていたから殴るまで追加の拘束がなかったのだろう。


 ダメージはあと一撃与えれば勝てるだろうから、わざと捕まってもう一度殴ったら倒せるだろう。

 よし、それで行こう!


 「まって、あんぱんちゃん。よく見て。」


 走り出そうとする私を止めてカラクルさんが食人木の体力バーを指さすと、何かがおかしいことに気づく。


 「……あと一撃すれば倒せると思ったんだけど……。」


 食人木の体力が僅かに回復している。あれだと球根頭に一撃入れても、あと少しだけ体力が残ってしまう。

 でも、なんで……。


 「村長が食べられた後にね、回復したみたいなの。」


 「!!」


 ()()木なのだ。人を食べたら回復する。考えれば思いつくことに気づかなかった。


 こんな時にブーメランや連撃攻撃を覚えていれば……、もう少し練習していればよかったのかな。

 いや、落ち込んでいても仕方ない。


 「……一か八か、二回攻撃できないか試してみます。」


 拘束されても一回だけなら動けるかもしれない。賭けだけど……。


 「駄目よ、そんなの!」


 「でも、これしか方法は!」


 「あるわ! ……私も攻撃に参加する。」


 え、でもそれは……。


 「確かに、私は村長みたいに攻撃できないわ。でもこれを見て。」


 ポンッと彼女の手にアイテムが現れる。ナイフだ。


 これ、私の初期装備の……?


 そういえば、シープホーンに装備を変えた時にアイテムボックスにしまいっぱなしにしていたのを思い出す。


 「私がこれを持って食人木に捕まって攻撃するわ。もう倒せそうだと思ったら武器を投げて、私が食べられて回復する前に倒して。」


 「……でも危険ですよ、締め付け攻撃は結構苦しいと思いますし、もし噛り付かれたら消えちゃいますよ。」


 ロストに慣れた私でも、やられる寸前は怖いと思うのだ。痛みはないし、復活できるのがわかっているから慣れたとか軽く言えるだけだ。


 「大丈夫よ、私は分身だから。痛みだってないし、本体は無事よ。貴女の帰りを待っているわ。」


 何だか泣きそうになりながら思い出す。

 『私なら大丈夫ですよ。死んだって死にませんし。』

 そんな事を言った時、村長は心配そうな顔をしていた。カラクルさんは『死ななくったって心配なの!』と泣きそうになりながら言ってくれた。


 あの時の二人の気持ちが今わかった気がした。

 そして一緒に戦うと決めてくれたことを嬉しく思う。


 「すいませんでした。ありがとうございます。」


 帰ったら村長にも言おうと思う。


 「一緒に倒しましょうね。」


 「ええ、頑張りましょう。」


 カラクルさんが先に食人木に向かって走り出す。数の少なくなった蔓が彼女を拘束しようと向かっていく、私はその隙にシープホーンに向かって走り出した。


 蔓はうまくカラクルさんに引きつけられているようだ、すんなりシープホーンを拾えた。


 カラクルさんに目を向けると、胴を蔓に拘束されてじっと動かずに運ばれている。私もそのままチャンスを待つ。


 球根頭の元に運ばれたカラクルさんはナイフを振り上げると、そのまま勢いよく振り下ろした。


 ダメージは!?


 ナイフの攻撃力が足りなかったのか、シープホーンを投げてもギリギリ倒せるか微妙なところだ。


 蔓がすかさず、カラクルさんの腕を拘束していく。


 「くぅ…!」


 動きづらくなったところに球根頭が口を大きく開き噛り付こうとした。 


 もう、投げるしかない! カラクルさんが食べられて回復されたらそれこそ勝ち目が薄くなる!


 シープホーンを振りかぶって投げようとすると


 「くっ、羊男(ゴートマン)の女を舐めないでーーー!!」


 カラクルさんが拘束されながらも腕をギリギリと動かし、ナイフをもう一度振り下ろした。


 「! これなら、いける! くらえやーーー!!」


 球根頭に全力で投げつける。


 狙いは外さずにシープホーンは真っ直ぐに飛んでいき、球根頭に直撃した。


 するとカラクルさんを拘束していた蔓がシュルリと解け、体力バーが弾けた。


 木の全体がミキミキ、バキバキと音を立てながら割れていき、ボロボロ崩れながら消えていく。


 ピロンと効果音がなり、アナウンスが現れる。


 ▽ おめでとうございます! 食人木を倒しました!


 カラクルさんと顔を見合わせて叫ぶ。


 「「やったーーーーーーー!!!」」


 リベンジ成功!

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